【読書感想】朝井リョウ『スペードの3』
2018/08/11 読了。
朝井リョウ『スペードの3』
見下していた人に、見下されていた。
バカにしてした人に、バカにされていた。
見ていた景色がひっくり返る瞬間は、爽快というよりは憐憫で、この小説はそういう瞬間がたくさんあった。安定の朝井ブランドというか、既視感というか、もうお腹いっぱい感もあった。
スペードの3は、スクールカースト、職場カーストも描写も卓越しているけど、女子が抱く男子という生物への憧れにグッと迫るテーマ性も強く感じた。
宝塚歌劇団を連想させる有名な劇団の夢組。
女子のかんじがらめな仲良しごっこと男子の自由な友達関係。
姉と弟。
男になりたい、という感覚は私の中にもある。作中でのつかさの言葉を借りるなら、「肩を抱き合って笑っていてもそれ以上の意味が生まれないような、人間同士の親友」が男子であれば可能である、と勝手に憧れてしまうのである。男子も皆がそうではないだろうけど、女子は勝手にカラッとした付き合いをしているかのように見える男子を羨ましいと思うのです。
人生のバックボーンを持つ者が、その背景でプラスの評価を受けるというのも、言われてみればしてしまっているかも。特に有名人や芸能人に対してはそういう感情を持ちがち。
価値観の根っ子をほじくり返してくる物語だけど、読んでる間の気持ち悪さは形容しがたく。もうちょっと光射して終わってよ、つらいから。
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