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【感想文】母を恋うる記/谷崎潤一郎

『ママンが死んだ。』

▼あらすじ

アニメ『母をたずねて三千里』は、主人公・マルコがアメデオという猿と共に母をたずねてウロウロする話だが、本書『母を恋うる記』もそれとほぼ同じであり、相違点は叙情性のみである。

▼読書感想文

三千里も探し歩いたのはすごいことだと思う。[感想文・完]

▼余談 ~ 二人の母の比較および意義 ~

本書『母を恋うる記』は、潤一が夢の中で二人の母(らしき女性)に出会う話である。

◎一人目の母(秋刀魚の女)の特徴:
・一人目の女はとある民家に住んでおり、息子の為に大好物の秋刀魚を焼いてその帰りを待っている。
・この様子に潤一は一方的に母親だと決めつけるが、母は「人違いだ」と言って潤一を退ける。
・しわがれた声、白髪交じりの頭髪、これはたしかに母ではないと潤一は納得する。

◎二人目の母(三味線の女)の特徴:
・二人目の女は流しの三味線弾きでありどこかに住んでいる訳でもない。
・この女に関する描写がやけに異性を感じさせる(横顔と鼻梁びりょうの美しさ、舐めてもいいと思わせる程の足の裏、等)。
・潤一はこの女を「お母さん」ではなく「お姉さん」と呼びたい。
・若くて美しいこの女に「私はお前の母である」と言われて、たしかにそうだと潤一は納得する。

といったことを考えながら、潤一は二人目の母(三味線の女)を「本当の母」だとして再会に涙するが、上記二人を比較して分かるのは、二人目の母の描写にあまり母親らしさを感じさせないという点であり、むしろ女性(異性)らしく描かれている。そして潤一は二人目の母の発言に何の疑いも抱かない。これらを総合すると本書は「母を恋うる」行動からなる深層心理に眠る、潤一の願望とする女性(≠母)を「夢」という形で抽象化したものと思われる。

以上

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