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「会計」から逆算するとうまくいく

このテキストは、2020年7月に発売の書籍『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』(クロスメディア・パブリッシング)の「第1章」をnote用に編集したものです。

各部署の作業の最適化を現場目線で考えてツールを選び、その後、データ連携について考える上で、意識したい順番があります。それが「現場の各部署」についてです。

それぞれの部署で同時多発的にツールを選ぶのではなく、1つひとつ順番に考えていけば、後で連携方法に頭を悩まされることもなく、現場の運用面と連携面の両方を天秤にかけて検討することができます。IT導入の設計図を考える上で、最も重要なポイントがこの順番であると言っても過言ではありません。

では、どこから考えればいいのか? その答えが、「会計」です。なぜなら、従業員の業務フローを考えても、顧客との取引の業務フローを考えても、必ず最後は会計に行き着くからです。

従業員で言えば、①採用(採用管理システム)→②勤怠管理(勤怠管理システム)→③給与計算(給与計算ソフト)→④会計(会計ソフト)、という順番です。つまり、①採用したい人材の情報を管理する→②入社したら勤務時間などを管理する→③1カ月の勤務時間が出たら給与計算をする→④給料の支払い等の経理処理をする ――という流れで、必ず最後は会計処理をすることになります。

他にも、出張等における経費の立て替えがあれば経費精算が発生しますが、その情報も会計処理しなければいけません。裏を返せば、従業員や顧客との最初のタッチポイントから、会計に至るまでの各部門が自動でデータ連携できないと、どこかで「情報を抽出し、入力する手間」が発生するわけです。手作業によって時間もとられ、ミスが生じる可能性も出てしまいます。

そのため、バックオフィス最適化に着手する際には、多くの場合、最初に「会計ソフトにどうやってデータを落とし込んでいくのか」を考えます。これが明確になれば、業務フローを遡りながら、各部門の現場にフィットするツールと、その運用法を検討しつつ、その会社にふさわしい最適化の方法論を組み立てられます。

すべてのデータがつながって、最後に行き着く場所となる「会計ソフト」のチョイスも重要です。会計においてソフトウェアを利用しない企業はまずないので、新規導入ではなく入れ替えをする手間はどうしても発生しますが、肝心要の会計ソフトが古いと、API連携ができない等の問題が発生し、バックオフィス最適化の障壁となりかねません。ですから、IT導入に本格的に踏み切るなら、必要に応じて「会計ソフトの変更」も視野に入れておくことをおすすめします(もちろん、絶対に変えなければいけないわけではありません)。

基本的に会計ソフトは、最新のクラウドサービスの利用をおすすめします。先ほども述べたように、クラウドベースの会計ソフトならインストールが不要で、アップデートも適宜ソフト側で実行されます。API連携できるITサービスも今後さらに増えていくでしょう。

そして、データ連携の恩恵を最も強く実感できるのが会計ソフトなのです。クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと自動で連携できるので、銀行振込や引き落とし、クレジットカードによる備品購入等の取引が自動的に経理処理されます。さらに、顧客との取引を会計から逆算すると、その前には見積もり・請求等の販売管理があります。この販売管理をIT化し、会計ソフトと連携すれば、請求書を出すタイミングで売上に関する経理処理も自動化できます。小売店なら、会計ソフトと連携可能なPOSレジを導入すれば、同じように売上と入金の経理処理を自動化できます。

このように、すべてではなくとも、お金の出入りがリアルタイムで経理処理できることで、経営における会計ソフトの重要性が大きく変化しています。

かつて会計ソフトでは、売上やキャッシュフローを確認できる正確な財務諸表は、月次などのタイミングで締めないと信憑性の高い数字が見られませんでした。もちろん、その数字も重要なデータではありますが、どちらかと言えば、確定申告のために用いられる作業・ソフトといった側面が強かったように思います。しかしクラウド会計ソフトで周辺の業務とデータ連携できていれば、月末などに特別な作業をせずとも、リアルタイムでかなり正確な財務諸表を見られます。このことによって、経営判断の材料としての価値が非常に大きくなっているのです。

また、現場レベルでの最適化効果も非常に大きなものがあります。多くの記帳を自動で処理できる上に、請求書を出した案件の売掛金・未収金が入金されているかを確認する消込作業も、販売管理システムを導入すれば見積書・請求書・入金が紐づけられ、チェックが簡単かつ、正確にできるようになります。自社の買掛金等の支払い作業も見落とすリスクを減らせます。他にも、経費精算システムを導入すれば、申請者が領収書を見てエクセルに手打ちしたデータを印刷し、領収書と一緒に経理部に提出。経理部はその紙を見て、経費の細目を手打ちする――といった、手間が多くミスも起きやすい作業をクラウド上で完結できます。経費精算システムと会計ソフトが連携していれば、経費精算システム上で処理したデータは、会計ソフトに手作業で入力する必要はありません。

実は少し前までは、このようなクラウドサービスについて、毎月使用料が発生することに対するアレルギーを持っている経営者が少なくありませんでした。しかし、近年は音楽配信などのサブスクリプションサービスが増え、定額制の支払いに慣れた人が増えています

また、そもそもクラウドサービスのトータルの年額が、パッケージのソフトウェアに比べて割高というわけではありません。パッケージを一度買ったらずっとそのままなら、話は別かもしれませんが、多くのソフトはテクノロジーの進歩や法改正を受けて都度バージョンアップしており、買い直すかアップデート料金を支払う必要があります。そうした点や最新のクラウドサービスの機能性を踏まえると、個人的には割安ではないかと感じるほどです。

現場目線で見ると、特に経費精算は申請者や経理部の時間を大幅かつムダに奪っていると感じます。実際、経費精算システムを導入した会社は、みなさんその効果の大きさを実感されています。しかし、単なる「効率化」ならそれだけで実現できていますが、「バックオフィスの最適化」と考えると、経費精算システムと会計ソフトがデータ連携していなければいけません。

ですから、経費精算システムを導入した後に、「会計ソフトとAPI連携できない……」といったことのないように、まず会計から考えて逆算するのです。ポイントは、「会計ソフトから、どこまでシームレスにつながれるか」。この点を押さえておけば、IT導入の成功率は大幅にアップします。

ちなみに、実際に会計ソフトを変更する場合、一般的には期をまたぐタイミングで変えることになります。大体、数カ月前から準備を始めて、期替わりのタイミングで完全に新ソフトに移行することになるでしょう。

正直、IT導入の中でも会計ソフトの変更はそれなりに大変です。そのため、会計から入るのではなく、現場の反発が少なそうな部分――たとえば経費精算や販売管理等からソリューションを考え、IT活用を進めていくという順番で着手することもあります。そうして、社内で「最新のITサービスの威力」をある程度実感してもらってから、会計ソフトに進みます。

ただ、みなさんの会社でIT活用を考え、まず経費精算などから始める場合も、理想は会計からの逆算であると意識して、使い勝手だけでなく、会計ソフトとのAPI連携の有無や対応ソフトのリスト等もチェックした上で、利用するツールを選定してみてください。

詳しくは、書籍をお読みいただければ幸いです。


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