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【Web Summit Report】地球の裏側で感じた地球環境とイノベーションの未来

アメリカから日本に帰って2か月経ち、仕事に育児に忙しく過ごしていると、すっかりnoteから遠ざかってしまっていた。周りの同僚に「noteやれよ!インフルエンサー目指そうぜ!」と吹聴して回っているのに自分がこれでは、、と思っていた中で視察したポルトガルのイベントが、頭を金づちで殴られるほどに衝撃的なものだったので、記憶が新しいうちにnoteにまとめようと思う。

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首都なのにこじんまりしていて歴史を随所で感じるリスボンには、今年2月に観光でも訪れてファンになったところ。まさか1年で2回もいくとは。


ただポルトガルに縁がある人はあまりいないかもしれない、更にポルトガルの展示会と言われてもピンとこないと思う。名前はWeb Summitと言って、HTMLの勉強会のような名前だが、10年の歴史を持つ、れっきとしたカンファレンスだ。

しかしこのイベント、世界各地から7万人をこえる参加者がいながら、今年の日本人参加者はわずか200人。更につい数年前まで、10人以下の来場者数が続いていた、、という、日本ではまさに知る人ぞ知るイベントらしい。

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SXSWのように大勢の日本人が集まり、国内の認知度も高まってきたイベントでは無く、Web Summitには日本語情報もあまり無いので、概要説明から始めて、どこかどんな風に面白いと感じたのか、1つひとつ紹介してみる。

まずは開催概要から

日程     :11月4日~7日
開催地    :リスボン(ポルトガル)
参加者数   :70,469名
参加国    :163 ヵ国
主要参加国  :米国、英国、ドイツ、ブラジルなど
        ざっくり半分が欧州、1/4が米国、1/4がその他
スピーカー数 :1,206名
メディア   :2,526名
協賛     :200社
スタートアップ:2,000社
※数字は2018年のもの

リスボン市の人口は50万人強で、日本で言うと鹿児島市とか宇都宮市くらいの地方都市くらいのサイズ。そこに7万人ものメディアやイノベーターが世界各地から集まったら、それはもうすごい騒ぎだろう。実際、来場者リストバンドをつけた人たちが町中にあふれ、カフェで近くの席にいるのが全員、Web Summit来場者だったりした。


何故リスボンなのか

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大航海時代の始まりとなったポルトガルの象徴である、「発見のモニュメント」。ザビエル、コロンブス、バスコダガマなど、歴史上の人物が沢山。

2010年にアイルランドのダブリンで初めて開催されたWeb summitが、リスボンに移転されたのは2016年のこと。リスボン市は年間130万ユーロ(約1.7億円)の費用を同イベントに投資すると宣言し、誘致した

リスボン市は2011~2014年にかけて債務超過を経験しており、スタートアップを誘致することで地域経済を活性化しようという狙いがあったとのこと。

日本ではあまり馴染みがないが、ヨーロッパは各都市がスタートアップの誘致合戦を繰り広げている。こちらはEU-Startups誌のEurope’s biggest startup hubs in 2018の結果。

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この表でいうと、8位のダブリンで開催されていたイベントが12位のリスボンに移ったことになる。

思えばベルリンにはTOA(Tech Open Air)、パリにはVivaTech、バルセロナにはMWC(Mobile World Congress)など、アメリカでいうCESやSXSWに該当するテクノロジーショーが開催されている。リスボンは治安も良く、物価も安い環境を生かして欧州のスタートアップを呼び込むことに力を入れていることがわかる。

同様のスタートアップ大移動はアメリカでも常に起こっているが、日本にいるとあまり感じない現象ではある。東京の家賃が高いからスタートアップが大阪に行き、そしたら大阪の物価が上がって、みんなが名古屋に行く、、なんてゲルマン民族大移動は聞いたことない。


Web Summitの構成

イベントの話に移る。こちらが会場地図。紫色のエリアがトークセッションのシアター。緑色のエリアがワークショップやミーティングラウンジ。白色が展示区画。一番左には、キーノートが行われたセンターステージがある。

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来場者は、アプリを参考に気になるトークセッションを聞き、それ以外の時間は展示を見て回る。ミーティングが入ったらラウンジに移動する、という時間の過ごし方をする。見るものがとてつもなく多いので、アプリのマイページでスケジュールを管理して、被ったら同僚に代わりに見てきてもらって、、とせわしなく会期を過ごす。

イベント界のUBERと呼ばれるWeb Summit

Uberがタクシー業界を変え、Airbnbがホテル業界を変えたように、テクノロジーが業界全体のUXを大きく変えている中で、Web Summitは「イベント界のUber」と呼ばれているらしい。その理由はモバイルアプリの機能にある。アプリでできることは、

・マイページでの自己紹介(LinkedIn的使い方)
・他の来場者情報の閲覧とテキストの送付
・AIを使っての来場者同士のマッチング
・ミーティングスケジュール管理、Invitationの送付(Outlook的使い方)
・トークセッションの閲覧とスケジュール管理
・スピーカのプロフィール閲覧とテキストの送付
・ブースマップ閲覧と現在地の確認
・プレゼンが行われる場所の地図を表示
・セッション音源と字幕の閲覧(別appとの連動)

と書いても全然伝わらなかったので、デモ動画撮ってみた。

展示会って数万人来場しても、実際現場で話す人はごくわずか。でもアプリが気になった人と会う機会を提供してくれたり、ミーティング案内を送れたり。更に今話してるスピーカのキャリアを知れたり、英語字幕をリアルタイムに確認できたり、、とできることがすごく多くて驚いた。冗談かと思うくらい、みんな展示会場でスマホ見てる。それは退屈してるんじゃなくて、もう1つの展示会場がアプリ上にあるということだった。

センターステージのスピーチはまるでフェスのよう

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開幕と同時に行われたキーノートスピーチに登壇したのは元CIA職員のスノーデン氏(亡命中のロシアからの中継)とHuawei の郭平 会長。キーノートが始まると、映像や照明を使った演出が始まり、壮大なBGMと共に来場者が叫びだす。これはフェスか・・?と思うほどの盛り上がり。現場は異様な熱狂に包まれる。以下の動画でぜひ。

それにしても、キーノートがスノーデンとHuaweiなんてあまりに反アメリカ的なラインナップだな、、と正直驚いたが、その話はまた後で。事務局との意見交換でその話題になり、良い話を聞けたので後ほど紹介したいと思う。


ブースの主役はスタートアップ。彼らを支える存在としての大企業の活躍

傾向としてそうかも?と思ったのはスタートアップの数がとても多く、大企業は彼らに自分たちのソリューションを売り込んだり、タレントを採用したり、パートナーを選んだり、、とスタートアップを中心としたコミュニケーションが多いように感じた

AWSはスタートアップ向けのAWS講習を行い、会場は常に満員。同様にシーメンス、Google、マイクロソフト、フォルクスワーゲン、サムスンなども、スタートアップをEmpowermentするようなワークショップや展示が多かった。これだけ沢山来るんだから当然といえば当然かもしれない。

大企業が自分たちの言いたいことをいうだけのブースは滑るかも、、と感じた。

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ちなみにスタートアップとして出展すると、ブース出展は1日で切り上げて、残る会期は投資家とのミーティングや、企業の状況に応じたワークショップを事務局が仕込んでくれると聞いた。なんだその神待遇。参加したスタートアップの方がいたら、どんなだったか教えてほしい。

さて、ここまでがイベントの概要紹介。以下は、参加して感じたことを紹介してく。

思想こそがイベントを強くするのではないか

Web Summitは展示会でもあるが、現場を訪れると商業的な意図を上回る、大きな理念ようなものを随所で感じた。例えばイベント事務局の担当社員の方と会話した時のこと。僕がキーノートスピーカについて触れ、「Huaweiとスノーデンというのはあまりに反アメリカなラインナップではないか。アメリカ政府・市場と距離を取りたいのか?」と聞いたところ、彼はこう答えた。

大切なのは、1つの見方に囚われずにバランスを取ることだ。以前、Facebookの幹部がキーノートに登壇し、同社の事業が社会を良くしていることを語ってくれた。しかしその後、フェイクニュース問題でCEOが米国議会に呼ばれ、様々な事態が明らかになったのを見て、これは良くないことが起きていると思ったんだ。」
「今もGoogleやAmazon、Mircosoftは出展者として大きなブースを出し、スタートアップのイノベーションを支えている。それは本当に素晴らしい。でも、それだけが正解ではない。」「違う側面から真実を知るためには、Huaweiやスノーデンの話を聞くことが大切だと思う。」

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5Gを活用したサービス開発を行うスタートアップに総額1,500Mドルの支援を行うプログラムを発表した、Huaweiの郭平会長(写真:Xinhua

イベントを運営していると、商談総額やメディアカバレッジなどに目を向けがちで、それはそれでとても大切なのだが、Web Summitは世の中を良い方向に導くために皆が集まり、考える場を提供しているのだなと感じた。この思想こそが、イベントを唯一無二のものにしている。出展者もこの点を理解し、自らのポジションを明確にして、相手と会話することが大切であるように思う。

会話の中で自然発生する高感度の情報は、語学力を磨き、場に訪れることでしか獲得しえない

トークセッションがあまりに多く、ラインナップが面白いので、参加できる限りして、できる限りのメモを取った。例えばランボルギーニのCMOとバーガーキングのCMOの会話なんて、ここじゃないと絶対聞けない。仮に自分がスピーカとして話す立場に立てば、スピーカーラウンジにも入れるし、インフルエンサーにも会えるし、もっと多くの情報を取ることができるだろう。

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SXSWもTEDもWeb Summitも、そのコミュニティに入って、英語で完璧にコミュニケーションが取れれば、もっと感度が高い情報を取れる。当たり前だけど、4日間このイベントに缶詰めになることで、英語が完璧じゃないことで逃すOpportunityがあまりに多すぎる、、と感じざるを得なかった。20代は海外に住み、仕事をすることを目標に英語を勉強していたが、それも叶った今、これから英語を勉強する最大のモチベーションはここになると痛感した。

サステナビリティやジェンダーギャップに関する強烈な危機感。待ったなしの状況であなたは何をするのか

IKEAのChief Digital OfficerであるBarbaraが語ったのは、地球環境に関する圧倒的な危機意識だった。

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2030年までに再生可能エネルギーの発電量が化石燃料を追い抜かなければいけない
2030年までにゴミ・廃棄物の量を世界全体で半分にしないといけない
Customer中心主義を超え、人間生活全てに配慮した「People中心主義」に変革する時が来た

など、到底1社では成し遂げられない目標を掲げ、そのための同社の取組が紹介されていた。

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Barbaraは少数派ではなく、むしろ環境問題に触れないセッションの方が少ない、というくらいにあらゆるトピックでこのテーマが掲げられていた。投資の話でも企業文化でもリーダーシップ論でも、「では気候変動の問題にはどう取り組みますか?」とファシリテーターは問いかけ、登壇者は具体的な回答が求められる。多くの登壇者もBarbara同様に、まず大きな目標を掲げた上で、私たちはこの取り組みを行っています、という回答が多かったように感じた。

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その他の事例だと、コカ・コーラが「廃棄物0」を掲げて紹介していたコーラのリフィルサーバー事業が目にとまった。施設にサーバーを置いてマイボトルでリフィルする仕組み。そんなにコーラ飲む?という疑問はさておき、SDGsを単なる企業ブランディングに使うのではなく、実業での大変革につなげる、という視点ではすごくまっとうな取り組みだと感じた。

つまるところ、Web Summitとは何なのか?

Web Summitとは何のイベントか?と聞かれたら、「世界を良くするために皆ができることを見せ、話し合うイベント」と答えるしかない。出展ブースやプレゼンテーションでよく見られたのは「気候変動・環境問題」、「サイバーセキュリティ」、「BREXIT」、「5G」、「ダイバーシティ」などだが、主催者が定めたジャンルなどは無く、それぞれが描きたい世界の実現に向け、自らのビジネスや政策を話しあう場、という印象だった。

最後に、ホストであるリスボン市がWeb Summitを徹底支援していることを紹介したい。前述の通り、市が投資して誘致しただけあって行政がホストとして管理を徹底しており、期間中はとても過ごしやすかった。

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期間中は随所にこんなサインがみられるし、地下鉄では道案内も沢山いた。さらにNight Summitと呼ばれるパーティは毎日違う地区で開催され、リスボンの歴史的な風景を見ながら食事やお酒を楽しむことができ、観光時間の無い出張でも十分街の雰囲気を楽しむことができた。

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Night Summitの会場周囲には警官が大量に待機しており、警備を集中させる役割も担っているのだな、と感心した。パリピながらオーガナイズされた空間で、治安に不安を感じることもなく、会期を過ごすことができた。


長くなりすぎてきたのでこのへんで。。日本からも徐々に参加者が増え、今年は富士通が初となるブース参加をしたことから、今後日系企業の参入が増えることも予想されます。気になる方、ぜひ色々と意見交換しましょう~!

参考記事








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1987年生まれ、奈良出身。関西愛がすごい。2017年、パナソニックの駐在員としてニューヨーク勤務→2019年に帰任。本職は広報・マーケです。 アメリカで見つけた最新のマーケティングトレンドや、日本との違いについてご紹介しています!
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