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【感想文】党生活者/小林多喜二

『死んでも働かない二人』

ぶっちゃけ私は自分のことをプチブル&高等遊民だと一人で勝手に思っている。

そのため、本書『党生活者』の主人公(以下、佐々木と表記)と私は非常に似ている。もはや激似である。
こうした私の主張に「どこも似てないじゃん」とか「むしろ真逆じゃねーか!」とか「ブチ殺すぞ!」と声を荒げて叱りつけてくる者がいるかもしれない。しかしそんなやからには「テメエっちに頭を下げるようなおあにいさんとおあにいさんの出来が少ぅしばかりちがうんでィ!」と私は言いたい。だってそうだろう、『党生活者』の佐々木も私も働いていないのだから。この唯一にして最大の共通点を根拠も合わせて以下に説明する。

▼佐々木の働かない意志:

一見、佐々木は倉田工業で軍需品を生産したりと働いているようでその実、共産党オルグとして暗躍している。つまり、彼は生活の為に働いているのではなく大義の執行に直結した運動をしているのである。そうした佐々木のポリシーが窺える箇所は作中に続出しており、例えば、彼が倉田工業を辞めて笠原宅に潜伏する一部始終は特にそうで、生活維持のための家事一切は笠原にマル投げしておいて自分はビラ撒きを画策したりと党員運動に努めているのは象徴的である。妥協を許さない克己の精神を持つ佐々木はヒモやニートとは一線を画した存在といえる。あと、ごく私見だが、本書は全体を通して緊張感に満ちており(少なくとも『蟹工船』よりも緊張感がある様に思う)、それは佐々木の実践する運動がいかに切実であるかの裏付けであり、緊張はそれゆえの所産ともいえる。もし彼が働いてしまった場合、こうした効果は得られないと思うのだがどうだろう。で、最後に私のケースを紹介する。

▼私の働かない意志:

今日は起きたら昼の二時だった。昨晩の言論空間(=磯丸水産)におけるディアレクティケー(=飲み会)が大いに盛り上がったからだ。次に私は預金通帳の残高を確認して「まあなんとかなるやろ」と言い、そして思索にふけった。思索の対象は『党生活者』であり、その成果はこの通り読書感想文にしたためてある。気付けばもう夜だ。「お腹が空いちゃった!」私は夕飯を食べに実家へ向かった。私は週五日のペースで実家に行って母に飯を食わせてもらう。実家は徒歩三十分である。そんな近所にも関わらず、どうして私は実家を離れて一人暮らしをしているのか。それは私も佐々木同様、大儀に忠実な運動者だからだ。実家暮らしは生活音が激しいため私の大儀に支障が出てしまうのだ。で、その大儀を説明すると長くなるのではしょるけど、両親は息子の悲願成就のためなら衣食住を提供&維持してくれるありがたい存在である。夕飯後、父の書斎に忍び込んで『魔の山』とかいう本を無心して家に帰った。やったね。大儀最高。

このように両者を比較すると、境遇はまるで違えど、働くことに対する心構えは激似であり、そして今回の感想文で私が最も言いたい事は「俺は死んでも働かない」である。

といったことを考えながら、この感想文を友人に見せたところ「いいから働けこのクズ」と怒られてハローワークに連れていかれた。

以上

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