【瞬間小説】 はい 【ショートショート】
こちらの出した指示を彼は淡々と熟す。否定というものを一切せず、愛想笑いのひとつもないが仕事上では大変助かる人物だ。
ある日、彼とこんなやり取りをした事があった。
「稲村君、君は趣味とかあるのかい?」
「業務とは関係のない質問に思えます。指示を出して頂けますか?」
「なら……これは円滑なコミュニケーションの為に必要な指示だ。稲村君、趣味があるなら教えてくれないか」
「趣味は無駄な時間なので有りません」
私は辟易とした。酒も飲まない、煙草も吸わない、女の気も全くない。彼