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国ごと語る

6月9日から7月5日の約1ヶ月間、日本に一時帰国していた。

6月、シドニーから羽田空港に着いた僕を待っていたのは、うだるような暑さの中マスクをしたジャパニーズたちだった。着用率は99%。マジだった。みんな律儀に鼻までカバーしながらマスクしてた。かと思えば、喫煙所にはぎゅーぎゅー詰めになって大人たちがタバコを吸っているではないか。どういうことだ。ジョージアのCMでよくある「この星の住人たちは……」気分である。
かと思えば僕の友達は着けている人が少なかった。類は友を呼ぶとはこのことか。

とりあえず帰る場所は実家。姫路だ。YouTuberヒカル氏の生まれ故郷からほど近い、我が姫路市夢前町にある築20年の戸建が「とりあえず」の僕が帰る場所なのだ。両親は思ったよりも老けておらず安心した。
その両親によると、このnoteは親戚や近所のおじさんおばさんたちで読んでいる人もいるそうだ。父親は「わしは恥ずかしくて読めへんけど」と言っていたが、確実にあれは読んでいる人の言い方だった。

困った。肉親に見られているとなると書きたいことも書けやしない。心配されると困るので治験に行った話もできないし、盛大にうんこを漏らした話もできない。今回の一時帰国だって「銀座ダーマペン流血事件」や「反社だらけの銭湯 in中野」といった話があるのだが、それらもできない。

しかしそういった壁を突き破っていくのが書き手に必要な覚悟である。これから先、書いていくnoteが保守的になっていたり、縮こまっていたりしたら遠慮なく罵詈雑言をコメント欄に浴びせてほしい。「大衆に媚びてんじゃねえぞ!」と。「社会に一通りもまれた新卒社員が、ちょっと時間できた時に書くようなぬるい文章書いてんじゃねえぞ!」と。僕の尻を叩いてほしい。

今回の一時帰国では、おおむねしたかったことはできた。書店は15店舗以上行ったのではないか。香川在住の警察官の友達以外は、会いたかった人にも会えた。阪神は京セラとハマスタの2回観に行った。話題の映画、シン・ウルトラマンとハケンアニメも観れた。

そして今回のメインイベントである友人の結婚式では、友人代表スピーチという大役を任された。結果はややウケという感じか。「新郎は大学入学時は今よりも30センチほど身長が高かった」などといった嘘を混じえながらのスピーチだったので、そこを真剣に聞かれてしまったことが誤算であった。もっと「これからふざけ倒しますよー」という雰囲気を全面に出すべきであった。コアラを頭に乗せて登場するとか、序盤はずっと英語で喋るとか。今後の課題だ。

高円寺にある原稿執筆カフェにも行ってきた。
その名のとおり、原稿執筆に特化したカフェで、まず入店時に「目標枚数」を申告しないといけない。進捗具合を確認するため、店主の方が横からこっそり声をかけてきてくれるので容易にはサボれない。結果的にむちゃくちゃ集中できた。僕が行った時は他に5名ほどいたが、皆黙々と作業に集中していた。

総括すると、結局日本が一番だ。働く分にはおそらくオーストラリアの方が良いが、人生が彩るのは日本で間違いないと思う。まず日本語が使えること。どこでも日本語が使えるなんて、そんなうまい話があって良いのだろうか。それと外食が充実していること。特に牛丼チェーンとラーメン屋。すき家は重要文化財に登録されるべきである。本屋とカフェのハイブリット店がたくさんあること。ホテルが安いこと。街にそれぞれカラーがあること。

素晴らしい国であることを再認識できた時、喫煙所の密状態なんてかわいく思えた。日本人は、バカ真面目だけれどちょっと抜けているくらいがちょうど良いのだと思う。

オーストラリアへ戻ったまさにその日に、安倍さんが撃たれた。こちらでもニュースになっているし、シドニーやメルボルンでは日の丸のイルミネーションが点灯し追悼の意が表された。
近所のビーチでコーヒーを飲んでいた時、犬を散歩させたおばちゃんに声をかけられた。僕が日本人であることを知ると「大変なことになっているね」と同情された。それくらい影響力のある人だったのだ。

政治にさほど興味のない僕からしてみても、子供の頃からテレビで見ていた人が撃たれたとなると、何かを考えずにはいられない。悪いのは、奈良県警でもSPでもない。または特定された宗教団体でもない。「アベ辞めろ」と叫び続けた運動家たちでもない。一番悪いのは、拳銃を作って撃ったあの人だ。Twitterなんかを覗いていると、この一件は横に広がりすぎているように思う。故人を悼むより先に、順番抜かしの者たちが我れ先にと溢れかえっている。穏やかでない。

次に帰国するときは、国民がもう少し穏やかで、マスクの着用率も減っているといい。その日まで、僕は執筆と英語を頑張ります。

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