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都会に出た人が戻らない田舎。ヒルビリーエレジーを語り出すと止まらない

最寄の駅から実家まで、母に車で迎えにきてもらい(歩くと30分かかる。バスは1時間に2本で最終が20時台)、むかし「市街地」と呼ばれていたさびれた場所を抜けつつ帰途につく。コロナ以前から「疫病の後ですか?」って聞きたくなるくらい歩く人を見かけない。うっかり一度ヒールで歩いたら、片道で踵がボロボロになって泣いた。歩道が整備される頻度も都会とは違うらしく、日が暮れてから自転車で走ると見えない段差と雑草で転びそうになる(街灯はほぼない)。 ここはもう、私たちが生きているうちにはどう

    • 消えてなくなりたいたいのに死ぬ勇気が出ない人の気持ちを想像してみた

      そもそも医療の分野でさえ積極的安楽死が認められていない日本で、毎日生きるのが辛いからなんて理由で気やすく死ぬことはできない。だから大抵ものすごく痛くて苦しい思いをしなくてはならない。まずそのハードルが大きすぎる。 そこまで思うときは大抵のことに絶望していて、多くの人のことを嫌いになったりもして、自分を傷つけたひとが私が死んで後悔したらいいな、なんて考えたりもする。もしその人が真面目で誠実で本当は私を傷つけたくなどなかったなら、ものすごく後悔するだろう。一方で、そうでないひと

      • あまりに腑に落ちすぎて、読み進めるのが辛かったヒルビリーの話1

        トランプ現象を解読する書として有名な「ヒルビリーエレジー」を読み始めた。これはアメリカのラストベルトの話じゃない。私の生まれ故郷の話ではないか!と思えて、痛すぎて読み進めるのが辛かった。 周囲にドラッグ中毒者が溢れていたわけではない。フードスタンプで手に入れられるジャンクフードしか食べられない人もそんなには(というか、日本なので)いなかったと思う。ただ、私が通っていた小学校で、学問や教養を身につけることが将来の自分を支えてくれると知らされていた子どもなんて、ほぼいなかったと

        • 死にたいと思う人の気持ちを想像してみた

          今年は特別な年で、辛い思いをする人も多かったことだろう。 *久しぶりの投稿なのに、どんよりした話題です。暗い気持ちになりたくない人は、読まないでください(読者もついてないけど)* 素敵な(本当に素敵な人だった。数多お会いした女優さんの中でも、とびきりだと思った)女優さんまで旅立って、そういう(自らそちら側を選ぶ)気持ちを想像せずにいられなかった。 個人的にも、辛い年だったから、想像してみた。 思考のプロセス自体は、多分単純。 痛くないかな?苦しくないかな? → もっ

        都会に出た人が戻らない田舎。ヒルビリーエレジーを語り出すと止まらない

        • 消えてなくなりたいたいのに死ぬ勇気が出ない人の気持ちを想像してみた

        • あまりに腑に落ちすぎて、読み進めるのが辛かったヒルビリーの話1

        • 死にたいと思う人の気持ちを想像してみた

          リベラルに元気がないのは真面目過ぎるからかもしれないな

          話題の映画「新聞記者」を観に行ったら、終了時間が22時過ぎる回にもかかわらず、ほぼ満席だった。 日々言論が不自由になりつつあるこの国で、この映画がそれなりの規模の映画館で上映されていることは、ちょっとホッとします。まだ大丈夫かな日本… でも、なかなか役者さん捕まらなかったのでしょうね(桃李くんの勇気すごい)。主人公、演技は上手なのだけど、やっぱり、日本語が流暢でない記者って無理がある… あれでは百戦錬磨の輩から、話を引き出すのは不可能だろう。 映画としては、とても凝った

          リベラルに元気がないのは真面目過ぎるからかもしれないな

          自分が最低な酔っ払いであることを、スーパーポジティブに捉え直してみる

          私は酔うと饒舌になる方で、だいたい一次会では楽しく呑気にのんでるのだが、二次会三次会となだれ込み深酒をしていくと、なにかいやなことになってくる。大抵、思い出すとかなり残念な気持ちにはなる。 傲慢な言い方だったのではないかとか、それはほぼ自分の自慢話ではとか、ギャグになりきってないただの悪口とか… もちろん同じことは繰り返しているし、あるいは大して流暢でもないのに英語で喋ってみたりとか、本当に恥ずかしい… だから、深酒から目覚めた朝は、頭が痛い上に胃も痛く、最高に気分が悪い

          自分が最低な酔っ払いであることを、スーパーポジティブに捉え直してみる

          12歳の課題図書を勝手に作ってる話 続編

          12歳の姪が読むのにいいかしらと思って読み返した、中島京子さんの「小さいおうち」が名作だったことに改めて気づいてちょっとはっとする。 中島さんの豊かな文化的教養によって描かれる、時代背景のディテール。平易で読み易い文章なのに、重層的なストーリー。 そして何より、特別な悲劇として描かれがちな戦時中の話が、ごく日常として綴られているところが、好きだ。 多分、どんな悲劇の中にも日常はあるし、自分が生きている世界とつながっていることを忘れてはいけないのだと思う。 これこそ、課

          12歳の課題図書を勝手に作ってる話 続編

          最近の’現代アート’って、サービス精神にあふれてない?

          ‘現代アート’って呼ばれるものがなんとなく好きで、いろいろ観に行ってはみるものの、たまになにがいいのかさっぱりわからず(壁に向かってひたすら叫んでる人の映像とか見せられても……とか)、芸術とはいえ、もすこし鑑賞者へのサービス精神あってもいいんじゃない?って思うこともあった。 でも、最近セレクトのコツがつかめたのか、大抵は楽しい。 で、昨日のトムサックスのティーセレモニー、最高だった! 茶道と現代のアメリカ文化っていう、対極にありそうなもののドッキング。おもしろ過ぎるんで

          最近の’現代アート’って、サービス精神にあふれてない?

          仕事を4時間サボってギャラリーを巡る贅沢

          土日に行く人気のギャラリーは、もはや人を見に行くに等しい。ここ数年、近場なら仕事を調整して平日こっそり行く… というのにハマっている。 昨日は横浪修さんの写真展と、オペラシティのトム・サックス。はしごかよ! 雑誌や広告で活躍されている方って、つまりは商業写真家で、 普段のお仕事の写真とはまた別の、世界観が強い作品たちを見て、ああ、こんな世界を撮りたいかたなのだなあ…と知ることになる。 なんか、楽しい。 礼儀正しい大人の秘めた情熱に触れる感じ。 しかし、横浪さんの展

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          12歳の姪に送る本を検閲している件

          春に中学生になったばかりの姪へのラインは大抵既読スルーされるのだが、先日、中学生が主人公の部活小説(瀬尾まい子)を渡してみたところ、数日後に面白かった!とメッセージがくる。 滅多にない反応が嬉しくて、続け様にスポーツ小説を送ってみる(佐藤多佳子の陸上と、森絵都のダイブ)。 半月もたたないうちに、面白かった!とまたメッセージが! あれ? この間まで受験でそれどころじゃなかったけど、この子わりと読書好きね。 なら、おばちゃん、張り切るわ。 で、本屋に行く。 昔読んだ古い

          12歳の姪に送る本を検閲している件

          働く女のいやらしさを許してほしい…

          「嘘を愛する女」いい映画だった。 何が良かったかって、長澤まさみちゃんが、我儘なのにすこぶる魅力的だった。(それは長澤まさみだからである…というかなり強い可能性は置いておく) 毎晩のように付き合いで飲んで帰り、身体を心配する彼に「私はこうやって稼いでるのよ。文句ある?」と言い放つ。 家事はやらない。 家事を任せてる彼が居るのに合コンに行く。 面倒なことがあると、お金を払って強引に進める。 「部長ムカつくとか、後輩ちょー使えないとか」というセンテンスが普通に台詞に出てくる。

          働く女のいやらしさを許してほしい…

          何にお金をかけたいかのバリエーション その2

          家中の窓から美しい緑が臨める場所に移住した人が、その家を建てるときに、いろいろ家計を見直して30年換算で1000万円くらい浮かせたのだと書いていた。 見直しって例えば、小遣いをすごく少なくするとか、いまどきガラケーでよしにするとか。 なんとなく、今それで我慢してと言われたら、私なら躊躇するレベル。 でも、それによって本当に美しい家に住んでいる。それはもう、窓を眺めるだけで最高に幸せで、全てに満足できてしまうような(写真見たけど、説得力あった) 今、家事は余計なことを止

          何にお金をかけたいかのバリエーション その2

          何にお金をかけたいかのバリエーション

          8万円のジャケットを買うために貯金する人はいても、8万円のレストランで食事をするために無理する人ってあんまりいない… 的なことを平野紗季子さんが書いていて、自分もそうだなと思う。 社会人歴も長いので、8万円のスーツを買ったことはあるけど、1人8万円の食事をしたことはない。 飯田橋にできたINUAにちょっと行ってみたいと思ったけど、1人5万円と聞いてやめている。 でも、ちょっといい温泉旅館に泊まる旅で一泊5万円使うことはある(たまーにだけど) あれ? この価値、どう違うの

          何にお金をかけたいかのバリエーション

          noteに書くほどネタのない人生とは何か?

          noteを毎日書いてみようかな…と薄く決意してから数週間。初めて書いた日の翌日には既に、ネタがあるときだけ書けばいっか、になっていて、そして1週間くらいすると、私って大してネタのない日々を送ってるんだな… とか思う。 あるいは、知識の蓄積がユルイから大したものはそもそも書けないのだ…とか。 しかし、平野紗季子さんのエッセイを読みつつハッとする。そうだ、書ける人というのは、道端に落ちてたスタバのカップを見ただけでも書けるのだ。(豊かな感性が爆発し、独特の言葉選びで綴られて

          noteに書くほどネタのない人生とは何か?

          具象が抽象化していくことについて

          ルートブリュックという、北欧のアーティストの展示。東京ステーションギャラリーで開催されてますが、最近の美術館って混んでますね。 東京駅のギャラリーだと、インスタ女子の他に観光客もいるから、二乗で混む……(なんか、ちょっとディスってるかな) それはさておき、素敵な面白い展示でした。 はじめに、小さなタイルを繋ぎ合わせた1枚のパネルが置かれていて、それは作家の作風の変遷を表しているという。 具象から、だんだん抽象になり、いろんなものが削ぎ落とされていく様がそこにありました。

          具象が抽象化していくことについて

          コンピュータに支配されるというSF

          検索分析の新しいツールの説明を聞きながら、昔読んだ「言壺」という近未来小説を思い出す。 確か20年ほど前に書かれた話で、内容はうろ覚えなのだけど… ワープロ機能が発達すると、単語を入れるだけでそれなりの文書が自動で作成される。それに慣れていくと、思考そのものをそこに依存するようになり、もはや、自分が考えているのか機械が考えているのかわからなくなる…という。 コンピュータに支配される世の中というのは、ターミネーターが突然現れるのではなく、人間が自力で思考しなくなる世の中

          コンピュータに支配されるというSF