(感想)『文章は接続詞で決まる』から学ぶ3つの文章術
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(感想)『文章は接続詞で決まる』から学ぶ3つの文章術

 光文社新書の『文章は接続詞で決まる』。日本語研究者で、国立国語研究所の所長を務めている石黒圭の書いた新書だ。一冊丸ごと「接続詞」の話だけをしている。
 かなり珍しい本と言って過言ではない。文章術について書かれた本は読んだことがある。一文単位に絞った本もある。でも、「接続詞」だけに絞った本ははじめてだった。
 だが、テーマが絞り切られている分、内容は深い。そして、接続詞の理解を深めることで、よりわかりやすい文章を書く方法を幾つか学ぶことが出来たと思う。
 今回は、3つのポイントに絞って、自分の学んだ文章術を共有していく。また、「今後、こういうチャレンジをしてみようかな」という自分への宿題も整理しててます。

1、「文末の接続詞」を意識する

 自分の中の接続詞の概念を広げてくれたのが、第7章の「文末の接続詞」。
 正直に告白する。「文末の接続詞」という言葉をはじめに見た時、「なんじゃ、そりゃ?」と思った。まったく聞いたことのない概念だった。だって、例えば「だから」や「そして」は、普通は文頭に付く。あっても、文中。文末じゃない。
 だが、著者は、文末の表現が、「前後の文脈を明確にする」という接続詞の機能を持つという。
 例えば下記の二つの文章を比較すると、著者の言っている意味が分かってくると思う。

 「しかし、次のことも忘れないでほしい。第二次世界大戦を引き起こした現況であるヒトラーはクーデターでドイツの権力を手に入れたのではない。ヒトラーは選挙によって「ヒトラーなら何かをやってくれる」と期待するドイツ国民に選ばれたのだということを。」


 
 分かりやすい文章である。
 次に私の作った例文を呼んで欲しい。2文目の文末だけを書き換えている。

 「しかし、次のことも忘れないでほしい。第二次世界大戦を引き起こした元凶であるヒトラーはクーデターでドイツの権力を手に入れなかった。ヒトラーは選挙によって「ヒトラーなら何かをやってくれる」と期待するドイツ国民に選ばれたのだということを。」

 「ヒトラーは~」で始まる3文目とのつながりが一気に分からなくなる。2文目を単体で見た時の意味は大きく変わらないのに。
 「文末の表現を変えると、次の文章との意味が繋がらなくなる」ということは、文末表現が接続機能を持っていることの証拠になる。

 いや、「マジか」と思ったよ、正直。
 かなりの驚きだった。長年使っている日本語に、存在の把握すら出来ていない機能がある、ということだから。
 学んだことは、一つ。論理的に分かりやすい文章を書きたい場合、文末も重要。冒頭の接続詞で文章・段落の構成を明確にすることを意識してきた。だが、文末も同様に重要なのである。なぜなら、文末にも接続の機能があるから。
 今後の宿題として、この「文末の接続詞」を意識して使った文章を書いてみようと思います。実は、理解はしたけど、まだ実感が持てない。

2、「トピック・センテンスと接続詞」の見取り図

 下記のチャートを見て頂くとイメージがつかみやすいと思う。

「文章は接続詞で決まる」2

 これは著者の提案する文章の見取り図だ。トピック・センテンスと接続詞で文章の骨組みを作ってしまおう、という提案である。

 背景となる考え方から説明する。
 テクニカル・ライティングという欧米の論文作成技術だ。本書によれば、下記3つの基本ルールで段落を構成する。

 ① 段落は一つの話題について一つの考えを述べる
 ② 各段落は、内容を端的に述べる中心文(トピック・センテンス)を一文含むこと
 ③ 原則として中心文は段落の冒頭に置き、言いたい内容を先に述べる

 この手法で文章全体を構成すると、かなり読みやすくなる。極端に言えば、速読で読み飛ばしても理解される文章だ。目に留まりやすい一文目に重要な文章があるため、著者の言いたいことは理解できる。最悪、その後の文章を読み切る集中力が切れてしまっても内容は理解できる。次の段落も同様の構成だから、同じリズムで読んでいける。

 ここからが本題。
 実は、過去テクニカル・ライティングに関する本を読んだ時に、一つ疑問があった。
 それは「文章全体が長く複雑になった時、どうすれば分かりやすい文章が書けるのか?」ということ。テクニカル・ライティングを使えば、段落の中の文章を分かりやすくできる手応えがあった。しかし、段落を複数に跨いだ文章全体の論理性・あるいは分かりやすさまでは担保出来ない。そして、これは分かりにくさの大きいな原因である。
 この問いへの回答が「トピック・センテンスと接続詞で文章の骨組みを作る」という手法かもしれない、と感じている。

 著者はこう書く。

「私たちが文章を書こうとするとき、頭のなかには漠然とした考えがあります。しかし、その考えを直接紙のうえに記そうとしても、うまくいかないことが多いのが現実です。(略)うまく文字にできるようにするためには、まず文章のアウトラインが明確であることが条件です。そのためには、核となる情報があり、その情報相互の関係が明確である必要があります

 足りないのは「情報相互の関係」を明確にすることなのだ。核となる情報を分かりやすく肉付けする技術はテクニカル・ライティングにある。そこにさらに接続詞を加え、その有機的な連結を把握する。それを分かりやすく示しうるのが「トピック・センテンスと接続詞による見取り図」だと思う。うまく使えれば、まるで図解化されたチャートのように文章を理解してもらうことが可能かもしれない。

 宿題として、次に文章をしっかり書くタイミングで作成してみようと思う。
 ちなみに仮説としては、この見取り図は「段落を削る」ために使うと良い気がしている。「書きたい段落をうまくつなげるために使う」のではなく、「構想した段落間が繋がっているのかの検証に使うこと」。
 多分、論理的じゃない文章は、接続がうまくないのではなく、そもそもつながりが弱い段落が含まれていることが問題なのだ。相互の関係をより明確に把握できれば、不要な段落が何かを掴み削除することが出来るのではないか。そんな期待をしている。

3、接続詞の五つのデメリット


 本書は、接続詞を使うデメリットを五つのパターンに分類している。
 接続詞は、どのぐらい使うべきかの塩梅が難しいと感じている。足せば分かりやすくなる。でも、足しすぎると、くどい文章になる。「じゃあ、削ろう」と思っても、どう削るかに悩む。どちらかというと使い過ぎている実感のある自分とって、指針の提示はありがたい。

 五つは下記の通り。


 1、文間の距離が近くなりすぎる
 2、間違った癒着を生じさせる
 3、文章の自然な流れをブツブツ切る
 4、書き手の解釈を押し付ける
 5、後続文脈の理解を阻害する

 それぞれ、簡単に解説する。

 「1、文間の距離が近くなりすぎる」。なくても伝わる時には付けない、ということ。
 接続詞は車のウィンカーのようなもの。本当に曲がる時にだけ付ける。でなければ曲がる時が分からなくなる。「ないのが普通。あるのが特別」とのこと。

 「2、間違った癒着を生じさせる」。間違ったつながりで使わないのはもちろん、複数のニュアンスを持つような複雑な文章にも接続詞は相性が悪い。
 ウィンカーの例えを続けると、間違った出し方をしてはいけない。また、五差路のように「出しても混乱するだけ」の状況でウィンカーを付けてはいけない。

 「3、文章の自然な流れをブツブツ切る」。一般的に、接続詞は文章のリズムを阻害しやすい。リズムを重視する時は、接続詞は見直すべき。

 「4、書き手の解釈を押し付ける」。接続詞は、特に繋ぐ後ろの文の意味を作者が決めてしまう行為に近い。だから、解釈を入れる必要がない場合、接続詞は抜いた方が良い。
 例えば、次の文を例に考えてみる。「私は毎日懸命に練習して大会に臨んだ。二十人中四位になった」。この2文目の冒頭に「だから」を入れてみる。努力により成果が出たことが際立つ。逆に「しかし」を入れてみる。そうすると、4位にしかなれなかった悔しさが文章に滲む。
 ニュアンスを明確にしたければ、接続詞を入れても良い。だが、明確にしたくなければ、入れるべきではない。

 「5、後続文脈の理解を阻害する」。4に近い話。読み手と前提が合わない場合、接続詞は使わない方が良い。接続詞は書き手の解釈なので、書き手と読み手の理解が違う場合に使われる接続詞は、むしろ混乱を生む結果になる。

 執筆・推敲の時に、この五つの基準で接続詞を見直していけば、段々感覚が磨かれていく気がする。

おまけ


 『独学大全』で著名な読書猿氏が、本書の接続詞と機能を一覧にしている。これを読むだけで、表現の幅の広さと、細かいニュアンスの違いが参考になる。良ければどうぞ。
 文章は接続詞で決まる→(保存版)接続詞の常識チートシートにまとめてみた 読書猿

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