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第19回 表彰式やイベントの機会は最大限に生かそう

1 多くのヒーロー(ヒロイン)とベストオブベスト

 前回更新から少し時間が空いてしまってすみません。

 前回は社長の思いや理念を共有浸透するための「褒める(Admire)仕組み」の2つの制度、「表彰制度」と「人事評価制度」から、まず「表彰制度」についてご紹介しました。

 特に「サンクスカード」の導入例とノウハウについて詳説しましたので、お時間のある方は読み返してみてください。「サンクスカード」は費用や時間の面でも導入しやすく、各社の事情に合わせてアレンジもできますし、見直しや拡充もしやすい仕組みです。

 「表彰制度」のもう一つの例として、表彰と「表彰式」についても触れました。ポイントとしては、「全体の会議の片手間ではなく、メーンイベントの一つにすること」

 それによってチーム、部、会社の全員で心から褒めたたえるのです。

 また「1回に1人ではなく、なるべく多くのヒーロー(ヒロイン)をさまざまなジャンルを設けて誕生させること」

 毎回ベテランだけが選ばれるのではなく、若手も若手同士で戦えたり、営業部門だけでなくサポート部門、本部など各部門も対象にしたりすること。人ごとではなく、頑張れば自分も次回選ばれるかもしれないという気持ちにさせることが肝要です。

 そしてヒーロー(ヒロイン)の中のベストオブベストも決める。

 ヒーロー(ヒロイン)に選ばれた人が、さらに上を目指せるように。毎月のベストの上には半期や年間のベストがあり、〇年連続といった記録がある。オリンピックなどのスポーツ大会と同じですね。

 偉大なる目標があるからこそ人は成長し続け、記録も伸びていくものです。


2 「表彰状」の文面は受賞理由やエピソードなどをつけてオリジナルに

 さて、「表彰式」を、理念の実現に向けた個人やチームの取り組みを“認める”“共有する”“促進する”場として生かすためのノウハウを、もう一つご紹介します。それは「表彰状」の文面です。

 小さい頃から表彰状をもらったことのある方なら経験があるでしょう。日本の賞状は大抵、「あなたは」で始まり「ここに賞します」で終わる、通り一遍の文章でできています。初めてのときは壇上に呼ばれて感動もしますが、前の人と同じ文面だからと「以下同文」などと言われると、何だか「省略された」気分になります。

 2度目、3度目となると「どうせお決まりの文章でしょう」と、文面のところはほとんど聞いていません。賞金だけもらえればいいやという気持ちにさえなります。そこで文面です。自分に向けた受賞理由やエピソードなどが書かれていたらどうでしょう。

 例えばこんな感じです。「〇〇さん、あなたはこの1カ月の間、訪問件数にこだわると宣言して毎朝早く来て頑張っていましたね。結果、多くの新しいお客様に巡り合い、新規受注件数ナンバーワンという快挙を成し遂げました。新人ながらその成長ぶりにはメンバーもみんな驚いていますよ。おめでとう!」

 どうでしょう、受賞した本人は「ああ、この1カ月の自分をみんなちゃんと見てくれていたんだ」とうれしくならないでしょうか。

 さらにスペースがあれば、「ちなみにあなたのナンバーワン達成を応援しようと、月末はチームのみんなもサポートしていたのに気付いていましたか。もらった賞金でぜひ恩返ししてくださいね(冗談です)」などと添えてはどうでしょう。

 彼の受賞をチーム全員で心からお祝いしていることが伝わり、みんなで次も頑張ろうと思えるのではないでしょうか。

 私が以前にいた会社では、賞状の文面はいつも上司が考えてくれていました。

 営業担当者などは月末や年度末、最終日の夕方の締め切り間際まで成果を出そうと奔走する中、ぎりぎりになって1位が確定することも少なくありません。さまざまな表彰分野でメンバーが1位になる可能性のある上司は、朝から文面のことで頭がいっぱいです。

 どのエピソードを書いてやろうか、どんな言葉で祝ってやろうかと。本部からの確定の知らせが来ると、上司は文面を仕上げて賞状を作ってくれる部署に連絡します。

 褒めるタイミングは、本人が行った直後が最も効果的。そのため表彰式も締め切りの数時間後に開催されました。パソコンも十分になかった時代、社内に書道の専門家がいて、「表彰式」を含めた全体会議にぎりぎり間に合うように賞状に仕上げてくれていました。まさに時間との戦いです。

 いざ表彰式。場合によっては本人はまだ1位をとれたことを知りません。順次各賞が発表され、いざ自分の名前が呼ばれる。会場から拍手が起こり、近くで一緒にいたチームのメンバーたちにはやしたてられて、壇上に招かれます。

 上司あるいは部門のトップ、全社表彰なら社長から読まれる表彰状。そこには、自分が会社の目指す理念実現に向けて努力してきたことを認めてくれるコメントがあります。応援してくれた仲間や上司からの称賛の言葉があふれています。ヒーロー(ヒロイン)に選ばれたことと同じかそれ以上に感動し、うれしく思えることでしょう。

 受賞理由やチームの関わりなどを、表彰式・表彰状を通して発表することは、受賞した以外のチーム、組織のメンバーも共有できるという効果があります。受賞した本人やチーム以外のメンバーにも参加してもらうもう一つの理由はそこにあります。

 誰それが1位をとったという事実の共有だけでは、次のアクションには生かせません。なぜそうした結果につながったのか、良い事例として共有し、まねしたりノウハウを取り込んだりすることで、全員にさらに上を目指してもらうのです。


3 慰労だけでなく、明日から向かうべき方向を確認し合う場として

 「表彰式」のその他の演出についても少し触れておきましょう。

 「表彰式」にご用意いただきたい最低限の要素はすでに述べた通りで、これだけあれば十分に目的は果たせると思います。一方で「表彰式」を含めた全体会議の場を、年に一度や定期的な“慰労”の場と位置付けている会社も少なくないでしょう。

 例えば年に一度、全員で温泉旅行に行って宴会場で実施する、あるいはホテルの宴会場を借りてパーティーを兼ねて行うなどです。従業員が1年間頑張って、結果、業績にもつながった、厳しい外部要因の中、目標には十分に届かなかったとしても踏ん張ってくれたのであれば、慰労の意味で気分転換は必要でしょう。

 慰労イベントの内容は従業員のみなさんが楽しめるものであれば、何でもいいでしょう。恐らく若手社員の中に1人や2人、イベントの企画が得意だったりお祭り好きだったりする人がいるはずです。内容も実施運営も含めて彼らに任せてみましょう。

 趣旨だけはしっかりと伝えて、あとは内容がコンプライアンスに抵触しない限りは、社長も含めて上司は口出ししないで任せることです。上に対する多少の無礼講も当日だけはOKにして、社長や上司は何か役割を頼まれたら、喜んで乗っかってあげてください。「(社長が、上司が)私たちのためにあんなことまでしてくれた」ということが、従業員にはうれしいのです。

 東京ディズニーリゾートが毎年実施する「サンクスデー」は有名ですが、1年に一度、閉園後の施設を貸し切って上司が日ごろの感謝の気持ちを込めてキャスト(従業員)をおもてなししてくれるイベントです。

 社長や役員も含めた上司たちは、キャストの格好をし、それぞれの役を担いながらゲスト(お客様)として参加した普段着のキャストをもてなしてくれるのです。従業員は毎年この日を楽しみにしていて、「よし明日からも頑張ろう」と気持ちをリフレッシュできるそうです(詳しい様子は「東京ディズニーリゾート サンクスデー」などネットで検索するとご覧になれます)。

 しかし同社の「サンクスデー」はキャストの慰労の場というだけではありません。同時に、同社が目指す「夢がかなう場所」の実現は、トップにとっても上司にとっても変わらぬ思いであることをキャスト全員が体感する場なのです。

 そして明日からは自分たちが訪れるゲストをもてなして、それを実現するのだと確認し合える場になっています。

 もし社会への感謝や貢献を理念として掲げている会社であれば、慰労パーティーを震災やコロナ禍などから復興中の旅館で行い、翌日は全員で地域のボランティアに参加するといった企画もいいかもしれません。

 社会への感謝や貢献を、普段とはまた違った形で体験し、自分たちが目指すべき方向を再確認できるような気がします。

 人間、張りつめているばかりでは気持ちが続きません。一度リラックスして気分を解放することは必要でしょう。ただそれと同時に明日からまた取り組むべき方向を改めて確認し合うことができれば、掲げる理念実現への新たなパワーが湧いてくるのではないでしょうか。

 今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 次回は「人事評価制度」への反映についてお話ししていきたいと思います。前回、今回とお話ししてきた「表彰制度」とは互いの長所と短所を補い合える制度として、セットで導入を検討していただきたい仕組みです。


※不定期ですがあまり間を空けずに更新していく予定です。よろしければフォローをお願いします。

(著作:ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田 斉紀)
※上記は、某金融機関の法人会員向けに執筆した内容をリライトしたものです。本文中に特別なことわりがない限り、2021年9月時点のものであり、将来変更される可能性があります。※転載される場合は著者名とコラムタイトルを必ず明記ください。

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