【小説】 おばけの悩みごと 【ショートショート】
深夜。私と彼は山深い場所にある湿り気と黴臭さの漂う小さなトンネルの中にいた。ここは昭和初期に作られたトンネルで、この山道を作る為に徴用された数多くの工員が命を落とした場所として知られていたのだ。
「正樹、撮るよ?」
「あぁ、必ず映るって話だからな……頼んだ」
トンネル内に響く水の滴る音に混じってスマホのシャッター音が鳴ると同時に、私は悲鳴を上げた。
「きゃああああああああ!」
「ナオ、どうした!?」
「いっ、いる! いるの!」
「え……」
写真など撮らなくても、