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かる読み『源氏物語』 【紅葉賀〜花宴】 頭中将は努力家なのかもしれない

どうも、流-ながる-です。
『源氏物語』をもう一度しっかり読んでみようとチャレンジしています。今回は【紅葉賀もみじのが】と【花宴はなのえん】から、源氏のライバルと説明されがちの頭中将とうのちゅうじょうついて考えてみたいと思います。

読んだのは、岩波文庫 黄15-11『源氏物語』(二) 紅葉賀もみじのが花宴はなのえんになります。【紅葉賀】〜【花宴】まで読んだ感想と思って頂ければと思います。専門家でもなく古文を読む力もないので、雰囲気読みですね。

頭中将は源氏のライバルと紹介されること

まずこの人物について難しいのは決まった通称(ニックネーム)がないということですね。前半に頭中将という官職についているので、頭中将と呼ばれている。しかしこれいわゆる役職なので、当然ながら出世すると官職も変化するわけでして、いつまでも頭中将と思っていると混乱しますね。

高校生ぐらいですと『源氏物語』の読者に会える機会というのは珍しいです。説明を求められると、どうしても人物の名称を出さないといけないのですが、頭中将って名前を用いる時の違和感が特にすさまじく、しかしながら官職についてまで説明すると、本筋からずれるといいますか、難しいなと思っていたことがあります。だからまあ「頭中将と呼ばれているけど、あとから呼び方どんどん変わるからややこしいけど、源氏の親友というかライバルというかそんな人」という曖昧な説明しかできず「なんかやだな、この説明」と自分で思ってしまうのです。

少年漫画を読んでいますと、ライバルキャラってかなり重要視されがちで、ライバルという紹介の仕方をしてしまうと自分の認識がそうなので、余計に気になってしまうのです。

源氏の引き立て役か、ライバルか

いろいろな紹介文を読んでいますと、引き立て役とも言われやすいなと思っています。確かにライバルキャラというものは最終的には主人公に負けます、引き立て役とも言えるのです。
それで【紅葉賀】の朱雀院すざくいん行幸ぎょうこうの試楽で、彼は源氏と並んで舞を披露したわけですが、源氏とならぶと深山木みやまぎと表現されていました。山奥の木ってことですね。極端に言えば「こっちは華やかなお花だけど、こっちは雑草じゃん」みたいな感じかな。
ここで比較されて、源氏は格別とあからさまに比較され引き立て役に落ち着いています。ここでは正直ライバルか、というと首を傾げてしまう描写ですね。

【紅葉賀】では他にも出番があって、源典侍げんのないしのすけと呼ばれる老女をめぐる話が繰り広げられますが、そこは一旦置いときまして、次の帖の【花宴】でも盛大な催しがされるのですが、ここでは少し様相が違って見えました。少なくとも源氏と比べて《深山木》といった表現はないなということです。源氏が舞を所望されて舞った後に、頭中将も同じく舞を所望されて、負けじと頑張っているという雰囲気が漂ってきます。しかもなんだか影でひっそり努力していたのか? と思わせる感じがあります。
スーパーヒーローのすごさに対抗するために、ひそかに読者の知らない間に努力していたみたいな、結構漫画でもありがちな努力家ライバルの典型かもなんて思いました。

意外といない頭中将のような存在

肝心な源氏にとってはと考えると、彼はいないと困る存在なのだと思います。源氏は帝の御子で親王でさえ遠慮してしまうぐらいに帝に重んじられて愛されているという話ですから、気さくに話しかけて構ってくれる存在である頭中将は非常にありがたいことでしょう。
ちらちらと源氏のプライベートに首をつっこんでくる場面がありましたが、【紅葉賀】での源典侍げんのないしのすけのエピソードが象徴的ですし、それより前の【末摘花】でも源氏を出し抜こうと末摘花の姫にアプローチをかけています。このために源氏は焦って行動してしまう。
このさっぱりとした遠慮のなさが物語として、面白さを与えてくれているような気がします。こういう人物がいないと逆に困るといいますか、ちょっと味気なくなると思いますね。源氏という人物は、高貴すぎるがゆえに世間体を気にしないといけない立場で、だからこそ普段から気をつけて行動をしています。その内側をぐいっと引っ張り出すのに頭中将のような人物が物語には必要と感じました。

源氏にとってもちょうど良い人物だと思います。あんまりずっと気を張っているとなかなかくだけることができないけれど、頭中将が我こそはと張り合ってくれることで、素が出せる、そんな気がします。

これからも長く登場する人物なので、脇役でインパクトのある描写は少ないかと思いますが、彼の言動にも注視していきたいと思います。

ここまで読んで下さりありがとうございました。

参考文献
岩波文庫 黄15-11『源氏物語』(二)紅葉賀ー明石 紅葉賀もみじのが花宴はなのえん

続き。『源氏物語』に登場する貴婦人の一人について語っています。

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