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40代サラリーマン、アメリカMBAに行く vol. 2

AIは、
チームの一員

今日は10月22日。ちょうど日本を出発してから2ヶ月が経つ。昨日無事に最初のセメスターの半分(モジュール1)が終了した。この2ヶ月、40歳を超えてアメリカの学校にわざわざ学びにきて本当によかったと思っていることの一つが、AIとの付き合い方を世界中から集まった20代の若者たちと体験していること。代表例はChatGPTとCanva。きっと会社にいたままだったらAIとの付き合いに自分は乗り遅れていたと思う。

人々は検索をしなくなる。とはマーケティングの世界ではよく言われるけれど本当にそうだと思う。ここでは検索するより前にみんなChatGPTに聞いている。

バブソンでは最初の7週間で初めて会った人たちと一緒に新規事業を考え、教授たちに提案をしないといけない。その提案内容で第一セメスターの成績が大きく左右される。この企画の検討や資料作りを進める上で、当たり前のようにChatGPTが自分たちのチームメンバーの一員として存在している。教授たちはあえてChatGPTを使う課題を与えてくる。

たとえば新規事業を提案するために、毎日知らない人に一人会って話を聞き、人々のペインポイント(生活において解決したい悩み)を探る課題がある。しかし人間に取材する前に一番最初にChatGPTに取材せよと言われる。そして取材の最後には何か聞き足りないことがあるか、もっとこう聞いたら良いと思うものはあるかを逆にChatGPTに聞くことになっている。すると、もっとこういうことを聞いたら良いと思うということがわんさか出てくる。その中には、なるほど!と思うものもいくつか含まれていた。

他にも、提案する新規事業案において、ターゲットとする顧客はどのような人たちのなのか(ペルソナ)、どのような行動をとっているのか(カスタマージャーニー)、それに対してどのようなアプローチがあるのかのアイデア出し(ブレーンストーミング)に関しても、自分たちで考えるとともに、あえてChatGPTにも一つずつやらせて、その上で自分たちの案と見比べて、自分たちがカバーできていないところは何か、ChatGPTの提案を踏まえてもっとより良くできることは何かを考え直して最終案を提出するように言われる。課題提出の際には、自分たちで考えたこと、ChatGPTにどう聞いてどういう回答を得たのか、それを踏まえて最終的にどういう案にしたのかをそれぞれ分かるように提出するように求められた。

ここ最近は、Googleで検索するよりも遥かに多くChatGPTを開き、聞きたいこと、提案してほしいことを聞くようになったと感じる。学校では、使用上の注意はあるものの、自分たちのアウトプットのプロセスにAIを取り入れるように教えられているように思う。この経験を通じて、AIに使われるのではなく、どう付き合っていくのかを学ぶことを問われているのではないか。だからこそ、回答だけでなく、どのような質問(Prompt)を投げたのかを教授たちにはよく聞かれた。

おもしろいことに、教授たちもChatGPTをよく知っている。ストラテジーのクラスではChatGPTにあえてGoogleの今後の戦略案を提案させて持ってくるように言われ、授業でChatGPTがどのような回答をしたのかを共有した。その上でどういう点で説得力に欠けるのか、それはなぜなのかを話し合った。

またチームマネジメントの課題では授業で学んだことをどのように現在のチームに生かしたのかをエッセイで書くのだが、作成においてChatGPTを使ってはいけないことになっている。もしChatGPTを使って提出すると、提出プラットフォームのシステムが違反を検知して、警告が出るようになっている。なお警告システムは盗用も検知し、他人の論文や考えを盗用した際にもアラートが出るようになっている。各自がエッセイを提出した後には何%自分で作成していない可能性があるのかが表示され、引用などを鑑みてそのパーセンテージが許容範囲なのかどうかが表示される。私が20年以上前にスタンフォード大で論文を作成した時には、そのようなシステムは聞かなかった。本当に驚くばかり。

AIが思い通りのイメージを
すぐに映像化してくれる

ChatGPTに加えてもう一つの出会いがCanva。Canvaはオーストラリア発のスタートアップ。クラスメイトのアメリカ人女性はCanvaの創業者を尊敬していると言っていた。若くて新しいビジネスを成功させている。自分もそんな人になりたくて会社を辞めてバブソンに来たと言っていた。

Canvaを知ったのは、チーム内で新規事業案のイメージを共有しようとした時だった。どんな人々がどんなペイン(悩み)を抱えていて、なぜ今解決されておらず(現在の商品・サービスでは満たされず)、自分たちはどのようにペインキラー(解決者)になれるのか、そしてそのプロダクト/サービスは具体的にどのようなものなのか。これまで議論してきたものを一度映像化してみることにしたのだ。その時にチームメイトからCanvaでやってみない?と言われたのだった。そのメンバーはCanvaを使ったこともなかったのに妹が使っているという理由だけでアカウントを開いてCanvaを使い始めた。

映像の大体の流れをチームで整理したら、早速イメージしている動画をAIを使って作り出し、テキストを打ち込んでナレーションを追加していく。自分たちのイメージしている顧客像、利用シーン、商品イメージがあっという間にビジュアル化されていき、動画になっていく。最終的にこれを何かに使ったわけではなかったが、長らくテレビCM制作に関わってきた私から見ても、完成度は正直高かった。こんなことがさっき初めて使い始めた人でもあっという間にできることに驚きを隠せない。

あらゆるプロセスに
AIを取り入れはじめる

もともと私は広告クリエイター出身だが、今後広告制作の多くが取って変わられると感じざるを得ない。簡単なウェブ動画くらいなら素人でもかなりの完成度のものを作れることになる。ChatGPTもきっと粋なキャッチコピーを何案も生み出せるだろう。そうすると中途半端な広告制作物にお金を払う企業は激減するだろう。

では、上流の戦略を立てられる人が生き残っていくのかというとそうでもないだろう。ある程度の戦略ならChatGPTは提案できてしまう。これまで戦略を立てるだけ立てて、あとは他の人に押し付ける人物や企業も残念ながらたくさん見てきた。そういう人たちも今後ChatGPTに取って代わられるのではないかと思う。

結局は人をどうリードしていけるかと同じで、どうAIをリードしていけるか。ChatGPTへの質問を間違えたらよい提案は出てこない。イメージしている映像をテキストで打ち込んでも自分の言語化が貧弱なら出てくる映像も大したことはない。AIが持つ力を思いっきり発揮してもらうために、なんて言葉をかけるのか。どう自分の考えを言語化するのか。そのためには自分の作業プロセスにAIを使いまくるしかないのだろう。もっとこう接すればよかった、もっとこういう言葉をかけるべきだったという試行錯誤がAIをリードしていける近道なのだと思う。

9月末、学内にあるプロトタイプ制作施設の偉い方に、MBA生は今すぐ教室を飛び出して、アイデア出しや資料作りで止まるのではなく、プロトタイプをAIを取り入れながら作れと教えられた。グラフィックデザイン、テキスタイル、プロダクトデザイン。あらゆるものの制作プロセスにAIを取り入れる。アメリカのボストンにそういう若者たちがいることを思い知った。コンピュータやインターネットを使わない会社や人々がいないように、AIもそれらと同じ存在になるのだろう。

※TOP画像はFreepik.comのリソースを使用してデザインされています。
著作者:rawpixel.com/出典:Freepik

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