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メモ 2023年版の『ミリタリー・バランス』でロシアとウクライナの兵力を確認してみた

2022年2月24日、ロシアがウクライナに対して軍事侵攻を開始してから、今日で1年になります。この1年を通じて多くの人々が、国際社会の平和と安定が絶対的なものではなく、軍事力が国家の安全保障にとって欠かせない能力であることを再確認したのではないかと思います。

今回のメモでは、出たばかりの2023年版の『ミリタリー・バランス』からウクライナとロシアの兵力に関するデータを人員を中心に抜き出してみたいと思います。装備別のデータは抜き出していないことをあらかじめご了承ください。

ウクライナ軍の兵力

ウクライナ軍
現役 688,000
・陸軍 250,000
・海軍 13,000
・空挺軍 30,000
・空軍 37,000
・特殊作戦部隊 3,000
・郷土防衛隊 350,000
治安機関・準軍隊 250,000
予備役 400,000

IISS 2023: 201

昨年のウクライナ軍のデータと比較して真っ先に気が付くのは、陸軍の人員が大幅に増えている点で、145,000名から250,000名に拡大されています。それ以外にも、海軍は2,000名ほど増えていますが、空軍の人員は去年よりも15,000名少なくなっています。この減少が戦闘損耗によるものかどうかは不明です。ただ、2023年のデータでウクライナ空軍が運用できる軍用機の総数は79機とされており(戦闘機(Mig-29; Su-27)が50機、攻撃機(Su-24M; Su-25)が20機などを含む)、2022年のデータで記されていた124機から45機の減少となっているため、戦闘による損耗が発生した可能性は高いと思われます。戦時下でのデータであることも考慮すると、実際の損耗はさらに大きなものであることもあり得るでしょう。

また、特殊作戦部隊の兵力は昨年の資料では不明とされていましたが、今年は3,000名と明記されました。郷土防衛隊の規模は102,000名から350,000名に拡大されており、大幅に人員を増やしたことが分かりますが、これはウクライナの戦域が広いため、後方警備にも大きな兵力が必要であったためと推測できます。

ロシア軍の兵力

ロシア軍の兵力のデータを抜き出すと以下の通りです。

ロシア軍
現役 1,190,000
・陸軍 550,000
・海軍 145,000
・空軍 165,000
・戦略ロケット軍 50,000
・空挺軍 40,000
・特殊作戦部隊 1,000
・鉄道部隊 29,000
・第一軍団、第二軍団 30,000(注:ドネツィク、ルハンシクの住民から編成された部隊)
・指揮及び支援 180,000
治安機関・準軍隊 559,000
予備役 1,500,000

Ibid.:  183

昨年のロシア軍のデータと比較して分かるのは、陸軍の大幅な増勢であり、280,000名から550,000名に拡大されています。海軍は150,000名から145,000名にやや減少しましたが、空軍、戦略ロケット軍は変化していません。ただし、空挺軍は45,000名から40,000名に減少しています。あと注目されるのは、ウクライナ領であるドネツィクとルハンシクで動員され、現在ではロシア軍の指揮下に置かれている部隊であり、兵力は30,000名と記載されています。

ちなみに、ロシア軍がウクライナに展開中の兵力に限定すると、ドネツィク、ヘルソン、ルハンシク、ザポリージャでおよそ150,000名、クリミア半島に25,000名とされています。ウクライナの北部に位置するベラルーシにも10,000名の兵力が、ウクライナの南部に位置するモルドバには沿ドニエストルに1,500名の兵力がそれぞれ駐留していることも読み取れます。

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