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人権とフェミニズム

またもや長いです

いつもこんなことを眉間にしわ寄せて考えているわけではなくて
考えだしたら整頓しておきたくて
思いつくままにキーボードをカタカタ打っているあいだに
こんな事になってしまうのですが
お付き合いいただければ幸いです

写真は先日、つけものびと仁さんをお迎えして「奈良漬け教室」を開催したときに試食の奈良漬けを準備しているところ。12月にぬか漬け教室も開催します。「たまゆら堂」はイベント会場としてもお使いいただけるので、気になる方はご連絡くださいませ。

さて、本題。

【人権とフェミニズム】

人権のために何ができるのか

「人権」ということば自体に
不穏な空気を感じる人がいるのは
きっと
これまで(無自覚であっても)享受できていた特権を
剥奪されそうな予感がするから…と言う気がしている

人権や権利を唱えると
わがまま
和が乱れる
利己的…などと批判する人がいるのは
それまで(たとえ表面的にでも)保たれていた秩序が乱れて
混沌とした世界になるのではないかという不安が生じるからかもしれない

実際にそういうことを言われたこともあります

「最近の女は人権や権利とうるさくて
分断が生じて困る
昔の女はもっとつつましく辛抱強く男の野心を支えてくれたものだ」

人権とは
だれもが等しく生まれながらに
安全安心・自由・尊厳を持つ

という概念だけれど
本当に「だれもが等しく生まれながらに」持っているだろうか

たとえば

女性にケア労働が偏りがちなことを認識せずにいられること(男性)
痴漢盗撮強姦に怯えること無く夜にひとり歩きできること(男性)
妊娠の心配をせずにセックスできること(男性)
結婚して姓が変わることで生じる不都合や手続きの心配をせずにいられること(主に男性)
恋愛関係にある異性や配偶者がいないのはなぜかを聞かれないこと(異性愛者)
階段や段差を気にせずに移動できること(歩行可能な人、見える人)
警報が鳴ったら即座に反応できること(聞こえる人)
街を歩いていて突然「身分証明書」の提示を求められないこと(日本における日本人)
今夜のねぐらを心配せずにいられること(帰る家がある人)
家族に虐待される心配なく安心して過ごせること(家族関係が良好な人)
ルーツや出身地を訊ねられてもへっちゃらなこと(差別されやすい属性をもたない人)
加工食品や外食で原材料を気にせずに食べられること(アレルギーや戒律の制限のない人)
学校から「地毛であることの証明」を求められないこと(黒髪直毛の人)
読むこと、書くことに困難が無いこと(ディスレクシア、ディスグラフィアでない人)
夜でも明るい照明の下で本が読める(電気が通っている国や地域)
衛生的な水がいつでも飲めること(いわゆる先進国やインフラの整った都市部)
爆弾が落ちてくる心配をせずに暮らせること(戦争や紛争が起きていない)
行きたい所、行きたい国へ自由に行けること(外交が正常に行われている)
兵隊になって人を殺せと命令されないこと(徴兵制のない国)
どんな本を読んでいても逮捕されないこと(思想統制のない国)
主体性をもって決めることができる(奴隷ではない)

自分にとっては「当たり前」の権利でも
それをもたない人がいる


世の中のしくみによって
これらの「こと」が叶わず不自由だったり
恐怖・屈辱感・疎外感を感じている人がいるのなら
これらの「こと」は全て「特権」

特権によって安全安心・自由・尊厳が保たれている人と
社会の構造がその権利へのアクセスを阻んでいて
安全安心・自由・尊厳が保てていない人が現実にいるのだ

あるはずのものをもたない人がいるから
そのアンフェアな状況を解消するために使われるのが
「人権」という概念といえるだろう

「特権」を持つ人が多数である場合
それを自覚するのは簡単なことではない

でも
「それが社会の構造のせいで叶わない人がいる」
と認識できたなら
その社会の構造、世の中の仕組みをアップデートする機会にできる

そしてアップデートしたからといって
それまでできていたこと(特権)ができなくなる(剥奪される)わけではない

女性に偏りがちな「無償のケア労働(家事育児介護)」を
男性も分担するようになれば
家族と過ごす時間が増え、親密さが増し、人生が豊かになる可能性がある

賃金格差に現れているようなジェンダーギャップを解消することで
男性の価値が下がることはない
なぜなら、
お互いにこれまで「社会的に遠ざけられていたこと」
女性は社会的な活動とその仲間
男性は家族との時間とケア労働に
アクセスしやすくなる、チョイスが加わるということだから

女性は社会活動に関わりやすく、正当に評価されやすくなり
男性は家族に関わりやすく、親密な関係が結びやすくなる

ただ、
家族との関わりは、社会活動(稼ぐこと)よりも
「価値のないもの」とみなすのであれば「喪失」として
感じる人がいる可能性はある

「稼ぐこと」のみが人の価値を決める
というような考えは
「乳を出す」「玉子を産む」「肉になる」という
ひとつのもの(お金)を生み出すことで価値を認められ
世話してもらえる(餌と寝床と排泄・人の場合は洗濯や掃除、などの世話)
家畜と同じだと自らみとめていることに気づいてもらいたい

特権だったものが、特権ではなくなり
より多くの人がその「権利」を享受できるようになった世界は
より多くの人が安心して自由に尊厳を保てるようになるのであって
誰かがその権利を奪われたりはしない

特権を特権のままにしておきたい人にとって
権利を主張して変更(アップデート)を迫る人は
目障りで、混乱を招く、平穏に水をさす、波風を立てる人かもしれないが
社会構造のせいで安全安心・自由・尊厳が無い人がいて
そのまま固定される社会ははたして公平・公正といえるだろうか

安全安心・自由・尊厳を求めること無く
だまって、我慢して、特権を持つ人の平穏が維持されている社会は
本当に誰にとっても「平和」で「安全」といえるだろうか

だまって、我慢している人が存在する間は
社会の構造がその人たちを「排除」しているのだ

その人たちも「いる」という前提の構造にはなっていない
ということが「見えない」だけで
そのひとたちは現実に存在しつづけている

その人たちの存在を無視した構造だということが
「声」が上がるまで特権を持つ人たちに認識されないだけのこと

特権を持つ多くの人に見えなかっただけで
もたない人は「排除」という形で充分「分断」を味わっていたのだ

権利を主張する人が現れて
自分たちが享受していたのは実は特権だったことに気づき
排除されていた人たちを権利をともにする仲間に迎えるために
社会をアップデートしようと試みる人も現れると
変化を嫌がる人も現れる

そして
「権利」や「人権」という概念が「分断を招く」
という屁理屈で排除が起きる構造の「現状維持」を
正当な権利であるかのごとく声高に訴える

排除が起きる社会構造の現状維持を望む人の多くが
たくさんの「特権」を長年無自覚に享受してきた人で
自分たちの平穏に横槍が入ったという錯覚に陥るのもわからなくはない

でも
「分断が存在する社会構造の現状維持」を望む人がいなければ
もっとスムーズに構造のアップデートは行われたはずなのだ

黙って我慢しているひとがいる(見えない分断)
声を上げて権利を求める人が現れる(分断の可視化)
構造のアップデート(分断の統合)…というように

わたしにとってフェミニストとは
「権利のために声を上げる人」

フェミニズムとは
「権利のために声をあげること」

選挙権、相続権など、男性の特権であった権利
法的な平等のために立ち上がって声をあげたのがフェミニズムの起り

イブはアダムの肋骨からつくられた…というような
女性は男性より劣った存在だとするミソジニーに批判的な思想は
中世にすでにあったことが文献には残っているが
「性的に消費しても良い」と考える人は今も大勢いて
それを内面化してホモソーシャルな男性社会を生き延びようとする女性も
今も一定数いる

そこに批判的な目を向けつつ
「権利のために、権利を奪われている人のために、
権利の回復のために声を上げ続ける」ことが
フェミニズムであり、フェミニスト

どんな属性や構成要素を持つ人であっても
その人の「安全安心・自由・尊厳」が
社会の構造や価値観に傷つけられているのであれば
回復のためにできることを一緒に考える

ただし
自分の属性、構成要素、思想信条を守るためや
自由や欲望のために
他の人の安全安心・自由・尊厳を脅かすこと、奪うことは「権利」ではない

いかなる理由でも
他の人の安全安心・自由・尊厳を脅かすこと、奪うことは「暴力」である

静かに存在した見えない分断を「可視化」するために
「暴力的手段」で社会に訴えるのが
ストライキであり、デモ、

それを軍隊や警察を動員し武力で弾圧するのは
見えなかった分断や不平等が可視化されるのを妨害するための「暴力」

分断を可視化するためにストライキやデモという暴力的手段をとっても
誰かの安全安心・自由・尊厳を奪ったり傷つけたりはしない

一時的に交通などインフラの不便が生じるけれど
それを支える人の権利が守られるようになれば
サービスの質が向上する

暴力「的」手段で「可視化」されたら
権力・経済力・決定権を持つ支配層にとって「都合」が悪いだけだ

支配層や権力者の「都合」を考慮して
分断や不公正の可視化を躊躇すること非難することを「忖度」という

現状維持という「表面的な平穏」と「見えない分断の温存」か
構造のアップデートという着地点が見出されるまでの「紆余曲折」の
選択肢がわたしたちにはある

後者を選び、
紆余曲折という対話を経て
ひとりでも多くの人が安全安心に暮らせる着地点を目指すのが
現代のフェミニスト

全ての人を満足させることはとても難しい
きっと無理だというひともいる
それでも
ひとりでも多くの人の人権が守られるように
小さな声にも耳を澄まし
何ができるのかを考え対話し続けるるのがフェミニズム

フェミニストたちは決して
ホルモンバランスのせいでヒステリーを起こしているのでも
PMSで怒りっぽくイライラしているのでもない

ないがしろにされていること
ないがしろにされる人がいることに
怒っているのだ

怒りとは
自分が大切にしているものを
ないがしろにされた
侵害されたときに湧き上がる感情

そこで、自分が何を大切にしているのか気づくこともあるし
相手にとってそれが大切ではないことに気付かされることもある

だから
無視したり、抑圧するのではなく
破壊的な表現にならないように取り扱いに注意しつつ
自分を守るために使う方法を身につけておきたい

大切にすること
尊重することを「互いに」できている関係性のために
「怒り」を使うことはできる

わたしは〇〇が大切なのだ
あなたにも大切にしてほしい

あなたは〇〇が大切なのだね
わたしもそれを大切にするにはどうしたらいい?

というような対話を拒むのは
「わたしには大切ではないからこれからも大切にしません」
「それを大切にすることはわたしの特権を手放すことになるから
それを尊重しません」
と宣言するに等しい

対話は「社会的包摂」へと向かい
より多くの人の人権が守られる社会に近づいてゆく

対話を拒めば「社会的排除」に向かい
人権が守られない人との分断は継続される

「分断」と親和性が高いのはどちらなのか
考えてみてほしい

家庭内に起きる虐待、DV、嫁いじめも
学校や職場で起きるいじめ、様々なハラスメントも
公共の場で起きる痴漢、ヘイトスピーチ、点字ブロック上の駐輪も
国や民族との間に起きる紛争や戦争やテロ行為も
誰かが誰かをないがしろにしているという点で共通している

誰かをないがしろにしなくては保てないなにかがあるのだとすれば
それは特権でも権利でもなく
劣等感が根底にある優越感にすぎない

常に
強くなければ
正しくなければ
優れていなければ、舐められる

そう考えると
「その行いは誤り(人権侵害)である」と指摘された時の
反撃ぶり、バックラッシュや
加害を認めるのではなく被害者面をする理由が腑に落ちる

誰かを貶めることで得た優越感は
安全安心・自由・尊厳を互いに尊重しあい獲得した自己肯定感とは異なり
拠り所になる「安全」などありはしない

潜在意識には罪悪感や後ろめたさがあるため
指摘する人
「王様は裸だ」という事実を知る人を
排除しなくては維持できない

孤立するか
共犯者意識と被害者意識でつながる仲間うちで
抜け駆けを許さない相互監視しながら
孤独を紛らわせるほかない

対話のために連帯するフェミニズムと
自分の正当性だけを押し通そうとするアンチ・フェミニズム

本当は「裸」の王様と対話を試みようとするフェミニズム
絶対に「裸」だと認める訳にはいかない王様たちのアンチ・フェミニズム

実権を握り、意思決定の場で多数を占める政権与党の政治家が
アンチ・フェミニズムのこの国では
互角なやりとりなどできるはずもなく
フェミニズムの力がじわじわと削がれているように見える

対話によって「社会的包摂」へと向かう各国の流れと比べると
勢いよく逆走しているような感覚に襲われる

そのことに無関心でいること
意見を表明せずに傍観者でいることで
実権を握る強者から攻撃されることのない安全は得られるのかもしれない

でもそれは真綿で首を絞めるような
釜の水が徐々に上がってしまいには茹でられるカエルのような
安全とは程遠い結末が待っていることを
知った上での選択ではないだろう

それでも権力者はきっと
「自己責任」と最終的には言うのだ

人権が奪われないよう監視し、NOを言わなかった君たちの「自己責任」


精神論
ココロの持ちようで
あらゆることが解決するかのように謳う
「スピリチュアル系(ホンモノのスピリチュアルとは別)」や
「自己啓発」は
あらゆる問題を
個人の考え方という「自己責任論」に回収していくため
権力構造のなかで軋轢を感じたくない人を食い物にする

中には救われるひともいるなかで
より問題をこじらせ
ココロだけではなく、身体機能もこじらせ病気になる人もいる

人権侵害は「ココロの持ちよう」で解消できることではないのだから

直さなくれはならないのは「社会」のほうで
人権侵害を受けた人はケアされ、安全な社会を求める「権利」を持っている

わたしはNOを言いたいときには言う

人権侵害を受けた人のための個人セッションもやってます

ときには法務省の人権擁護局に切り込むこともします。




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