ハイハイ聞くだけ以外の相談に乗る能力

相談に乗るのが壊滅的にヘタだった。今もうまくはないのだが一時期よりはマシになった。

ここnoteを読んでくれているひとの中にも「相談に乗る適性がゼロ」という方がいるかもしれない。救いになるかならないかは分からないが、メモ程度に記しておく。

悩んでいるひとにその原因を尋ねてはいけない。「悩みが解決したら、今とどういうふうに行動が変わるのか」、それを尋ねるだけでいい。

これはアメリカの心理学者の言葉である。

そもそも誰かに相談された経験のないひとは少ないと思う。覚えのない方はあれって相談だったのカモ……というふうに思い返してみてほしい。

振り返ると「あ、アレって、じつはショボめの相談だった」なんてことがザラにある。相談に乗るのがヘタなひとはこの「相談センサーがイカれている」という病気なのだ。相談かどうか区別がついていないので、いきなり「じゃあこうすればいいじゃん！」と具体的解決策を返す刀でぶつけてしまうのだ。

「男は解決しようとしてくるが、女性はそれを求めてないんよー」という説をあなたも聞いたことがあると思う。女子は「とにかくハイハイ聞いてほしいだけなんよ！アドバイスすんな！」というアレだ。

しかしこれまで僕は幾度となく望まれぬアドバイザーをやってしまっていた。食い気味に「じゃあこうしたらいいじゃん」を繰り返し、星の数ほどの反感を買ってきた。

別れればいいじゃん
辞めればいいじゃん
勘当されればいいじゃん
痩せればいいじゃん
引っ越せばいいじゃん

などなど言い放ち、オマケに「知らんけど」をくっつける。相談能力は下の下と言ってもいい。「相談に乗ると嫌われる」という法則をもっていたし、その度に「二度とこいつに話すのはやめよう」と思われたことだろう。

女子の沸点を超えるたびに「うるさい！とにかくハイハイ聞いときゃいいのよ！」と怒鳴られてきたり、吐き捨てられてきたり、席を立たれたりしてきた。

たしかに。うん。いろんな本にも書いているよね、ネット記事もそんなんばっか書いてるよね、ハイハイ聞いときゃいいのは分かるよ。

でもさ、生の人間に対して「ハイハイ聞くだけ」ってけっこう難しくないかね。

ブッ壊れた人形じゃないのだから「ハイハイ！」だけしか言わなければ、それはそれで狂っていると思われる気がする。自分的にも「俺が俺じゃなくなる！」と魔人ブウにならざるを得なくなる。

周知の事実だろうが「聞き上手」というのは「ハイハイ聞くだけ」を指す言葉ではないのだ。

うまいこと悩みに共感し、それを膨らませて味方するというのが理想なのだろう。「わかるぅー！」とオーバーにうなずきながら傾聴するのだ。これを世の中の相談名人らは「ハイハイ聞くだけ」と表現しているのだろう。

激烈な難易度だ。

こちらの心中は「そんなもん別れりゃいいじゃん」という言葉でいっぱいなのに「わかるぅー！」とヘドバンするのは心と体がバラバラになって、認知がガタガタになる。マジで魔人ブウになってしまう。

もう少ししっくりくる方法はないのだろうか、それとも「相談に乗る能力」はあくまで先天的なもので、チャリの乗り方のように後天的に身に付けることは不可能なのだろうか。

そんな壁にブチ当たった僕の出会った言葉が上記の名言だ。

悩んでいる人にその原因を尋ねてはいけない。「悩みが解決したら、今とどういうふうに行動が変わるのか」、それを尋ねるだけでいい。

これだ。

この観点で対話をしていくとめちゃくちゃ相手が話してくれることを発見したのだ。

そして何より驚いたのが自分ものめり込めるということだった。「つまんなさそうに聞いてるな」というポイントにも矯正が入るのは革命だった。俺が俺のままでいられるのだ。つまり「早く辞めちまえよ」と思いながら「分かるぅー！」と言わなくていいことになる。

「辞めたい。会社つまんない。上司もクソよ」
「クソな上司はマジファッキンだよな。仮に最高にクールなやつ……そうだな……たとえば福山雅治が上司だったらどうだい？」

「辞めたい。会社つまんない。上司もクソよ」
「辞めたい……そうだな……もし辞めちまったらどんな仕事に就くんだ？消防士か？それとも場末のダンサーか？」

なとなど展開も多い。そして面白いことに話題が広がるようで焦点はズレない。今の悩みを軸にしながらヨタ話が進んでいくので、ドライブ感が出る。自らの「すぐに解決策を出してくるやつ」という症状も抑えることができる。

万能な手法というのはこの世にないのだけれど、「今よりマシになる手法」というのはわりと転がっている。そしてそれらは自分の中にではなく、先人の知恵の中にある。
賢者たちは解決策や答えではなくて「気付き」をギフトしてくれる。基本的には「能力そのまま視点を変える」でエラーを捌いていくのがベストだ。

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