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★我楽多だらけの製哲書(66)★~唐辛子の破壊力とジェームズ~

(2016年の出来事の回想である)
沖縄に来てからようやく3週間くらいが経つわけですが、以前に沖縄に来たことがない私にとって、この沖縄の地は当然のことながら未知の土地なわけです。

これまでならば、休日は無難に同じようなカフェを利用して、読書したり音楽を聴いたりと規則的な生活に終始するところですが、シンガポールにいてほとんど観光らしい観光をせず、結局シンガポールを去るときに大きな後悔をしたという同じ轍を踏まないように、沖縄では、できるだけ異なるお店に入ってみるというチャレンジをしようと思っています。

今日も夕食に居酒屋風ではありますが、定食メニューもあるお店に入ってみることにしました。グルメではない私はメニューに書かれているカタカナがよく分からなかったのですが、おそらく肉であろうということで「ラフテー」を注文しました。それから「焼肉丼(のようなものですが、何の肉か分からないまま注文し食べました)」を注文しました。

やや脂の攻撃力が高く、負けそうでしたが何とか完食しました。味自体はとても美味しかったので、またこの店を訪れたときには注文してみたいと思いました。

一方、以前に別のお店で沖縄そばを注文した時、一緒に出された唐辛子入りの調味料があったのですが、おそらく沖縄の人はこれをかけて食べるのだなと思い、しっかりかけて食べてみることにしました。しかし、この調味料の破壊力は半端なものではありませんでした。辛すぎて食べることができませんでした。どうやら、少しかければ十分のようです。ただ、辛いものがそれほど得意ではない私にとっては、この調味料は不要と感じました。

シンガポールでの生活もそうでしたが、この沖縄での生活も試行錯誤の連続です。言語の面ではシンガポールよりも苦戦はしませんが、習慣が異なること、時間感覚が異なること、自動車での移動を前提とした地域構造であることなど、私がチェレンジし経験を積み重ねて、乗り越えていかなければならない課題は山積しているのです。

食事をどうしていくかというのも大きな課題です。もちろんコンビニはたくさんありますので、コンビニ弁当中心の食生活にすれば心配はありません。しかし、それでは沖縄に存在していることの価値は大きく失われてしまいます。そこで、色々なお店に入り、また色々なメニューを注文してみて、沖縄での経験値を増やしていく必要があるわけです。

ただ、色々なメニューを注文するということはリスクもあります。失敗すれば先ほどの唐辛子調味料のように、大きなダメージが私に跳ね返ってくることになります。そのようなチャレンジを繰り返しながら、より良い食生活が形成されるように、私の戦いは続きます。

アメリカの心理学者であり哲学者でもあるウィリアム=ジェームズは、ある物事が真理であるかどうかは、それが持つ「有用性」によって決まると考えました。彼は観念や思想についての有用性を中心に意見を展開しましたが、彼によると仮に事実とは言えない観念であっても、それが有用な結果を導くのならば、自分にとって真理となるわけです。ジェームズは宗教というものも、実際に神の存在証明などはできないものであり、事実とは言えない可能性があっても、それが人間が心の拠り所として日常生活に有用であるならば、それは真理であると考えました。ジェームズを含む、アメリカのフロンティア精神を土台とした、実践経験から真理を導き出そうとする思想は総称して「プラグマティズム」と呼ばれます。この思想は新大陸という未知の土地に移り住んだ人たちが、これまでの経験に頼ることができない苛酷な状況下で、試行錯誤を重ね、自分たちの生活をより安定したものに、そしてより豊かなものにしようとチャレンジの中から生まれたものと言えます。

私の生活はまさにこのような状況に置かれています。未知の土地で試行錯誤する中、ある食べ物が美味しく有用ならば真理となり、逆に食べにくい・食べられないならば有用とはならず真理ではないのです。
シンガポールで生活をし始めたとき、ちょうどある映画を見る機会があり、その映画の主人公が置かれている状況が自分と重なっていて、とても共感したことを憶えています。その映画は離任式のときにも話したもので「ダンス・ウィズ・ウルブズ」という映画です。

この映画で主人公は南北戦争の最中、西部開拓が終わりに近づきフロンティアが消滅する前に、フロンティアがどんなものであるか見てみたいということで、自ら志願してネイティブアメリカンと接する砦に赴きます。しかし、砦はネイティブアメリカンの襲撃にあったのか、誰もおらず、彼はフロンティアという未知の土地で孤独な生活を余儀なくされます。その中で、彼は試行錯誤を繰り返し、何とか自分の生活を成り立たせようと努力します。

この主人公の苦悩はちょうど私のシンガポール生活に重なるものでした。そして、現在の沖縄生活でも同様にこの映画を思い出す私がいるのでした。

(以下で、今回も沖縄料理を紹介)
#この街がすき   #旅のフォトアルバム
#沖縄   #哲学   #ジェームズ

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