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【展覧会レポ】ゴッホ展ー芸術は守り、広め、そして後世に伝えていくもの

久々にお出かけしてきました。

学生時代に学芸員の勉強をしていたことがあって、その影響で博物館だとか美術館だとかそういう施設に行くのが好きです。

今回は上野の東京都美術館に行ってきました。都美術館に行くのは実は初めてだったりします。

歴史学の方はそれなりに知識があったりするのですが、美術はとんと知識がないので学問的な基礎のない素人の感想になってしまいますが、思ったことをつらつらと。

今回の企画展は、まだゴッホが世間に見出される途上の時期に、彼の作品を気に入り収集をしていた資産家の妻ヘレーネ・クレラー=ミュラーという女性のコレクションを中心とした展示のようです。

展示のコンセプトって大事ですよね。(学芸員の勉強してる時もコンセプトの大切さは教わりました)

副題が「響きあう魂」と書いてあって、どういう意味かなあと考えながら見ていたのですが、ヘレーネさんがゴッホの絵からその魂に触れて、それが気に入って響いた、的なことなんでしょうか。

じゃあその魂ってどんなのだ?というと、現実と空想が混じり合う内面を描き出した絵なのかなと思いました。

絵画の上手い下手って、色んな展覧会行くんですけどいつもわからないんですよ。なので素人的には写真じゃん!みたいなリアルな絵を見ると「この人めちゃくちゃ上手い!」って思ってしまいます。

ゴッホはというとなんですが、展示の最初に彼が腕前を上げるために素描したという絵がずらっと並ぶんですが、これはすごく上手だなあという印象でした。

ゴッホの絵というと『ひまわり』や『種をまく人』ぐらいしか知らないので「こんな絵を描いてたんだ」とびっくりしました。

で、どんどん年齢を重ねるうちに写実的な絵から抽象的?な絵に変わっていくんですよ。キャプションには「見ている景色の中に自分の想像や記憶を重ねて描き出した(正確な文章覚えてないので意訳です)」的な事が書いてあるんですね。

それが今回の目玉作品として挙げられてる『糸杉』の絵のような作品です。(チラシにばばんと載っている絵です)

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ゴッホ展のチラシ(東京都美術館)

太陽?月?空に見える丸いものの周りが光が歪んでいるように私には見えるのですが、これは現実をただ写実的に描いたわけじゃなくて「俺にはそう見える」の表現なのかなあと思いました。

ゴッホが37歳で自殺していたことを今回の展示を見て初めて知ったのですが、死ぬ前の数年は相当病んでいたのでしょうか。それだからなのか分からないですが絵の表現が現実を描くというより自分自身の内面を描くみたいにどんどん変わっていっていて、その変化がわかって面白かったです。

芸術って結局自己表現なんだなあと。

あと最初は暗い色味の絵だったのが、これは流行に乗り遅れてる!と気づいて徐々に鮮やかな色彩に変えて行ってるというのも面白かったです。色彩の表現の題材としてよくお花の絵を描いていた、みたいなキャプションもあってへえ、と勉強になりました。

それから面白いなと思った展示が、順路の1番最初にヘレーネが買った絵が、買い取った価格ごとに分類されている展示があったんですよ。写真撮っていいのか微妙だったので撮らなかったんですが、その切り口は面白いなあと思って見てました(笑)

日本と海外って美術品というか文化的なものの重要さの価値観が違うなと思っていて、海外って確か美術品にきちんと価値を置いていてお金を出すことを厭わないんですよね。

だから資産家がこういった作品を収集して後世に伝えていくみたいな活動は恐らく色んな方がされていて、それが当たり前のことになっているんでしょう。

そういう考え方が羨ましいなあと思います。日本ももう少し自国の文化を守り育てる意識があってもいいんじゃないかなと思うんですが……。日本人ってあまり芸術や文化にお金を払いたがらない気質があるって思います。その国の芸術や文化はその国のアイデンティティですし、豊かさの象徴だと思うんですよね。

コロナ禍でこういった芸術や文化方面の産業は大打撃を受けてると思います。そんな今だからこそこの展示を見て思うのは、自分がいい!と思ったものをちゃんとお金をかけて守り、後世に伝えるという活動をしたヘレーネさんのように、誰かが、いやみんながちゃんとお金をかけて芸術や文化を守っていく必要があるんじゃないかなあということです。(きっと彼女がいなければゴッホはこんなにも有名になってなかったんじゃないかなと思いました)

最後にお土産にチョコレート買っちゃいました。パッケージが可愛い。

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おまけ

上野に行ったついでにちょこっとだけ国立科学博物館に行ってきました。

企画展の『木組』を見たのですが、日本の技術力と発想力はバケモンだなと思いましたね……(写真は展示の一部です)

個人的になんですが、科博といい東博といい、キャプションの文章が面白いんですよね。堅苦しくないというか、そんな日本で一、二位を争う大型博物館なのにそんな砕けた言葉でいいの?みたいな(昔東博で洛中洛外図屏風の展示やってた時に、キャプションの中に「コスプレ」って単語が出てきてこっそり笑ったのを思い出しました)

センスの良さに毎回脱帽します。キャプション考えてる人天才すぎる……

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※現在、東京都美術館、国立科学博物館共に入館には事前予約が必要となっております。

東京都美術館:https://www.tobikan.jp

ゴッホ展:9/18〜12/12

国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp

木組:10/13〜11/24

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