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かる読み 『源氏物語』 【帚木】 雨夜の品定めってなんなのさ

どうも、流-ながる-です。
2024年大河ドラマ『光る君へ』の発表をきっかけに『源氏物語』をもう一度しっかり読んでみようとチャレンジしています。

読んだのは、岩波文庫 黄15-10『源氏物語』一 帚木ははきぎになります。

初心者の自分、雨夜の品定めがわからない

『源氏物語』は何年も読み継がれてきた超大作です。小説、漫画、映画、演劇などなどいろいろな形となって読者や視聴者に届けられてきました。自分もいろいろ見ましたし、どんな形になってもいろいろな角度から楽しむことができて実りある時間です。

【帚木】の前半部分にあたる”雨夜の品定めあまよのしなさだめ"、そのキーワードはかなりよく目にしましたが、自分の中では印象に残りきらず、具体的にどういったものかという実感がないものでした。あの壮大な【桐壺】が終わり、光源氏の物語になって最初に出てくる話になるんですけど、いかんせん馴染みがない。

“雨夜の品定め”って他の媒体になるとかなりの確率でカットされたり、あるいはさらっと流されることが多いなと思います。そのため、大体こんな感じという受け止め方になってしまっていたんですよね。なので、このたびは"雨夜の品定め"がどういう位置付けか考えることにしました。

雨夜の品定めがないと困るのである

紫式部が友人に読んでもらうことを前提に『源氏物語』を書いた、と仮定して考えてみることにしました。“雨夜の品定め”は源氏を含む四人の男性達が、五月雨(梅雨)の季節に宮中で籠らないといけなくなって、その時間を使って、それぞれに理想の女性について議論をするという物語です。最終的には源氏以外の男性陣がそれぞれの実体験を語りだしますね。
源氏がどこかに行って、何かをするっていうものではなく、議論の様子を描写したという感じかなというところ。

  • 源氏(光源氏)
    ほぼ聞き手・主人公

  • 頭中将とうのちゅうじょう
    源氏の妻・葵の上の兄弟で親しい、実体験を語る

  • 左のむまかみ
    雨夜の品定めのほぼ主役といってもよい人物、話し手

  • 藤式部とうしきぶぜう
    実体験を語ってくれる話し手

源氏は議論の聞き手となっているのでここだけ読むとものすごく影が薄いです。じゃあこの話、無駄なのかというと絶対いるって話なんですね。

“雨夜の品定め”の品というのは、女性の階級のことですね。上・中・下というふうに分けています。頭中将源氏に"中の品の女性は良いぞ〜"とおすすめするものですから、源氏が"じゃあそれぞれの品の定義教えてよ"と質問をしたことを発端に"雨夜の品定め"が始まります。

源氏のような帝の御子はトップもトップの上流階級の男性です。ハイパースペックイケメン男子が、いきなり中の品の女との恋愛をするというのはあまり現実的ではない。フィクションだけどリアル、この"雨夜の品定め"で源氏に中の品の女への興味を持たせ、ここで実体験を語る男性たちとはまた違った源氏独自の“中の品の女性との恋物語”が始まる前の序という認識になりました。

紫式部はここで議論された中の品の女性に該当すると思われます。そうなると友人も同じくらいの中の品の女性だと思われます。ハイパーイケメンの源氏との恋を構築するにあたって、いきなりそんな男性が中の品の女性と出会って恋愛なんていうのは実感がわかないということなんだなと思いました。説得力が欲しかったんですね。

平安時代の結婚を理解するのは大変だ

紫式部はどうやらいろんな話を聞いてきたんじゃないのかな、と思いました。おそらくそうでしょう。ここで語られる男性たちの体験談というのは、どこかで聞いたような話で、読み手も「それとなく聞いたことあるわぁ」という話が並べられているような気がします。

左の馬の頭の体験談で二人の女性が出てくるのですが、この時代の結婚形態について実感湧くなあと思いました。ひとりは嫉妬深い女性、もうひとりは別の男性を通わせていた女性です。

当時は一夫多妻で、男性は女性の家に通うのが基本なので、その日、その日で男性が通うかどうかが違います。別の女性の家へ通うことも当然あるわけですね。これがルールなので、嫉妬深い女性がいくら他の女性に通うことについて恨み言を連ねても、それがルール違反にはならないのです。しかも嫉妬が激しくなると男性からそれはよくないよとも言われるわけですね。

ただ、平安時代の結婚は届けを出すわけじゃないのでかなり不安定です。男性がこなくなったら解消なので、別の男性を通わせても当然良いわけですね。なので、しばらく無沙汰だといくら男性側が好きだったとしても、別の男性とのお付き合いはルール違反ではないので問題ないってことになります。

フィクションでは感動できるけど

"雨夜の品定め"では興味深い話が多すぎるので、ひとつだけ書き留めておきます。『源氏物語』は無論フィクションですが、その中で物語の中の女性についての話が出てきました。
物思いしすぎて隠れてしまう女性についてですね。大体こんな感じかなと思いました。

「思い詰めてどこかへ失踪する女性についての物語を、子供の頃に聞いた時はなんか感動しちゃったけど、現実では軽々しくて勘弁してくれって感じ」

フィクションと現実の区別を物語の中でやるっていうのがなんか面白いなと思いました。
"雨夜の品定め"の体験談や論はリアルに近いものなのかなと思いました。当時に生きた人々が読めばそうかなとなるのでしょう。そのリアルさからの、源氏の物語へ繋がっていき、引き込んでいく予感を抱きました。

ここからが楽しみです。読んでくださりありがとうございました。

参考文献
岩波文庫 黄15-10『源氏物語』(一)桐壺ー末摘花

源氏が実体験した中の品の女性・空蝉の話はこちらです。


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