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私には何もない!

つくづく自分には何もないなと思う。
2018年の朝ドラ「半分、青い。」において主人公・鈴愛が、

「私は今年の夏で28だ!結婚もしてない、恋人もいない、漫画もどん詰まり!結婚もして子どももいてお金があるユーコに何が分かる! 私は…私には何もない!」

と言っていたが、年齢を重ねるごとに共感の度合いが増している気がする。もちろん女の28と男の28は持つ意味合いが全く違うわけだが、男だって辛いのだ。女も辛いけどね。ラーメン食べたい。

2019年秋からオーストラリアに住んでいる僕だが、こっちで出会う人はみんな魅力的で「何かを持っている人」ばかりだ。1,000人1人、10,000人に1人くらいの割合でしか経験していないことや、特殊な能力を持った人たちを数え切れないほど見てきた。そんな猛者たちを思いつくばかりに以下に挙げていく。なお、性別や国籍は読者の想像に委ねる。

・10歳の時に中東から日本へ難民として移住し、サッカーをしながら日本語がペラペラになった

・フロリダのディズニーランドでミッキーの中に入っていた

・「スマブラ」において世界レベルの腕前を持つ童貞

・4年前にビザが切れたが、今もなお不法滞在を続け、麻薬の密売で生計を立てている

・仙人

・ツインソウルのパートナーがいる

・日本の文化が大好きだが、麻薬取引の前科があるため日本に入国できなくなった

・走りながらラズベリーをピッキング

・お尻を露出させながらラズベリーをピッキング

パッと思い浮かぶ限りではこんなところだろうか。自分の小ささを日々実感するばかりだ。「自分には使命がある」だとか「これは自分にしかできないことだ」という思い込みは、自分を苦しくさせるだけだからあまり考えないようにしているが、少しでいいから人生に幾許かの光を差し込ませたいものだ。一芸で、一発で、つまらない人生を好転させる、そんな根底に潜む必殺の武器が自分にもあればいいのだが。

冒頭の鈴愛ではないが、僕も今年の夏で28になる。恋人はいない、英語も書き物も鳴かず飛ばずで中途半端、上昇志向があるわけでもなく、仕事をやらせると遅いし使えない。
本当にどうしようもない人間だ。どうしようもない人間はやはり、どうしようもない稼ぎ方をするしかなく、僕は先週からブリスベンで入院生活を送っている。

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もう僕が世間様のためにできることは、この健康な身体を差し出すことくらいなので、お腹に3箇所注射をされ、その後の経過を見てもらい、世界の医療発展のためのモニターとなっているのだ。

幾許かのリスクがあるバイトになるので、報酬はそれなりに良い。10日間の入院だが、ファームで30日間働くよりもよっぽど良いお金がもらえる。一日三食出してもらえるし、高速Wi-Fiも完備されているから暇になることがない。というか生活のスタイルとしては普段とほぼ変わらない。毎朝注射される以外は、Netflixを見たり本を読んだりして過ごしているので、こんなんでお金もらっちゃっていいの?という感じだ。

自分には何もない、と書いたが訂正する。僕には健康な身体があった。それで十分じゃないか。このバイトは、喫煙の習慣があったり、持病や常用薬がある人は参加できない。日本にいた頃からタバコは一本たりとも吸っていないし、こっちに来てからも大麻をガンガン吸う友達を横目に素知らぬ顔をし続けた甲斐があったというものだ(大麻常用者の近くにいると、やはり何度か誘われたりするものなのだが、吸うなら自分の意思で吸いたい。なんとなくで吸うのが一番ダサい)。

ただ、この入院期間中はコーヒーを飲めないのが辛い。文豪たるもの、コーヒーカップ片手にうーうー唸りながら物語を創造する生き物なので、退院したら即座に近くのローカルカフェに駆け込みたいと思う。


【今週の映画・本】

今年の目標は週に映画を2本、本を1冊読むことです。

映画。

新劇場版エヴァンゲリヲン序・破・Q

エヴァは中学生の頃どハマりしてて、確か序は観た記憶があるのだがほとんど忘れていたので再鑑。前評判通り、Qはよく分からなかった。それでも謎が謎を呼ぶのか、夢中になってしまうのがこのアニメの魅力。日本に帰ってシンエヴァ観たい。。

本。

・小説家になって億を稼ごう 松岡圭祐

戦略的に、現実的に、どうすれば稼げる作家になれるかを書いた本。こういった類の本は「お前は誰やねん」といった著者によるものが多いのだが、現役で活躍するベストセラー作家が書いているので説得力があった。

・映画にまつわるxについて2 西川美和

大好きな映画監督、西川美和さんのエッセイ集。これを読んだ上で「ゆれる」と「夢売るふたり」を観直してみたのだが、読む前では気がつかなかった細部の発見があった。でも、彼女の頭の中はまだ1%も理解できていないのだろうなとも思う。

サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。