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これからの旅行・観光業界で起こるであろう7つのトレンド(もしくはやるべきこと)

こんにちは。
倉敷の美観地区で『株式会社有鄰』という会社をやっている犬養といいます。

実際に観光地でビジネスを行っている立場から、これからの旅行・観光業界が「こうなっていくのでは」そして「自分たちはこうしようと思う」という話をしようと思います。

昨日noteでは、前編として前提となる話を書いてます。

今回は後編、こちらが本題と言えるような内容です。

これからの旅行・観光業界7つのトレンド

大きく分けて以下の7つなのではと考えています。

1. 海外旅行(インバウンド)はしばらく復活しない
2. ビジネス利用・MICEは根本的に減る
3. 近距離移動の旅行が増える
4. 観光地ではなかった場所が観光地になるチャンス
5. オンラインとオフラインのハイブリッド旅行
6. 旅行の前と後も連続していく旅行
7. 地域の魅力をその地域に伝える教育化

ではそれぞれ考えていることを書きます。

1. 海外旅行(インバウンド)はしばらく復活しない

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まず全世界的な兆候としては、海外旅行は半年〜1年は復活しないと思います。
なぜかというと、自国優先なナショナリズム勃興のあと「Gゼロ時代」と言われる世の中になっていた中で、この新型コロナウイルスの流行が起きているからです。

「Gゼロ(ジーゼロ)」というのはアメリカの政治学者イアン・ブレマーが使い始めた言葉だと思いますが、「G7(ジーセブン)」のような世界のリーダーが今は不在(ゼロ)という意味です。

そのため、全世界的に「こういう基準があれば渡航してもいいよね」という統一ルールが作られにくい世の中なんですよね。
と同時に、ルールだけでなく人種間の断絶(アジア人差別など)も懸念される点です。

なので世界全体としては、他国への旅行はまだ厳しそうです。
でも例えばいち早く流行が収まった中国と収まりかけている日本など、一本の線の関係で二国間合意ができた海外旅行はそれよりも早く復活します。

ただそれも、障壁はいくつかありそうですよね。
例えば日本に来てもらうことだけ考えても、成田空港はNGで岡山空港はOKとするのか、とか、人種による感染予防に関する考え方の違いも揉めそう、とか。

なので僕は、来てもらう側としてはこれまでのようなインバウンドに頼らない方向で考えるのがいいと思っています。
(それはそれで日本の成長戦略的には困るんですが、それはまた違う話なので)

ちなみに「来年の東京オリンピック開催が確定したら、この国際的なルールの策定が進む可能性がある」とReluxの元CEOの篠塚さんが語っていて、たしかにそうだよなと思ってます。

なお、オリンピックの話はYouTubeの方でしか触れられてないです。

つまり、東京オリンピックという世界的に移動が生じるイベントが確定すると、強制的に締切が設定されるので、国際間の合意が進むのでは、っていうことですね。

とはいえ、最近はブラジルやアフリカ諸国での感染が拡大してきているので、世界全体としてはまだまだ厳しそうですね。
(先日、EUでは夏休みバカンス期間でのEU圏内移動を許可しようという動きがありましたが)

2. ビジネス利用・MICEは根本的に減る

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これは残念ながら絶対にそうなります。

このコロナで、「オンラインでできることたくさんあるじゃん」「これまでみたいに会いに行く必要ないよね」と気づいてしまった会社が多いからです。

ここでは個人の感覚はあまり重要視されなくて、どの会社も経費は削減したがっているので、会社として「出張よりもオンラインで済ませて」という傾向は増えるでしょう。

JR東海の新幹線ビジネス利用には大きなダメージで、リニアの計画も再考しなければいけなくなるかもですね…。

3. 近距離移動の旅行が増える

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これは6月から回復して、夏休み(ほんとにあるのか?笑)が始まる7月にはだいぶ伸びると思います。

弊社の一棟貸しの宿でも、まず『岡山割』という宿泊プランを再開することにしました。
岡山県内の在住者が、車での移動をして、一棟貸し宿に泊まるスタイル。

そのように最初は段階的だとしても、確実に復活するマーケットだと思います。
なので最初に注力すべきマーケットでもあります。

星野リゾートの星野佳路さんは、地元の人が行く観光として「マイクロツーリズム」という言葉を使っていますね。

この「地元の人」というのは、これからの時代の旅行や観光を考える上で、とても大事なポイントだと思っています。
この記事のあとのほうでも、それを書きます。

4. 観光地ではなかった場所が観光地になるチャンス

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三密の回避によって生まれるマーケットです。
つまりこれまで観光地ではなかった場所が好まれる理由ができた、ということです。

これまでのネイチャーツーリズムのように人気スポットである必要もなく、「日常から癒やされるにはほとんど人が来ない自然に囲まれた場所でいいじゃん」という心理がより強くなります。

既存の「観光地」が持っていたシェアを、観光地でなかった場所がいくらか獲得していく流れですね。

僕は美観地区という「ある程度確立されている観光地」で事業をする立場なんですが、そこに対しては少し逆風になるトレンドです。

でも、岡山という場所を例にとってみても、美観地区や後楽園以外の場所にも魅力はたくさんあるわけですよね。

なのでその魅力を掘り起こせる「編集力」「(デジタルとオンラインを含めた)コミュニケーション力」があれば、これまでよりもだいぶやりやすくなる話でもあります。

5. オンラインとオフラインのハイブリッド旅行

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ここからはコロナの流行より前から僕が思っていた部分でもあるので、1.〜4.よりも「旅行・観光業界がこれからやっていくべきこと」に近くなる話。

これから確実に増えるのが、「旅行する前(計画段階)のオンラインでの情報のシェア」です。

コロナと絡めて話すと、まずこれまでよりリアルでのコミュニケーションが全体的に減り、オンライン上のコミュニケーションが増えます。

すると例えば友達と旅行の計画を立てるときも、旅行ガイドブックを一緒に見るとかではなく、オンライン上でzoomとかしながら情報をシェアしつつあれこれ話す、というスタイルが増えるでしょう。

それってこれまでよりも旅行をする前の体験がよりリッチになる、っていうことでもあるんですよね。
動画もあれば、VRも出てくるかもしれない。
言い換えると、旅行をする前から旅行をしている感覚が増すっていうことです。

すると私たちのような宿をやっている者、観光地での飲食をやっている者がすべきなのは、旅行前に触れてもらうコンテンツを作り、届けること、です。

その「旅行前」を狙ったメディアやプラットフォームも出てくるかもしれませんが、ベターなのは自分たちで発信をすること。

僕が具体的にやろうと思っているのは、例えばうちの宿で週1回とか定期的に宿をご案内するYouTube Liveをする、とか。
旅行を検討してくれている人に見てもらう、家選びでいうとオンラインの内覧会みたいなものです。

あるいは、宿をご予約いただいた方には、実際のご旅行までの各週それぞれで宿やその地域のコンテンツを届ける、とか。

事前にお客様とコミュニケーションをとっておくことは、実際のご旅行の満足度を上げることにもつながると思っています。

オンライン中心でつながっている旅行前の段階から、オフライン(リアル)で味わってもらう実際の旅行まで。
そのオンラインとオフライン、トータルでどう楽しんでもらうかを考えることは大事なんじゃないかなと思います。

6. 旅行の前と後も連続していく旅行

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5.と関連する話です。
旅行前にオンラインでお客さんにコンタクトすることのメリットは、旅行したあとも、お客さんとのつながりが消えづらいことです。

つまりその時点で、旅行後により深いファンになってもらうためのコミュニケーションが取りやすくなってると思うんですよね。

例えばうちの会社の場合、こんなことができると思っています。

・岡山の特産品をつくる生産者の方たちと一緒にオンラインで話せる場をつくる
・宿に新しくとりいれた手仕事のものを伝える動画を届ける
・違う時期に泊まったお客さん同士が交流できるオンライン飲み会を開催する

そういった形で、一度旅行に来てもらった方たちと長いスパンでコミュニケーションをとっていく、やがてそれがコミュニティ化していく、というのはこれまでよりもやりやすくなっているんじゃないかと思います。

「旅行の後も連続していく旅行」と書きましたが、お客さんにとってその土地を常に近いものとして感じてもらいやすくする、っていうことです。

それは「関係人口を増やす」という文脈にも沿っているかもしれませんし、それがよりやりやすくなる時代になるのでは、ということです。

7. 地域の魅力をその地域に伝える教育化

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最後に、「観光とは何か」という本質的なところにも立ち返って、僕が考えていることです。

僕は「観光とは、その地域の魅力を伝え、楽しみ、味わってもらうこと」だと思っています。

これまでの観光業界は、地域外の外貨を獲得するためにも、外ばかり見てきたところがほとんどだと思うんですね。
もちろんその方が大きなマーケットですし、優先順位としても正しいとは思います。

ただ、今はその目を内側、地元に向けるいい機会だと思っています。

つまり、「その地域の魅力を、地元の人たちに伝える」ということ。
それはこれまでの意味での「観光」という言葉は、「教育」に近いかもしれません。

ただ、地元の人がその地域の魅力を知り、自分たちがいる場所を誇らしく思うことって大事だと思うんですよね。

そもそも僕自身、倉敷の小学生〜大学生まで話す機会があり、美観地区のことをよく知らない子も多い、倉敷に誇りを持っている子も少ない、ということは感じていました。

子どもたちを含めた地元の人たちに、その魅力を知ってもらうことにも注力してはどうでしょうか。

それは感傷的な意味だけではありません。
例えば岡山市の人が休みの日には倉敷の美観地区に遊びに行く、総社市の人が総社産のおいしいものをより知って地産地消率が高まる。
そういった経済的循環を、これまで以上に増やし、担保しておく必要があるんじゃないかと思っています。

それは一種のリスク分散の考え方です。
でもこれまでのような長距離移動による観光が少しずつ減るのであれば、なおさらその地域にもフォーカスすべきだと思います。

中長期的にみれば、そうした「教育」に触れて育った人が、5〜10年後にその地域の魅力を対外的に伝える人材になることも増えるのではないでしょうか。

終わりに

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この他にも、リモートワーク環境が整ったリゾートのホテル・宿が増えるだろう、とか、MICE向けの大型施設は稼働率が低くなる広大な部屋をどうすべきなのか、とか、たくさんトピックはあります。

このnoteでは、僕が最も当事者として書けること、なるべく本質的だと思われる変化と、その上で自分たちがやろうとしていることを書きました。

旅行・観光業界といってもいろんな状況・業態・立場があり、それぞれこの状況をどう乗り越えようかと真剣に頭を悩ませ、行動をする人たちを僕も応援したい気持ちです。
(まず自分たちが倒れないようにやらなければ、なんですが)

また、上で書いたうちの特に4.〜7.は、これまでとは違うコンテンツを作っていく必要もあります。
弊社ではそれを手伝ってくれる人も募集していますので、よかったらぜひ声をかけてください。

こちらは僕のTwitterです。
仕事のこともよく話してるので、よかったらフォローしてもらえると嬉しいです!


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