-かつて住み・働いた街へ- 第二の故郷ベトナム ダナン再訪旅録 ~発展する国と、変わらない素朴さと、郷愁と
前々職の仕事の都合で2015年〜出張で初めて訪れ、出向で3ヶ月腰を据えて働き、現地法人の社員になって1年半勤務。日本に帰国した後も定期的に出張で訪れていた土地である、ベトナム・ダナンに4年ぶりに行ってきました。
出張で訪れた土地こそいくつかあれど、長期間現地で暮らすという経験をしたのはダナンがはじめて。
ゆえに、「かつで自分が暮らしていた土地を再訪する」というのもはじめてのこと。
ゆかりのある場所を回って、かつての同僚・友人と久しぶりに会話をして感じた、勢いよく経済成長している国ならではの熱気と、変わらない素朴さと、感じたことがたくさんあったので、写真とともに記録を残してみます。
「どのタイミングが一番さいしょにベトナムを感じるかな?」
「ベトナム航空のおしぼりの匂いを嗅いだ時じゃない?」
「いや、ベトナム航空CAさんの制服を目にした時でしょ」
ベトナム ダナンの地で出会い、いまの妻であるパートナーとそんな他愛ない会話を交わしていた。
飛行機に乗り込む約1ヶ月前、旅のはじまりとは言えないタイミング、航空券を買うタイミングで僕らは不意に「やられた」感を味わうことになった。
個人情報を入力し、座席を決め、決済情報を入力し、「購入」をタップした後の静寂。
メイン・サブ・サブのサブのクレジットカードも、PayPalもダメ。
時間を置いて再度購入してもダメ。コンビニ決済は恐ろしくて使えない。
検索したところ、「公式ホームページでは決済に失敗することがあるので、モバイルアプリを使って購入してね」とのこと。
地図や翻訳アプリはその利便性を極め、eSIMを購入しておけばたいていの国でのインターネット通信は確保でき、現地でも配車アプリを使えば移動にも困らない。
旅のハードルはどんどん下がり続ける一方で、ナショナルエアラインの航空券購入機能が停止されたままになっている。
蔑む意図も批判するつもりもない。代替手段もある。
ただ目の前にある事実として、他と相対化しての驚きと、「まあ、そういうこともあるよね」という受け入れる気持ちを感じたそのとき、不覚にもベトナムを感じてしまった。
それが今回の旅のはじまり。
約6時間のフライトの末に眼前に見えたダナン周辺の景色。
通勤で毎日通った海沿いの道、住んでいた家のこと、社員旅行で行ったホテル、夕陽を眺めた大きな橋、星を眺めながら眠りについた離島のビーチ。
まだ着陸もしていないのに、懐かしさと嬉しさがこみ上げてくる。
ドアのしつらえ、ちょっとゴージャスなフェンス、街路樹、階段のモルタルの仕上げ、路上のバイク、電線の雰囲気、ハスの花、写真では伝わらない匂い・飛び交う雑談・湿度。
頭で考えるよりも先に、五感がベトナムを思い出させてくる。
食事をしていても全てに愛おしさを感じる。
懐かしい。ひたすらに懐かしい。そして何を食べてもだいたい美味しい。
日本でもベトナム人が作るベトナム料理店に行っているけれど、やはり本国で食べるのがいちばんだ。と毎食噛み締める。
味や見た目だけでなく、食器やテーブル、店内の様子、外に見える景色、音、全ての要素が目の前の一皿を構築しているんだ。なんて文字にすると大袈裟なことを思う。
現地で食べることでしか得られない栄養分がある。というやつだ。
朝か夜に旧友と会う予定を入れて、それ以外はのんびりコーヒーを飲んだり、懐かしの場所やを巡ったりして、事前に作った「絶対に再訪したい」リストのお店でご飯を食べて、疲れたらまたカフェに入って。
特に観光をするでも、忙しく動き回るでもなく。
足掛け3年くらい日本とベトナムを行き来していたけれど、仕事の予定なしに訪れるのははじめてのこと。
どこか手持ち無沙汰を感じる反面、状況を受け入れて思いっきり羽を伸ばせていることに気付く。
ベトナムの人たちは…と一括りにして形容するのは主義主張に反するけれど、それでも言ってしまいたくなるほど、寛容で、親切で、思い思いに好きなことをして過ごしている人がたくさんいる環境はとても居心地がいい。
今回唯一の観光、ホイアン。
道すがらの街に建つ家が新しくなっていることや、外資のリゾートホテルが増えていることに驚かされ、他方では建てたはいいもののすぐに経営破綻してしまったと見られるホテルの跡地に諸行無常を感じる。
かつてたくさんいた日本人観光客はまばら。
多くの直行便が飛んでいる韓国、アジア周遊あるいは家族旅行で来ている欧米人、以前は見かけることがほとんどなかったインド系の人々、国力が上がって国内旅行需要が高まっているベトナム人。
街並みは保護されていることもあって変わらないけれど、おしゃれなお店や欧米人が喜びそうなお店が増えているのを見て、少しずつ変わっているのを感じる。
発展する国と、変わらないことと、郷愁と
少し間をあけて訪問すると新しい建物が建っていたり、よく行っていたお店が吹きさらしから3階建てに変わっていたり、路上でお店をやっていた家族が同じ通りに店を開いていたりする。
僕がベトナムに足繁く通っていたころから、すごい勢いで経済が回っていることを、肌で感じる国だった。
2022年のGDP成長率は8.02%、平均年齢は33.3歳。日本の2022年のGDP成長率は1.1%、平均年齢は48.4歳。
かつて日本が経験した高度経済成長期はこんな感じ、あるいはこれ以上の勢いだったのかと思うと、ものすごい時代だったんだろう。
国産の電気自動車(VINFAST)が発売し、アメリカでIPOすることで後進への道を開いていること。
IT産業でもインフレと人材のスキルアップにより給与水準が上がり、よりよい待遇を求めて海外に活躍の場を求めたり、フリーランスとして外貨を稼ぎながらベトナムで生活している人も増えているということ。
給与水準がアップし、家族を持つ人が増え、車を購入する人が増えたこと。
国としての教育水準はまだまだと聞いているが、企業が学校をつくり、英語やプログラミングをはやくから学ぶ子どもが増えているらしい。
また、インターナショナルスクールに行かずとも街中に語学学習センターがあり、英語を学ぶハードルも下がっているとのこと。
友人の子も綺麗な英語を話し、ベトナム訛りの父の英語にすかさずツッコミを入れる、なんていう微笑ましい光景に出会ったりもした。
現地の人たちと話をすればするほど、ベトナムの明るい未来が見えてくる気がする。
よく、「ベトナムに行くと、昭和の日本みたいな感じがして懐かしい気持ちになる」という話を聞くけれど、きっとあっという間に発展して、日本よりはるか先をゆく国になる日だって来るかもしれない。
同じ土地を定点で見て回って、現地の人たちと話して、変化を感じたり、変わらないことに安心を覚えられるということは、とても贅沢な旅の楽しみ方なんだということを実感した、たった8日間の里帰り。
また来年か数年後か、改めてダナンを訪れた際には、また違った感情になるんだろう。
まだまだ30年といくばくしか生きていないけれど、少し「長く生きてきている」実感を得ることが増えてきている。
いつか来る未来を楽しみに生きるということも悪くないな、と思える。
そんなことを考えていると、またどこかに旅に出て、将来の自分への置き土産を残していきたい気持ちになる。
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