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論文紹介 中国は戦時に食料を十分確保できるのか?
戦争と食料は切っても切り離せないテーマです。歴史上、食料の問題は戦争の原因になることもあれば、戦争の結果を左右することもありました。政治史では食料価格が急激に高騰したことで、都市部を中心に大規模な反政府運動が組織された事例もあり、政治学の立場から見ても食料は重要なテーマであるといえます。
アメリカ陸軍のJamie Critelli少佐とGustavo Ferreira大尉は、食料が戦争を遂行する上で欠かせない資源であるという立場から、中国が食料安全保障で深刻な問題を抱えていることを明らかにしており、食料の備蓄を急速に増加させようとする動きが軍事行動のシグナルとして使えるかもしれないと論じています。
もともと中国では食料価格の変動が大きく、季節要因の影響を受けやすいことが知られています。冬になると、中国では食料の価格が上昇しやすくなるのです。近年の経済発展の影響で中国では農村人口が減少し、都市人口が増加したことは、この傾向に拍車をかけています。農業の担い手が減少しているにもかかわらず、食文化が多様化し、肉類、乳製品、野菜、果物などの需要が高まりました。このため、中国で食料の供給を安定化させることは、以前よりもずっと難しくなっています。
中国共産党は米、小麦、トウモロコシの自給率を95%以上にすることを目標とし、1990年に穀物備蓄制度を確立しました。しかし、2000年代には一部の品目で自給率は95%を下回るようになり、農産物の輸入が増加しています。2020年時点でも外国産のトウモロコシ、大豆、小麦、米、モロコシの輸入を続けており、その総量は1億5000万トンになっており、その大部分は大豆で占められています。
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