人類 vs. 感染症 「新型」タンパク質が鍵に?(上)
◉要約
感染症は、野生動物を家畜化して共生し始めて以降、人間を苦しませてきた。動物を介して人間に感染することから、動物からの媒介を減らして未知の感染症の発生リスクを下げる予防策が必要となる。そこで、動物性タンパク質を代替・効率的に生産する4つの方法や、その方法で作られる代替タンパク質が広まれば、歴史の繰り返しがなくなるのではと期待されている。
皆さん、元気にお過ごしでしょうか。自分の住むエリアも外出禁止令が命じられ、日々悶々と過ごしています。
この状況に苦しむ人のニュースを見る度に歯痒い気持ちになり、こうした問題が何で発生したのか、どうしたら解決できるのか、食に携わる立場から記事にすることにしました。
これを読んで何かを感じたり、動いたりする人が増えてもらえれば嬉しい限りです。
一番伝えたいメッセージとしては、病気と一緒で、感染症には治療のための薬や手術も大事な一方、根本からリスクを減らす予防策も重要ということです。
そのあたりを説明するために、感染症がどのようにして広まったのか、なぜ未だに発生するのか、どうしたら発生しにくくなるのか、ということに触れたいと思います。
◉目次
①感染症の歴史 −人類 vs. 感染症 「新型」タンパク質が鍵に?(上)
②感染症の原因 −人類 vs. 感染症 「新型」タンパク質が鍵に?(中)
③感染症の予防策 −人類 vs. 感染症 「新型」タンパク質が鍵に?(下)
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①感染症の歴史
そもそも、今回の感染症はもちろん、豚・鳥インフルのような病気がどうして繰り返し発生するのでしょうか。
この疑問に関して、テレ東が、複数の参考文献を元に、歴史から答えを教えてくれています。普段のニュース番組では語られない背景をわかりやすく紹介してくれていて、非常に良い動画です。
動画でも説明されている通り、人類史は感染症との闘いと言っても過言ではなく、戦争よりも病原体の方が人間を死に追いやってきたという歴史があります。
よく言われるところだと、人間の命を一番奪っている動物は、凶暴な野生動物でも人間でもなく、デング熱やジカ熱、西ナイル熱といったウイルス性感染症や寄生虫のマラリアを媒介する蚊、という話です。
さて、感染症、ここでいう人獣共通感染症(ズーノーシス)は、人が動物と暮らすようになった1万年ほど前から始まりました。
野生動物の中でも、手懐けやすく人間の生活に役立つ特定の動物を、住まいの近くで集中的に繁殖させたり、ペットとして共生(=家畜化)したことで、家畜の排泄物等を介して病原菌が人間に感染するようになりました。
オーロックス(野生牛)から肉・乳牛へ、野鶏から庭鶏へ、猪から豚へ、狼から犬へ、山猫から家猫へという具合です。
さらに、農耕と畜産によって養える人数が増えたことで、人口が爆発的に増加して人口密度の上昇(都市化)が進みました。
そして、人間同士の接触が増えると共に、排泄物が集積される等、衛生環境が悪化し、感染症により亡くなる人が増えました。
ギリシア等の古代文明も疫病で都市が壊滅的になり、インカ・アステカ帝国、ローマ帝国は天然痘やペストで、ナポレオンの軍もチフスで領土拡大に失敗する等、歴史上の大国も病原菌に苦しみました。
宗教でも疫病の怖さが語られており、旧約聖書には、ユダヤ人が保管していたモーゼの十戒の入った聖櫃を、ペリシテ人が奪って持ち帰って開けたところ疫病が蔓延した、と記されています(インディー・ジョーンズの第一作でも有名ですね)。
ユダヤ教同様、豚を禁忌とすることで知られるイスラム教の預言者ムハンマドも、「疫病のある場所を避け、疫病に罹った場合はその場所を離れてはならず」という言葉を残したそうです。
そして、近代だと、移動の易化とグローバル化の進展により、国や地域を跨いだ往来が活発になったことも一因です。
今から100年前に、スペイン風邪(鳥インフルの変異型)が大流行して世界全体の3人に1人が感染し、5000万人以上(日本も40万人前後)が死亡しました。
これは第一次世界大戦で集団感染した兵士の越境や自国への帰還が原因とも言われています。
ちなみに、大戦自体で亡くなった方はその半数以下だそうです(それでも多過ぎますが…)。
戦争は人間が自ら引き起こす災害ですが、気候変動と同じで、感染症も一見自然が引き起こすようでも、実は人間が引き起こした人災だと考える向きもあります。
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今回は、感染症がどのようにして広まったのかという点を説明するため、感染症の歴史を振り返りました。
では、感染症がなぜ未だに繰り返し発生するのでしょうか。そこで、次回、感染症の要因を紹介しようと思います。
※オリジナルの記事を三部作に分割しました。(5/17/2020)
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