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姉との思い出

僕には3学年離れた姉がいる。

僕と姉との関係性としてはあたしンちに出てくる姉みかん弟ゆずひこによく似ている。

食卓ではテレビにコメントしたり、お互いのエピソードトークにツッコミを入れたりするが、ラインでやりとりをしたり2人の空間でも盛り上がるようなことはあまりない。

つい最近も偶然道であったので少し一緒に歩いたが無言を打破する話題を脳味噌フル回転で探すほどだ。

喧嘩もしたことがないほどに仲は悪くないのだが無関心といえばそれであり、仲がいいとも言えないのかもしれない。

そんな思い込みのためだろうか、2人の存在している世界が出来上がって既に22年も経っているためだろうか。

姉とのエピソードを意図的に思い出さなくては消えていってしまうような引き出しの中にしまい込んでいたようだ。

そしてその存在をいつ振りかに思い出すことができた。

きっかけは漫才コンビ オードリーの若林正恭さんの著書「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読み始めたことだ。

描写があまりに緻密であり、文章は若林さんの感情と思考が交錯した記憶、その記録であると僕には感じられた。

本を途中でそっと閉じ、自分の過去を改めて振り返ってみる。

こんな僕のありふれた22年でもただの22年という数字で簡単に片付けられる密度ではなく、少し希薄であると思っていた姉との思い出だけでも色濃く思い出すことができた。

それらのシーンには当時の僕の気持ちももれなく付属でついてきていた。

やはり感情と思考の動きが人生のブックマークになっているようだ。

(背伸びしているようでむず痒い文章。)


小学2年生と小学5年生

僕と姉の平日は多くの習い事でびっしり詰まっているため、休日はのんびりとしていることが多かったが、その日は母親の気まぐれで新大阪の食堂でランチをすることになった。

僕の家から新大阪までは自転車で30分〜50分程度。

長い旅とは決して言えないが当時の僕にしてみたら大阪−滋賀間をドライブするくらいのボリュームに感じていた。

いざ出発。

大人用の自転車に乗る母親に少し遅れて姉と僕が追いかけていく。

当時の僕にしてみたら高速道路での車間距離くらいの間隔が開いていた。(しつこい)

そのため、親子旅というよりも姉との二人旅としての思い出が残っている。


長い道のりで何度も振り返って僕がいるのを確認する姉。

同様に母親も姉を確認していたからなのか、当時の僕には見えていなかったけれどきっとそうなのだろう。

その優しさの伝染を受け、おいて行かれるのではないかという不安と孤独が幾分か和らいでいくのを感じていた。

信号で止まるたびに姉との距離が会話できるほどに近づく。

そのタイミングでなんとか孤独を払拭したい僕は人生初の一発ギャグ(と呼べる代物ではないが)を考えて姉にぶつけた。

「雲ひとつない青空〜あるじゃん!!♪♪」

このメロディーをお聞かせできないことで面白さが伝わっていないことが残念なところである。(   。。。)

この会心の一発ギャグは無事ピアノを習っていた姉の琴線に触れた。

ギャグの続きのメロディーを姉が歌い、歌詞をつける。

目に入るものの逆を言い、「〇〇じゃん!!」とツッコむだけの代物であるが当時は桜塚やっくんよりもまちゃまちゃよりも面白かった。

お目当ての食堂で何を食べたのか、どんな味だったのかは覚えていない。

この日のことで覚えているのは行き道でギャグを共作するのが面白かったことと帰り道で続きを作ってみると驚くほどつまらなくて駄作にしてしまったことである。

名作のまま終わっていたのならば、姉との会話のなかで何度か話題に上がるはずであるため忘れずに済んでいたのかもしれないし、もっと姉弟間の関係が親密になっていたのかもしれない。

ただ一概にそうとは言いきれない。

実は心の中で現在の姉との関係が人生の中でもかなり良好だと感じているため、もしかしたらあれは駄作に終わってよかったのかもしれない。


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