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最強の美術サポーターに心がホクホク 福富太郎の眼展

「こりゃあ、清方さんめちゃくちゃ嬉しかっただろうな」

感想はこの一言に尽きる。


先日、大阪市のあべのハルカス美術館に展覧会『コレクター福富太郎の眼』を見に行ってきた。

福富太郎さんという、キャバレー経営をしていた大実業家のコレクション展。

福富さんの、日本画家・鏑木清方にかけるギュンギュンな熱量が見どころだった。

わたしにとって鏑木清方の絵は、たまに美術館で見ることがあるよねくらいの感じ。

スルスルと素通りしてしまっており、今までズドンと心に響いたことがなかった。

しかし今回、鏑木清方のガチファンである福富さんが「いいでしょ!!!!」と来場客に紹介してくれているかのような展示で、『あぁいいねぇ鏑木清方…」とわたしもいつの間にか清方ワールドへ誘われていた。

まずしょっぱなを飾る「薄雪」っていう作品がとんでもなくいい。
先制パンチくらった。


他には、「銀世界」っていう作品が凄く好きだった。
女性の表情が、吸い込まれるような何とも言えなさで、ただただ見入ってしまった。


福富さんは、戦時中に空襲で家が焼けてしまった経験を持つ。

その時にお父さんが大切にしていた鏑木清方の絵を家ごと焼失してしまう。

その悔しくて悲しい経験が福富さんのコレクター人生の原点となっているらしい。

家がなくなってるというのに、絵の方に執着するなんて、一体どれだけの絵なんだよと思わず突っこみたくなるかもしれない。

けど福富さんのコレクションを見たら、あぁ本当に心底鏑木清方に魅せられていたんだなと実感できた。


福富さんは集めた作品を持って鏑木清方を訪ね、最終的には仲良くなって清方本人と交流を持つまでに関係を育んだらしい。

自分が心から敬愛するアーティストと交流できて、その上「この絵を持っててくれるなんてありがとう」なんてお礼まで言われるなんて、天にも登る心地だっただろうなぁ。

そして、福富さんだけでなく、鏑木清方のほうもめちゃくちゃ嬉しかったんだろうなと想像できた。

自分が描いた絵を、こんなに愛して求めてくれる人がいるという喜び。

福富さんは人気がある絵を買うんじゃなくて、福富さんなりの美学に基づいて絵を蒐集していた。

美術のことを研究して、自分なりの絵の見方を持った人から支持されることは、鏑木清方のパワーになったはず。

福富さんって凄いわ。

朗らかで、話し上手で、実業家で、コレクターで、美術研究に熱心で、自分なりの審美眼があって、作品の保存も丁寧で…

まさに、最高のサポーターじゃん。

わたしと福富さんとは財力も知識量も何もかもが違いすぎるけど、自分の好きなものや人を元気にできるような推し方をする姿勢というのは見習いたい。

心がホクホクする展覧会だった。

とにかくオススメです!




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