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憎まれっ子結局愛されて世にはばかる【TUGUMIつぐみ/吉本ばなな】

『確かにつぐみは、いやな女の子だった。』

この本の書き出しはこうです。

たしか町田そのこさんか西加奈子さんだったか忘れたけれど、小説の1文目は大事だと言っていました。

ぐっとパンチの効かせて一気に引き込むような書き出しもいいですが、このTUGUMIの書き出しは後からじわじわ効いてくる技ありな書き出しでした。

これは読み進めていくなかでおっというフレーズが登場しますのでそれを楽しみながら読んでいただけたらよいかと思います。

さて、
私がこの本を手に取ったきっかけは、単純に図書館にあった吉本ばななさんの本だったからです。

少し前に『キッチン』を読みました。次第に吉本ばななさんの作品の雰囲気がわかってきた気がします。

すごく繊細で儚いのに、あたたかくて、強い。

そんなイメージです。

登場人物は繊細な人物か繊細な状況に置かれた人物が多いですが、それなのにあたたかさと強さを感じます。生命のエネルギーに満ちあふれている感じ。そして作品全体がオレンジ色の光に包まれているよう雰囲気をまとっています。

このTUGUMIという作品も、登場人物たちはおのおのの特徴をもちながら強く生きています。

つぐみは病弱で美しい容姿をもっていますが、性格は底意地悪く口も悪くいたずらが大好きです。ただ心の中にたくさんの光を飼ってるような印象を受けます。病気と死に対するものと、怒りと、素直な喜びとか。普段彼女は表に出しませんが。

そのつぐみといとこ兼友達の主人公まりあ。今思うとあまり特徴のない人だったような…たんたんと起こったことを話すスタイルでしたね。

名前がまりあなせいで聖母マリアのように寛大で優しいと周りから評価されがちだがそうでもないと本人は言いますが、物語を読み終えるといやまりあめっちゃ優しい子じゃんか!ってなります、本人に自覚のない優しさというのもあるのですね。

中盤くらいまでくると、病弱だけどはちゃめちゃななかなか死にそうにない女の子って…絶対物語的に最後死んで終わるよな…と若干びびっていました。

ほんとに最後のほうでつぐみが入院したところではちょっと泣きそうになりました。詳しい結末は言わないでおきます。

物語の中心の舞台は、夏の海辺の旅館です。

なんだかこう東野圭吾の『真夏の方程式』を彷彿とさせる舞台だなと思いました。ガリレオシリーズ、好きです。

夏、海、田舎、人間ドラマ。
これだけで名作の予感です。
あ、あと海街diaryとか。今思い出しました。

映画映えしますね。

話がそれまくりました。

つぐみははじめこそこんなやつ絶対に友達にしたくないと思いますが、だんだんその魅力に引き込まれていきます。読み終わるころにはもう大好きだぞこんちくしょー!になりました。つぐみのいう”顔を見てると手に持ってるソフトクリームとかをぐりぐりってなすりつけてやりたくなるくらい、好きなんだ”って感じですかね。この表現好きです。

そこまで短い話ではないですが、短く場面が区切られているので読みやすかったです。あんがいさくっと読めてしまいますので一日暇があればぜひ。

『キッチン』の過去記事と『TUGUMI』の購入リンクはこちらから。↓↓

本日もよい一日を!

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