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【読書感想】東野圭吾『悪意』

2018/08/31 大好きな本、読了。

東野圭吾『悪意』

1996年の作品。東野作品の中で『容疑者Xの献身』と並んで好きな小説。

事実は小説より奇なりと言うが、現実に起きた連続殺人や虐待死の方が恐ろしいものがたくさんある。創作物よりルポやノンフィクション、なんなら公判記録を読む方が遥かに恐ろしい。ただ、小説ならでは、小説だからこそ表現できる恐怖というのがあって、私はそれが『悪意』という物語だと思っている。


■ここからは核心に触れる感想もあるので注意して下さい■
 

まず、手記と記録で展開されていく構成が面白い。読み進めていくと、何が噓でどれが真実かを選り分けていく作業に意味が無いことがわかってくる。徐々に自分事に近づいてくるのに、忍び寄ってくる足音にも気付かないくらい観察者然として居させられる。そしてラスト、傍観者でいたはずなのに、野々口修が抱えた劣等感が自分の中にも存在する事に気付く。

殺人という行為も恐ろしいものなのに、それさえ甘く感じてしまうほどに野々口が日高にした行為は恐ろしい。死を前にした人間が、同級生の人間性を捏造し貶めるという作業に没頭する行動原理が恐ろしい。

ミステリ小説としての要素も濃いのに、人間の感情が匂い立ってくるのは本当に凄い。生涯読み続けても飽きることはないと思う。




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