養殖ミンクの生体内で生じるSARS-CoV-2変異体(Y453F)は、人々に脅威を与えるかも?

Y453Fミンクウイルス

SARS-CoV-2における突然変異は、COVID-19に対する潜在的なワクチンや治療薬の有効性を危うくする可能性がある。

他の哺乳動物と比較して、ミンクやフェレットなどのイタチ科の動物は、SARS-CoV-2に比較的簡単に感染する可能性がある。なぜ、SARS-CoV-2がこれらの動物にそれほど伝染性であるのかは明らかではない (1)。明らかなことは、SARS-CoV-2が、高密度で大量に収容されている養殖ミンクに感染すると、ミンクの生体内で、SARS-CoV-2が大量に増殖する。その結果、人間が、養殖ミンクと同様にSARS-CoV-2に対する高い感染リスクをもたらす可能性がある。

鳥型やブタ型のインフルエンザウイルスは、本来その種特異的なウイルスである。しかし、種を超えて他の動物に感染する豚インフルエンザウイルス亜種が生じることがある。豚インフルエンザウイルスに感染している豚に、比較的ヒトに感染し易いウイルスが感染した場合、豚の生体内で、豚インフルエンザウイルス遺伝子とヒトに感染し易いウイルス遺伝子が組み換えられ、ヒトに感染し易い豚インフルエンザウイルス亜種が生じる。同様に、養殖ミンクの生体内で遺伝子組み換えや遺伝子変異が生じることで、感染性の高いSARS-CoV-2亜種の発生が懸念されている。

養殖ミンクの生体内でコロナウイルス増幅中に、コロナウイルスにおける自然選択(「適応」)が起こる可能性がある。このようなウイルスにおける自然選択は、ヒトの生体内で増殖過程では認められないSARS-CoV-2の突然変異の出現によって観察される (2,3)。ミンク由来の1種類のSARS-CoV-2の突然変異体(Y453F)の感染が、人々の間に広がっている (4)。

現在まで、全てのSARS-CoV-2の突然変異体のデータが公開されているわけではない。したがって、ミンク農場で働いている人々で検出されたSARS-CoV-2の突然変異体が実際に養殖ミンクに由来するかどうかも明らかではない。

しかし、ミンクに由来するSARS-CoV-2の亜種が人々に感染し、そのウイルスが感染者らによって受け継がれる例が認められている。

SARS-CoV-2において突然変異が生じた結果、人々や動物に感染し易いSARS-CoV-2の亜種が、宿主で増殖したり、COVID-19に対する治療薬やワクチンの効果が認められなくなる。

そして、何百万匹もの養殖ミンクによって仲介されたSARS-CoV-2の亜種の拡散が制御されていない。その結果、ヒトに対して重篤な症状を引き起こすSARS-CoV-2の突然変異体が世界中に拡散されてしまう可能性が危惧されている。

References
1. Enserink M. Coronavirus rips through Dutch mink farms, triggering culls Science 368(6496): 1169 (2020)
2. Oude Munnink BB. Sikkema SR. Nieuwenhuijse DF. Jan Molenaar R. et al. Transmission of SARS-CoV-2 on mink farms between humans and mink and back to humans. Science 10 Nov 2020: eabe5901 DOI: 10.1126/science.abe5901
3. Hayashi T. Konishi I. Subspecies of SARS-CoV-2 from farmed minks might be a threat to humans. Science Published on 11 November 2020. https://science.sciencemag.org/content/368/6496/1169/tab-e-letters
4. Mallapaty S. COVID mink analysis shows mutations are not dangerous-yet. Nature 587(7834): 340-341 (2020).                                                                                                                                                                                             がん治療専門ドクター/癌ゲノム医療/新興感染症            Science Published on 29 November 2020 by 京都@Takuma H


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