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★我楽多だらけの製哲書(60)★~見慣れない通貨と松下幸之助~

バンコクに住み始めてからもうすぐ3週間くらいになる。タイの通貨バーツもようやく使い慣れてきた。紙幣は数字がはっきり見えるので、最初から戸惑うことはなかったが、硬貨の方はどれがいくらなのかよくわかっていないので、とりあえず紙幣で支払いを済ませてしまって、硬貨がどんどん増えていくという状態であった。

そうして慣れてきたバーツの中で、あるお店でお釣りを受け取ったときに見慣れないものと遭遇した。

「ポリマー製の20バーツ」である。

これまでラオスに住んでいたときも何度かバーツは使ったことはあるし、この3週間は毎日使っていたが、ポリマー製の通貨は始めてだった。ネットニュースを調べてみると、以前にポリマー製の50バーツが流通していたことはあるが、このポリマー製の20バーツの流通は2022年3月24日からだったようである。

ネットニュースを見ていると「ポリマー紙幣」という単語が普通に使われているのだが、ポリマーは紙ではないので、ポリマー紙幣という表現は正確に言えば間違っている。だが、補助貨幣である「硬貨」の対義語は何かといわれると、本位通貨である「紙幣」というのが一般的である。一応「軟貨」という言葉もあるが、「紙幣」が普通であろう。

そして近年、国によっては本位貨幣に紙を使わずにポリマーなどで製造しているので、問題が複雑になっている。大抵の人は「紙幣」という言葉を、素材が紙かどうかは考えずに、とにかく長方形の札になっているものを指す言葉として使用している。だから、その素材がポリマーという別のものになったときには、「紙幣」という言葉には素材としての紙の意味合いが含まれていないため、「ポリマー紙幣」と表現しても違和感を覚えないのではないだろうか。

ポリマー製の通貨を使っている国として私が最初に思いつくのは、シンガポールである。通算で6年間生活したので、ポリマー製の通貨はシンガポールでは当たり前であった。それから、オーストラリアやスイスもポリマー製だったと思う。

ポリマー製の通貨の長所は何といっても「耐久性」であろう。湿気・汚れ・破れなどに強さを発揮してくれる。しかし他の事象でもいえることだが、ある点において長所であっても、別の点においてはそれが短所になることがある。

まあ短所といっても深刻なものではなく、紙製に比べると折り曲げにくいというくらいのものである。折り曲げたつもりでも、時間が経つと元に戻ってくるのである。私はシンガポールに住み始めてから、お金を財布に入れる習慣がなくなっていて、シャツやズボンのポケットに折り曲げてそのまま入れてしまうのである。そのため、ポリマー製の通貨でまだ折り曲げられた機会が少ないものだと、ポケットの中で膨らんできて違和感が出てきてしまうのである。

「長所や短所というものは絶対的なものではない。学問がある、また身体も頑健である、これは常識的に考えれば長所と考えられる。しかし、それを過信して失敗すれば、結果として短所となってします。学問がない、体が弱い、これも常識的には短所と考えられている。けれども、私の場合にはそのことが幸いして、成功できた。とすれば、それはむしろ長所であったと言えなくもない。」
これは日本の実業家である松下幸之助の言葉である。長所や短所というものは、固定されたものではなく、捉え方で長所が短所になることも、その逆もあるわけである。折り目がすぐついてしまうという紙製通貨の短所と見られがちな部分は、私にとっては長所だったわけである。

今後、ポリマー製の通貨は増えていくと思われる。だからこそ「ポリマー紙幣」に代わる最適な表現を誰か早く発明してほしいものである。

(以下でポリマー製の20バーツをお釣りで渡してくれたお店を紹介)
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