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ページを開けたその先は…自己責任でお願いします!閲覧注意怪談集『障ル話』収録話「マンデラ効果」全文公開

読めば怪異に見舞われる!?
ページを開けたその先は――自己責任でお願いします!


あらすじ・内容

【特別寄稿】
たっくー(たっくーTVれいでぃお)
煙鳥(オカのじ)
いわお☆カイキスキー(怪談恐不知)

恨みや呪い、黒い願望、唱えてはいけない言葉、やってはいけない行動──ある一定の条件が発動した時、怪異は巻き起こるのか。
・最初は虫から始まった奇妙な出来事、それはなぜ?「メメント・モリ」
・旧家の床下で見つけたモノに込められていたのは?「畳の下には」(鈴木誠)
・名前が嫌で改名をしたら、身に降りかかる悲劇「キラキラネーム」
・祖母に教わったとある呪文、唱えてはいけないのに…「死神の家系図」(鷹鷺狸夜)など。
また、煙鳥、いわお☆カイキスキー、たっくーが特別ゲストとしてそれぞれ障ル怪談を寄稿。
この本を手にした者へ、障リ有れ!

試し読み1話

マンデラ効果

 マンデラ効果とは、実際に起きた事柄と大きく異なる記憶や、存在しない記憶を大勢の人間が何故か共有している事象を指す。発祥となったインターネット界隈ではそれなりに知名度もある言葉で、聞いたことがある人も多いだろう。
 南アフリカの指導者ネルソン・マンデラが八十年代に獄中死したという偽りの記憶から始まり、有名キャラクターの体色や服装に関する記憶違い、フォルクスワーゲン社のロゴにあるVとWが繋がっていた気がするなど、そのバリエーションは広範囲にわたる。
 ファンタに元々ゴールデンアップル味が有ったか無かったか、という論争に関しては明らかなマンデラ効果であるとされているが、未だに過去にも絶対に存在したと主張する者は多い。ここで紹介したいくつかの事例の中だけでも、もしかすると読者の中には身に覚えのある人が居るのではないか?
 
 さて、なぜ突然こんな話を始めたのか。一つ、これに関する興味深い話を聞いたからだ。
 早紀さんの実家がある青森県の村外れには、昔一人の老婆が居た。占いや霊媒の類を生業にしており、村で何かが起きた時は皆が相談に訪れた。
 早紀さんも母親が厄年を迎えた際、両親に連れられて会いに行ったが、まだ幼かった時分にまったく意味の分からない質問をされたことを覚えている。
 今でも仲が良い友人に当時その話を伝えると、自分も同じ質問をされて辟易したと言っていた。以降、早紀さんたちが老婆の元を訪れることはなかった。
 だが数年して、その老婆が亡くなったという噂を聞いたあと、驚くべき事態が起きる。
 村に住むほとんどの人間が、「そんな老婆は存在していない」と言うのだ。
 早紀さんは驚くと同時に、到底その言葉を理解出来なかった。
 友人に確認してみても、自分や友人の記憶には間違いなく存在している老婆。また、自分たち二人だけでなく、他に村の一割ほどが彼女の存在を確かだったと主張していた。
 当たり前だろう、老婆は昔から村の相談役だと教えられてきたのだから。
 しかし、他の大多数、さらには一緒に老婆の元へ行ったはずの両親すらも「揃ってなにを変なこと言ってるの。連れて行ったことなんてないし、そんなお婆さん、誰も知らないわよ」と言う。
 そのあと同じ記憶を持つ人たちでどれだけ老婆について調べても、まったく情報が見つからない。村ぐるみで事実を隠蔽しようとしている可能性も考えたが、あれだけ年齢を重ねた人間が生きた痕跡を一切残さないことなど不可能だ。
 それでも、早紀さんたちはたしかにあの日、それぞれ老婆に会って相談をした。
 そして記憶を持つ者全員が、どういうわけか投げかけられた質問内容をはっきりと鮮明に覚えている。当時は意味も分からず聞いていたが、老婆の存在自体を否定された今思い返すと、背筋が凍る思いだという。
 
 霊媒師は言った。
「今から挙げる言葉のどれかに少しでも心当たりがあるのなら、もう手遅れだ」と。
【家守の嫁入り】
【腹減り地蔵】
【梔子鏡】
【さかさ座布団】
【黄泉峠】
【かしわ手傘】
 幸いにも、早紀さんと友人には言葉のどれにも心当たりがなかった。
 心当たりがあると答えた記憶を持つ三人は、老婆が亡くなったという噂が出回ったあとに大病を患い、既にこの世を去っているという。

―了―

★著者紹介

鈴木 誠 (すずき・せい)

YouTubeチャンネル「THCオカルトラジオ」のTOMOとして活動中。
企業のCM制作やチャンネルコンサル、編集者として様々なYouTubeチャンネルに携わる。
今作から作家活動の時は名を鈴木誠とする。
怪談サイトHorrorHolicSchoolにて、共著で『怪奇な図書室』『怪奇な図書室 呪われた禁書』を刊行。
幽霊の出る怪談や障りのある話を好む。

鷹鷺狸夜 (たかさぎ・りや)

タカサギ狸夜の名で、投稿サイト「ノベルアップ+」主催のコンテストで短編ホラー小説が入賞。以降、執筆や取材を通し怪談に魅せられ、その奥深さに目覚める。
いい歳から突然小説家を志した妖怪。麻雀好き。
現在、タカサギ狸夜名義で上記を含む複数投稿サイトに短編集「逢魔時パーキングエリア」を連載中。

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