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スロベニアまでバスで11時間の旅

2016年8月初旬。

 一年間のドイツ交換留学が終わり、住んでいた学生寮の契約が切れた後、まだ僕は日本に帰ろうと思っていなかった。

 ちょうどその時日本の大学の教授から、現地での通訳ボランティアをやらないかと誘われ、2泊3日で日本の高校生、大学生たちのために、彼らのフランクフルト滞在の間の通訳ボランティアをやった。

それが終わった後は元いた学生寮の仲の良い友人の部屋に一週間滞在させてもらっていた。

彼の名前はウィリアム。ルワンダ出身の同い年の学生である。彼とはバスで一緒になって以来仲良くなった。

寮の契約が切れるので、旅に出るまでの一週間泊まらせてくれないかと言ったらすんなりOKしてくれた。彼の部屋にはソファーがあったので、そこで寝泊りした。

 僕は留学先に持ってきていたどでかいスーツケースを持っていた。さすがに旅には持って行けないので、誰かに預けなければならなかった。

ウィリアムに預けようとも思ったが、彼はアフリカ人らしくかなり自由奔放なのでそこまでの信用ができなかった。まあ、そんな彼が好きでもあったんだけど。そんなこんなで別の寮に住んでいた日本人の女の子に預かってもらうことにした。

今これを書いていて、ほんとに、いろんな人に支えてもらってたんだなと改めて思う。


2016年8月8日

 一週間が経った。ついに1ヶ月の一人旅への出発の日。寮の友人たちに別れを告げて、そんなに大きくないバックバック一つを背負って出発。

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↑出発時に撮った写真。真ん中がウィリアム。右がもう一人の寮の友達タハ

 最初の目的地はスロベニアの首都リュブリャナ。フランクフルトから高速バス「FLIXBUS」に乗って11時間の長旅である。

FLIXBUSはドイツのバス会社で、ヨーロッパ全土にアクセスできる。運賃もかなり安い。お金があるわけではないので、旅行にいく時は殆どいつもバスだった。

今回の運賃はたったの36ユーロ。大体4500円くらいで国境を越えて旅ができる。

 出発時間は夜の9時。過酷なバスでの長旅に備えて、フランクフルト駅の近くにある、韓国料理店でビビンバを食べた。この久々の極東アジアの味はいつまでも忘れられない。

 ドイツの夏の夜9時はまだまだ明るい。昼みたいな明るさである。しかしながらフランクフルト中央駅はとても治安が悪いので気をつけなければならない。ナイフを持った人とか、いろんな危ない人たちを見てきた。

当時のフランクフルトのバスターミナルは、現在のように整備されてなかった。歩道があって、路線バスみたいに巨大な高速バスたちがそこに停車する。どのバスも行き先は別の国。プラハ、ウィーン、アムステルダム、パリ....

その中でもリュブリャナはかなりの遠距離である。にもかかわらず、多くの人が同じバスに乗り込んでいく。

バスの運転手にパスポートを見せて、乗車する。自分がドイツに来た2015年ごろはパスポートなんか見せないで乗車できた。しかしこの頃から、ドイツへの100万人のシリア人難民流入、パリ同時多発テロ、ブリュッセル爆破テロなどの事件が相次いで発生したため、どのEU圏内の旅先でも、身分証明をしなければならなくなっていた。

 バスのシートは通常の夜行バスという感じ。隣にたまたま人が来なかったので、二列使ってシートに寝っ転がる。行儀が悪いと思われるけど、数々の欧州バス旅行で、これが一番快適な睡眠ができる体勢なんだ。

 気付いたら寝てしまっていた。目が覚めた時、休憩で停車したミュンヘンにいた。いや、まだドイツから出れてないのかと絶望した。一番快適な体勢とは言ったが、シートは硬いので、体の節々が痛む。

休憩が終わり、オーストリアに差し掛かったところでまた僕は寝落ちした。相当体が疲れていたのだろう。

 外から光が差し込んできた頃、目が覚め、自分が今どこにいるのか確かめようと外の景色を見てみた。ドイツとは全く異なる風景。ボロボロな団地のようなものがたくさんある。まさに旧社会主義国を感じさせる建築様式。ついにスロベニアに入国したのである。

 11時間の旅が終わり、午前8時。ようやく最初の目的地スロベニアのリュブリャナに到着した。

 朝の気持ちの良い空気に触れ、ようやく到着したことを実感した時に僕は思った。「着いたけど、これからどうしようか」

僕は細かいプランを練るのが好きではなく、ざっくりと行き先だけ決めて、あとのことはその場で考えるというスタイルでいつも旅をしていた。

 とりあえず、駅のカフェに座って、留学先のスロベニア人の友達がくれたリュブリャナのガイドブックに目を通す。「よし、とりあえず旧市街まで行けばなんかあるだろ」

 コーヒーを一気に飲み干して、旧市街まで歩き始めた。これから始まる長旅に期待を寄せながら........

続きは次の記事で

 

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