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ピッチの模倣は控え目に

 とあるスタートアップのピッチコンテストに参加した方から、驚くべきお話を耳にすることに。なんと「過去の勝者の動画を見て、それをひたすらに模倣し、繰り返し練習するように」と事務局から指示が出されたという。果たしてそれには意味があるのかを考えた結果、個人の見解としては過度な模倣は控えるべきとの結論に至った。というわけで今回はその理由を書き残しておこうと思う。

 模倣を控えるべき一つ目の理由は、過去の勝者のピッチが必ずしも正解とは限らないから。ピッチコンテストでの勝利したとして、実際のVCや大手企業へのピッチの成否は別問題。コンテストにはスポンサーや主催者の意図が反映されることが多く、そこで勝利した内容がビジネスの成功に直結するとは限らないから。

 例えば、とあるミカンコンテストで、主催者が「環境に良いアイデアを!」と叫んでいたとすれば、ビジネスの成否とは別に、SDGsな環境に良いミカンを提案した人が勝ってしまうように。

 模倣を控えるべき二つ目の理由は、学習教材のバリエーションが限られてしまうから。過去のピッチコンテストの勝者だけを真似ると、過去の優勝者のピッチだけに焦点が当たり、様々なピッチのパターンを学ぶ機会を逃してしまうことに。その結果、自分のアイデアに最適な伝え方を見失う可能性が高い。

 例えば、過去のミカンコンテストの勝者たちが、「ミカンを子供たちに食べさせる様子の動画」を活用していれば、盲目的に似たような動画を作り上げピッチに盛り込んでしまうように。

 模倣を控えるべき三つ目の理由は、改善が進まないから。勝者のピッチに近付ける訓練を始めると動画と向き合う時間がメインとなり、恥を捨て人に届け、フィードバックを受け取る機会が減ってしまう。

 例えば、「先輩のピッチに近付けるよう、今日も明日もシャドウイング(繰り返してマネして発声)だ!」なんてことを繰り返していると、部屋の中で一人ぼっちで頑張ってしまい、誰からも改善点を指摘されないように。

 コンテストの過去ピッチの真似に焦点を当て過ぎてしまうと、アイデアをカタチにする旅路は上手く進まなくなるもの。過去のピッチがビジネスの現場で正解とは限らず、自分のアイデアに最適とも限らず、また改善の機会を逃す可能性が高いと肝に銘じておこう。

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