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そういうならさ。「生理が来ない」を、喉につまらせてみてよ

ピル後進国。日本。

緊急避妊薬。いわゆるアフターピル。

避妊に失敗したり、性的暴行の被害にあった場合などに用いられるお薬。研究によって諸説あるらしいんだけど、基本的には72時間以内に服用する必要がある。

日本では、産婦人科や婦人科を受診し、処方箋を出してもらわなければいけない薬だ。(※最近は、オンラインで受診から処方までしてくれるサービスもある。ただし、通販サイトで販売されているものはほぼほぼ偽薬の可能性が高いし個人での薬の輸出は違法行為なので、可能な限りきちんと病院を受診し処方箋を出してもらう方が安心だと思います)
こういう細かいお話をもう少し知りたい方には、シオリーヌさんのYouTubeなんかがおすすめです〜

けど、海外の多くの国では、薬局でしかも日本よりも安価にアフターピルも入手することが可能なんだよね〜。

日本はピル後進国ともよく言われるんだけど、なぜこうもずっとアクセスが悪いかというと、お偉いさん(ほぼほぼ男性が構成比の大部分を占める)が、アフターピルの悪用や濫用を懸念してくださってるかららしい。

もちろんね。悪用はよろしくない。薬なんだからもちろん副作用だってあるしね。でもさ、これが緊急避妊薬へのアクセスをよくすることへの批判だとするなら、なんだか的外れな気がするのは私だけだろうか。

「生理こない、、、」

排卵を行える卵巣を持ち、精巣を持つ人と性交渉する人の中で、「生理こない、、、」に怯えた経験をしたことがない人は、きっと”稀”だ。

私も、これまで何度これに怯えただろう。

なんなら、交際者がいるとき、私は低用量ピルを服用していなかったので、毎月「頼むから来てくれ、、、」という気持ちで、あんなに嫌なはずの生理予定日を確認してきた。

でも、生理予定日なんてほんの少し今月は忙しかったとか、不摂生な生活をしたとか、ストレスが多かったとか、そういう理由で遅れたりする。それくらい繊細に体や心の変化に影響を受ける代物が、生理。

だから、余計どっちなのかわからなくてとても怖い。

妊娠検査薬

私はこれまで一度もアフターピルのお世話にはなったことはない。でも一度だけ、妊娠検査薬を使ったことはある。

もちろん避妊はした。ゴムが破損したわけでもなかったし、つけ方がよろしくなかったわけでもなかった。けど、今思えば鬱と診断される直前くらいの頃だったので、単純に精神的な影響で生理不順になっていたのと、最後に性交渉をした日がうまく被ってしまった。

私は、普段がそれほど生理不順な方ではなかったから、携帯に通知されてくる「排卵が始まったら記録してください」の文字に毎朝怯えた。
そして、トイレに行く度に「頼むから来てくれ、、、」と祈った。それでも、毎月きちんと拝んでた血が出てこないまま毎晩布団に入らねばならず、横でぐーぐー寝てる交際者の顔をみて無性に腹立たしくなったりしたのを覚えている。

1週間が経っても生理はこなかった。日に日に、恐怖で寝られなくなっていった。でも、交際者には「生理がこないんだよね」が言い出せなかった。
「子供はいらない」「結婚はしたくない」と聞かされていたから、どんな返事が返ってくるのか想像するだけで、いつも通りでいられないのがわかったから何も言えなかった。喉でずっとその言葉がつっかえたまま過ごす、追加の1週間は本当にしんどかった。

生理予定日を超過して2週間目が終わる頃、ついに、業を煮やした。やっとの思いで、交際者に「生理がこないんだよね」と伝えた。
すると、交際者は「そっか。何日すぎてるの?体に不調あるの?」とだけ聞かれ、あとはスマホに顔を向けるだけだった。あとで、そのとき交際者が必死に妊娠の初期症状などを調べてくれていたと知ったけど、私には無言の拒絶に感じた。

「子供ができてしまってても大丈夫」

きっと、その一言が欲しかった。けど、すぐにその言葉が出ない交際者に勝手に落胆し、泣きながらドラッグストアに向かい、初めて妊娠検査薬をレジに置いた。

そして、家で検査をするのは怖くて、コンビニに駆け込んだ。

結果が出るまでの時間が、無限に感じられた。判定の枠に何も浮き上がらなくて、また涙が出た。けど、市販の妊娠検査薬の結果は結構曖昧なことが多いことも、タイミングが早いと妊娠していても陰性の結果が出ることを知っていたので、この安堵も一瞬で消え去った。

そのまま家に戻って、交際者に妊娠検査薬を使ったこと、陰性だったけどまだ妊娠の可能性がゼロではないことを伝えた。
で、どんな返事がきても受け止めきれそうになかったので、「何も言わないで欲しい」と伝えて、これまた泣きながら布団にくるまった。

結局、安堵のおかげなのか次の日にはあっさり生理がきた。ただ、あの赤い鮮血をみてあそこまでホッとしたことは、これからもずっと忘れないと思う。

緊急避妊薬の悪用なんて

交際者との避妊をした性交渉ですらこれだけしんどかったんだ。

ましてや、避妊に失敗した場合や、性的暴行の被害にあった場合に感じる妊娠の恐怖は計り知れないだろう。生理のくる体をもつ私でも、それは想像しきれない。

さらに、少し調べてもらえれば、緊急避妊薬の副作用はなかなかにきついものだということがわかるかと思う。

これらを鑑みて、誰が好き好んで緊急避妊薬を悪用するんだろうか。
誰が、「じゃあ、次も使えばいいや」と思うだろうか。

むしろ、妊娠の可能性に不安でいっぱいの状況の中、緊急避妊薬を入手し、服用するまでがしんど過ぎないだろうか。

妊娠の可能性と、その恐怖や不安を誰かと共有できたあとならまだマシかもね。
けど、伝えられなかった場合に、たった一人でアフターピルを処方してくれる病院を探して、その日仕事や学校があれば適当な理由をつけて休んで、病院を受診して、産婦人科/婦人科の医師にアプターピルの処方を望む理由を懇切丁寧に説明して、安くないお金を払って、服用後に襲われる副作用に耐えなきゃいけないなんて、あんまりじゃないだろうか。

「じゃあ、次も使えばいいや」を危惧するお偉い方には、一度「生理が来ない」の恐怖も不安も言葉の重みも、全部を喉に詰まらせてみて欲しいと思ってしまう。

緊急避妊薬へのリーチの短さは、緊急避妊薬を必要とする人の精神的負担の軽減に繋がる。それを「寝る子を起こすな」に似たロジックで、耐え忍ばせようとすることには、理解を示せない。

自分より若い世代の子達に、同じような恐怖や不安を感じさせたくないと願うことは、そんなにエゴイズムに満ちているだろうか。

お偉い方々が危惧するものが理解できない私は、子供だろうか。

だとしたら、ずっと子供のままでいいかもしれない。

私がおばあちゃんになるまでに、絶対にドラッグストアに緊急避妊薬が並ぶ社会にしてやるんだ。