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求める世界へと繋がるコミュニティの力

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は北海道苫小牧市役所にて未来創造に従事の朝倉 健太さん。行政と民間の両面から道内の創業支援を手掛けられる想いについて伺いました。


── 朝倉さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

苫小牧市役所の総合政策部にて未来創造戦略に取り組んでいます。


── 中々に難解な挑戦をされていらっしゃいますね!(笑)

もう少し嚙み砕いてお伝えさせていただくと、駅前の再開発の設計であったり、交流人口や関係人口を増加させる戦略を組み上げたりであったり、また都市の魅力を高めるコンテンツの創出に取り組んでいます。


── 都市の魅力を高めるコンテンツ。

例えば今年の秋に開催した苫小牧 MIRAI FESTがその一つです。未来をイメージしたステージによる豪華ライブや演出を準備し、より多くの皆様に苫小牧に足を運んでくださるきっかけを作ったり、他にはクラフトスパイスを使って町おこしに取り組んでみたり、また苫小牧にあるアイスホッケーチームの集客支援なんかもしています。


── 多彩にご活躍していらっしゃいますね!そんな朝倉さんがアイデアをカタチにする取り組みを始められたきっかけはなんだったのでしょうか?全くスタートアップと関係がない文脈に聞こえましたので(笑)

実は未来創造戦略室に配属になる前は、商業振興課に所属していて、そこで創業支援に取り組んでいたんです。けれども自分が配属されたばかりの時は、基本的にはスモールビジネスのサポートがメインで、大きく育てることを前提にした事業を支援する施策があまり見当たらなかったんです。


── それでスタートアップに興味関心を持たれたと。

もちろん、個人で手掛ける町の小さな商いが悪いというわけではなく、ビジネスには様々な選択肢が存在しているので、「スケール」を前提にした事業も応援できるような環境を自治体で作るべきだと考えたんです。


── それまで自治体として実績のなかったスタートアップ支援を開始するため、朝倉さんはどのような行動を起こされました?

やっぱり、他で成功している地域から学ばせていただく必要があるなと思ったんです。当時産官学で連携して「スタートアップの街 北九州」が盛り上がっているとのお話が耳に届いていたので、北九州で行政とタッグを組んでいるコワーキングスペースなどを視察に赴いたんですね。その時に偶然、StartupWeekend(以下SW)を北九州にて手掛ける女性のオーガナイザーの方がいらっしゃって、お話を伺ったんですね。

COMPASS小倉にてSW北九州メンバー(2019年)との出会いを得た朝倉さん


── 運命の出会いですね。

北九州高専と北九州銀行と北九州市役所がタッグを組み、それを地元の民間企業が支え、加えて大学も巻き込んで大きな輪が広がってきていると。北九州コミュニティの起点になっているのがSWだとその方から熱弁をいただいたんです(笑)


── そして見事に「熱」を貰っちゃったわけですね(笑)

そうですね(笑)コワーキングスペースを去る頃には、「もうこれは苫小牧でSWをやるしかないな」と心の中で決意していました(笑)ちょうど苫小牧には苫小牧高専もあったので、連携することで北九州モデルを再現できるんじゃないかとも思ったんです。


── 北九州モデルを苫小牧に。

もちろん、他にも思惑はありました。実は苫小牧高専には優秀な学生の皆様がいらっしゃるものの、中々に市内から距離が離れていて、市民との交流の機会があまりなかったんです。もしSWを北九州のような座組で開くことが出来れば、新しい形の連携が生まれてもっともっと町が活性化するんじゃないかとも勝手に期待しちゃったんです(笑)

高専生と連携してアイデアをカタチにしているSW北九州


── そして実際に、朝倉さんが旗振り役として動き出されたわけですね。

市役所の中で誰もやれって言ってなかったのですが、僕が勝手にやりました(笑)今までスモールビジネスの支援が中心だったので難色も示されることも多々あったのですが、スタートアップのコミュニティを育てることは創業支援の一部だと拡大解釈をして乗り切りました(笑)


── 市役所内のHARD THINGSを乗り越えられ、開催を終えて如何でしたでしょうか?

町として副次的な効果も含めて、良いことは無数に起きました。まず何よりも、世の中に対して「苫小牧市はスタートアップに取り組んでいる」というメッセージを発信することが出来たことです。感度が高い人に苫小牧を知ってもらうきっかけになったようで、札幌でご活躍のVCの方や社団の方からも、何かにつけてお声掛けをいただくようになりました。


── 苫小牧=スタートアップを応援する町だとの認知が広がったわけですね。他にはどのようなことが起こりましたか?

コミュニティが可視化されたことが大きいかなと感じています。SWという場が出来上がることで、何か新しいことに挑戦したい人、それを支えたい人、協賛してくださる地場の企業様、といった起業やスタートアップにポジティブな皆様が一同に介するようになったんです。


── 関係者が一同に介する。

これまで市も市民も企業も起業家もプレイヤーとして、町の中に存在していました。けれども全ての役者が揃って絡み合うなんてことはなかったので、これはとてもとても大きな変化だと思っています。

苫小牧市の多種多様なプレイヤーが集い始めたSW苫小牧


── そんな風にして数多のプレイヤーが集うSWを重ねて開催することで、コミュニティが徐々に大きくなってきていらっしゃるかと思います。そこにはどんな価値があると朝倉さんは考えていらっしゃいますか?

最初の価値は「繋がり」じゃないかと思うんです。まだまだ数は少ないんですが、起業を志す方が先輩起業家やVCと出会い、アドバイスを貰う機会が増えてきたんです。


── 交流が増えてきたんですね。

そうなんです。加え、そこからアクションに繋がる方も増えてきているんです。もしかすると世間的に起業に対するイメージが良くなったタイミングと重なっただけかもしれませんが、皆様アイデアをカタチにすることを身近に感じてくれているみたいです。苫小牧市もその風に乗っているなと思います。


── そんなコミュニティを運営する上で、大事なことはなんだとお考えですか?

頼れることを頼る、という姿勢かなと思います。実は僕自身、苦手なことがたくさんあるんですね(笑)もちろん全てを自分がやっているわけはなくて、自分が言い出して始めたことなので企画運営代表という形になっているだけなんです(笑)


── 皆様が役割を持っていると。

みんなが何かについて魅力を感じ、みんなが何かを楽しみながら、それぞれ関わりたい場所で、わくわくしていること。それが大事だと僕は思うんです。


── 逆にコミュニティの中でアイデアをカタチにする皆様が持つべき姿勢はどのようなものでしょうか?

困っていることを伝えること、だと思います。このコミュニティにいる人は、力になりたい人たちばかりなんです。相談されたら、もし相談された本人が応えられなかったら、誰かを紹介してくれたりするんです。


── 力強いですね。

実際、釧路で印象的なエピソードがありました。優勝チームの女性がアイデアだけに終わらせず起業を検討していて、そしてコミュニティの様々なメンバーに協力を仰いできたんですね。それで各々が出来ることで貢献して、今ではVCに繋がって更に具体的に形になってきているんです。

週末だけに終わらせず、アイデアをカタチにする道を歩み始めたSW釧路


── 人のネットワークで未来が開けていく。

前回の苫小牧に参加されたベビー服にチャレンジをされていた女性の方、覚えていらっしゃいますか?僕の専門外だったので、子育てに興味関心が高い人たちが集まる場所を案内したんです。そうすると、それをきっかけにして新しい取り組みが始まったみたいで。


── 何人かの人を経由すると、誰とでも繋がれる世界だからこそですね。

どんどんどんどん相談すること。ひたすらに手を挙げること。それを繰り返すことで周りの人たちが繋いでくれ、気付くと自分が求める世界に辿り着く。


── コミュニティの力で加速する世界、とてもとても心躍ります。ちなみに先程のお話の中に「釧路」のキーワードが出てきましたが、朝倉さんは苫小牧市役所の職員であるにも関わらず、どうして苫小牧以外でもご支援を?

実は自分は苫小牧生まれの苫小牧市民じゃなくて、札幌→旭川→帯広→苫小牧といった風に移動を何度も重ねているんです。実は釧路にも知っている方々がたくさんいらっしゃって。苫小牧市だけでなく、もっと北海道をよくしたいという想いがあるからこそ、釧路にも赴かせていただきました。


── そんな風にして北海道内の各地でコミュニティを育てる朝倉さんは今後、どのような未来を生きたいと考えらえていますか?

SWに関わってからというもの、物事を前向きに捉える習慣がついたので、自分自身も挑戦しつつ、誰もがより良い未来が生きられる環境作りを進めていきたいと思っています。


── 朝倉さん自身の挑戦。

自分の過去の経験から見つけたニッチな課題があって、それをテクノロジーで仕組化して解決できないかなと考えているんです。ユーザーインタビューやプロトタイピングもある程度終えているので、また仕事の合間を縫って再起動させていきたいなと思っています。


自身のアイデアもカタチにすべく開発を進める朝倉さん


── 環境作りについてもお聞かせいただけますか?

北海道に在住の皆様はご存じかもしれませんが、北海道には課題しかないんです。過疎化、冬場の大雪、そして動物との衝突、一つ一つの都市が離れ過ぎていているが故の医療不足、ありとあらゆる課題が詰まっています。


── 課題先進大国北海道。

けれども逆に、課題があるからこそ、解決策としてのスタートアップがそこから生まれる土壌でもあると思っています。それを仲間と一緒にコミュニティの輪を広げることで、ヒトモノカネ全部ない!という地域であったとしても、課題がチャンスになる文化を創出していきたいなと考えています。


── 最後に、朝倉さんと同じくアントレプレナーコミュニティを育てる全国各地の仲間へメッセージをいただけますか?

周りを気にせず踏み出し続けましょう、ですね(笑)


── 周りを気にせず(笑)

SWを苫小牧に持ってこようと思った時、今でこそ落ち着いた流行り病の真っ最中だったんです。それはもう役所内で反対が凄くって(笑)けれども僕が四面楚歌の中でも勇気をもって開催をすることで、取り組みに共感して応援してくださる方が登場して、無事に次へと繋げることが出来たんです。だからこそ、反対を気にせず一歩を踏み出すことが大事だと思うんです(笑)


── とは言っても反対派の皆様と向き合うと心が折れますよね(笑)組織の中で反対を押し切るコツってあったりしますか?

揺るぎない自分を持つことですね(笑)実は反対される皆様の多くは「なんとなく」反対されているケースが多いんです。もちろん論理的に反対される方もいますが、稀なんです。だからこそ、反対派の空気に負けずに「絶対にやるんだ!」という心の強さを持つことが大事だと感じています。


── 心の強さを噛み砕いて表現すると?

続きは下記よりお読みください。


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