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成功者の物語に要注意


 新規事業やスタートアップに関わっていると「成功者の話を聞きたい!」「結果を出した事例を参考にしたい!」と思うことはよくあること。ただ、成功者の話には様々な罠が潜んでいることが多いため、今回は注意喚起をしたい。

 一つ目の罠は、成功者が語る成功の要因が実は成功に直接的な結び付きがないケース。例えば「○○の工夫をした」「××のスキルを活かした」といった説明があったとしても、それが全体像の中の一部に過ぎないことが多い。

 例えば、ミカン香水を作って世界中で大ブレイクさせた起業家がいたとしよう。彼の香水誕生の工夫の数々があるかもしれないけれども、偶然、その時期に世界中でミカンの香りが流行しており、それが大成功につながったという可能性も否定できない。

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 二つ目の罠は、成功者が語る物語が実際には真実を隠しているケース。例えばミスやトラブルを抱えていたとしても、それらを隠しているが故に、聞き手は真実の一面しか見ていないことも。

 例えば、ミカン香水を作る過程で香りの専門家とチームを組んでいたものの報酬をめぐる争いで分裂し、パートナーを変えたときにヒット作が誕生していたとしても、「なぜチームメンバーを変えたのか?」という質問に対し「市場のニーズに合わせた製品作りをするためです」といった偽のエピソードを紹介することも珍しくない。

 三つ目の罠は、成功者の取り組みが全て素晴らしいというバイアスを聞き手が受けてしまうケース。残念なことに自分たちは成功者に弱く、彼らの言葉を無批判に受け入れ、自分に適用しようとする傾向がある。

 例えば、ミカン香水を作成する際「原体験のミカン畑をイメージしました」と成功者に言われてしまうと、「原体験こそが成功の秘訣!」と信じ切って突き進んでしまうことも。

 成功者の話は、残念ながら全てそのまま活かすことができないケースが多い。成功者の言葉が全体像を捉えていないこともあれば、真実を語っていないこともあれば、成功者バイアスに陥ってしまうこともある。あくまで参考として受け止め、自分自身にとっての正解を試行錯誤を通じて見つけていこう。

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