#6 旅する土鍋オリーブの丘へ③
「旅する土鍋#5オリーブの丘へ②」のつづき、少し間があきました。フィレンツェの丘の上に住むオチャメなチンツィアさんをご紹介した後、さてお料理出ますよ!の段階でパン食い競争みたいに吊るしたままでしたね。
(*これらのシリーズは前半無料記事よんでいただけるだけでじゅうぶん感謝)
「地産」+「伝統」+「旬」
選んだのは「豚ロースのぶどう煮 グリーンピース添え」。
土鍋でつくれる「その土地でこそ」の伝統料理。チンツィアさんからいくつか候補を出していただきました。どれも迷いましたが「地産」「伝統」それに次いでとても大切にしたい「旬」。三拍子がそろっているのがこの料理でした。
この夏はとても暑く、9月に入っても酷暑がつづいていましたが、確実に食の旬はやってきており、たわわに実るブドウはトスカーナの宝石だと思ったほど。フィレンツェ入りする前に、ブドウ畑に囲まれたヴィンチにいてこの宝石畑を見て味わってきたからこそブドウに目がありませんでした。そして、なにより日本のブドウに比べて価格が安い。残念ながら日本の大粒ブドウは安くはないので、この料理をつくるのに少し躊躇するかもしれませんが、この料理には熟したブドウが最適。店頭で熟し過ぎて値下げされているようなものを狙うのも楽しみのひとつかも?(⇒醍醐味は失せると思いますがブドウジュースで補うのも手かしら?)
(写真:土鍋とCinzia Fabiola Lunghettiさん)
「豚肉のブドウ煮」(めちゃうま豚のブドウ煮)
分かりやすく日本語で料理名を書きましたが、元の名前は「アリスタ・コン・ルーヴァ」。「ルーヴァ」はブドウで、アリスタのブドウ煮という感じです。
なぜトスカーナでこの豚肉の塊を「アリスタ」と呼ぶのか? チンツィアさんの説明は興味深く、「伝統料理」にはやはり歴史が刻まれているのだなぁとつくづく。
「めちゃうま!」
チンツィアさんが語ったのは以下のようなことです。
歴史は古く1439年、メディチ家のロレンツォ・イル・マニフィコの時代。世界教会会議の宴会で、ギリシア人のベッサリオーネ枢機卿が豚のグリルを食べて、ギリシア語で「極上!(めちゃうま!)」と意味する言葉「Aristos」を発したことからであるようだ。
フィレンツェの丘の上で、世界教会会議の宴会を想像しながらつくる土鍋料理。これだから大きな土鍋を抱えてきた意味がある!ヴァナキュラー感覚というか、プリミティブワールドというか。その辺の満足感があるので海を渡り向かうのです。
※この「Aristos」伝説については、「料理の科学と美食の技法(1891年)」 (La scienza in cucina e l'arte di mangiar bene)の著者であるペッレグリーノ・アルトゥージも記しているようです。
難しい話は置いておき。
この先は、チンツィアさんから口伝えで教えてもらった材料や作り方をご紹介します。彼女からもらったレシピのメモなどは一切なし。わたしも一緒に料理しながらビチョビチョ、ベチョベチョの手で写真撮ったりメモ執ったり、なんせこの写真の通り飲みながら料理したものなので、「レシピ」として販売するレベルの物ではありませぬ。あくまでも雰囲気をお伝えする「なんちゃってレシピ」であり、こうやって土鍋の魅力を提唱できれば幸いです。
既にブックレット(完売)をご購入下さったお客様から、さっそく作ってみました!という感想もいただいております。メディチ家時代の宴会に、いっときでも座ってお皿の前にいる気分になれたなら幸いです。おいしさ半分お伝えできたかな?
「めちゃうま豚のブドウ煮つくるかたはこちら」
それでは、チンツィアさんとつくった「めちゃうま豚のブドウ煮」をつくってみたいかたはこちらにどうそ。(くり返し言いますよ、1378文字の「なんちゃってレシピ」と、ビチョビチョ、ベチョベチョの手で撮った写真12枚です)
※このレシピはブックレット「旅する土鍋-それでも地球はまわる-」(2014年夏発行/協力CASE gallery/デザイン坂元夏樹・加川京)に掲載されたものに加筆・修正したもので、写真も大きくなってもう少しわかりやすくなった「なんちゃってレシピ」です。
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