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【読書感想】朝井まかて『眩』

2019/03/16 読了。

朝井まかて『眩』

この本に出会えてなかったら知らなかった世界というものがある。それがこれだ。

葛飾北斎の娘・お栄こと葛飾応為。宮﨑あおい主演でドラマ化された時代小説。

ドラマが放送された時は文庫化してなかったから、文庫になるのを心待ちにしていた。本を開いたらめちゃめちゃ面白くてあっという間に読み終わった。 

ドラマの中で、葛飾北斎と応為の実際の絵を見ていたから、本を読んでいても絵が浮かんできた。菊と虻。牡丹に蝶。夜桜美人図。吉原格子先之図。

朝井まかてさんの小説に出てくる女性はみな格好良い。お栄もそうだ。北斎の実娘と言えど、この時代に女が絵師を生業にするのは相当異端なことだ。枕絵も春画も手掛けたというから恐れ入る。男も女も関係ない、職人としての生き方。そこに実在した人物、善さんこと渓斎英泉がこれまた絶妙にお栄に絡んでくる。お栄と善さんの絵師としての結び付きは、男女を超えている。 

「目を凝らせば、この世のどこもかしこもが色の濃淡で出来てきた」

濃い淡い。暗い明るい。遠い近い。表と背。

葛飾応為の絵は、応為ならではの魅力がある。

それに気付かせてくれたのは間違いなくこの作品だ。小説もドラマもどちらとも素晴らしかった。

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