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❖世代交代の悲しみ❖ まいに知・あらび基・おもいつ記(2022年1月15日)

(長さも中身もバラバラ、日々スマホメモに綴る単なる素材、支離滅裂もご容赦を)

◆世代交代の悲しみ◆
何事も諸行無常だから仕方のないことなのだが、私の周りにある「シンガポール要素」がまた一つ失われた。ラオスに住んでいたとき、夏休みを利用してシンガポールを訪れた。そのときにリトルインディアで購入した3つで10ドルの時計の最後の一つがとうとう正しい時を刻めなくなった。自分の周りから「シンガポール要素」が減ってしまうのは残念だし悲しいが、それはアクセサリーではなく時計である以上、正しい時を刻めなくなれば、つけ続ける意味はほとんどない。だから時計との別れは仕方のないことである。

しかし、どうしてそれが悲しく思えるのだろうか。

「別れ」という言葉が使われる場面について考えてみると、卒業式などならば仲間との別れ、引っ越しなどでこの先は簡単に会えなくなるという別れ、戦争などならば二度と生きては会えないだろう「今生の別れ」、誰かの死によって訪れる別れ、ペットを手放さなければならないときの別れ、ペットの死による別れもある。このように「別れ」という言葉は、相手方が離れるか、生命活動を終えるかによって、これまでのようなコミュニケーションをとることができない場合に使われる。

ただコミュニケーションがとれるかどうかならば、今は物理的に離れているだけならば、SNSも発達しているし、zoomなどで顔を見ながらコミュニケーションも可能である。すると卒業式や引っ越しがあっても、引き続きコミュニケーションは可能であるにも関わらず、それも別れと呼ぶのは、技術的にコミュニケーションがとれるかどうかだけでは別れのイメージを払拭できていないことになる。そう考えると、物理的に空間を共有できているかどうかは別れのイメージの大きな要素であることが分かる。

しかし誰かと仲違いしたり、恋愛関係が終わった場合、所属自体はそのままにも関わらず、これを「別れ」と呼ぶことはある。すると空間や時間を共有していても別れになるパターンもありうることになる。この場合、空間や時間の問題ではなく、意思の問題でコミュニケーションを「とらない」わけであり、別れには意思の要素も関わってくることが分かってきた。

また、別れが悲しく辛いものであることは、ブッダが説いた「愛別離苦」の考えにも表れている。ブッダは苦しみの根本には執着心が関係していると考えた。生命体も物体もいつかは生命活動の終了や風化・劣化などに至る。それにも関わらず、様々な事象が永遠であってほしいと考え執着してしまうと、叶わないものに縛られて苦しむわけである。だからブッダは苦しみから自己を解き放つための考えをシンプルな四つの表現で示したとされている。それが四法印であり、その中でも有名なものが「諸行無常」であろう。

先ほど別れには空間や時間だけでなく、意思の要素も関係すると述べたが、人間やペットなどの生命体ならば意思という要素はイメージしやすい。しかし時計は物体なので意思がないというのが通常の理解であろう。ただ時計も時を伝えるという部分で、意思に類似したようなメッセージを発していると考えると、正しい時を刻めなくなったシンガポールの時計は、意思を失ったといえる。それは仲違いと同じく、別れの一つと考えることができるだろう。

それから別れというと、これからコミュニケーションがとれなくなるということで「未来」に関わるものに思われるが、「過去」にも関わっている。別れによって、これまでの関わりの連続性が失われ、その瞬間、これまでの関わりは明確な「過去」になる。それだけでなく、そうしてはっきりした「過去」は自分から引き剥がされた無機質な単なる情報に成り下がってしまう。だから別れとは、「未来の空洞化と過去の形骸化」なのである。

その空しさや寂しさが、全体として悲しい気持ちを生み出すのだろう。さらに、今回の時計の場合は、時計自体との別れとして、「時計に対する未来の空洞化と過去の形骸化」だけでなく、シンガポールで購入した時計なので「シンガポール要素という過去の形骸化」も加わり、その分だけ悲しみが大きくなっているように思える。

しかし悲しんでばかりいられない。様々な場面で、正しい時を確認し、次の行動に繋げなければならないので、別の時計が必要である。ということで、ダイソーで新たな時計を購入した。しかし偶然というべきか、商品の細かい説明まで見ていなかったが、ダイソーの時計は「シンガポール製」だったのである。私と「シンガポール要素」との繋がりはまだまだ終わらなさそうである。
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