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【日記エッセイ】「ヤングケアラー 4つ目の記憶」

僕には爪を剥ぐ癖がある。

母は僕にお金がないこと、将来の不安、父に対して、の話をよくした。単なる愚痴だったのかも知れないが、僕にはうんざりする話ばかりだった。僕はイライラしながら何度もため息をついた。聞きたくなかったが、そこで「もういい!聞きたくない!」って言って部屋に閉じこもったら母が暴れることは分かっていたから、いちおう、子供ながら出来る限り話を聞こうとした。母の話を聞いている感じを出しながら、その話から逃げるために自分の体で気を紛らわした。それで爪を剥いだ。母の話を聞いてるときに僕は爪を剥いだ。

それが癖になってしまって、小さい頃は手も足の爪も自分で剥いで取っていた。爪切りを使わなかった。けどもしかすると、まず癖が先にあったのかも知れない、なんでも家族の関係に結びつけるのは良くない。どっちか先かはわからない。

僕の父は爪を噛む癖があった。僕の父は父が小学2年生くらいの時にお父さんを亡くしている。母は父の不満を僕に言った後、たまに、お父さんはさびしい人だからと僕に言った。

考え過ぎてたのかもしれないが、僕は見えない流れみたいなのを感じた、こんな家族がずっと繰り返されているように思えた。僕はこのサイクルに吐き気がした。ここから抜け出したいと思いつつ、この流れを否定しきることもできなかった。

今はもう割と意識できているから爪切りは使う。けどたまに、無心で爪を剥ぐ時がある、少し落ち着くのである。気持ち悪いと言われるが、もうなかなか治るもんじゃない。

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