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ミッション、ビジョン、バリューの違いや関係性がわかりづらいので、子育てを例に解説してみた。

こんにちは。2023年4月にGaudiyに入社したLASSIと言います。プロトコルチームというチームに所属していて、組織制度や組織文化について探求と実装をおこなっています。

キャリアとしては「コピーライター → デザインマネージャー → 組織文化づくり」という感じで、微妙にやることを変えながら今に至っています。こう書くと能動的に取捨選択してきたように聞こえますが、「人の心を動かす仕事」という太い軸には沿いつつ、割と受動的に、流れと興味に身を任せながら進んできました。

Gaudiyに入社したのは、デカすぎる大義に心惹かれたのと、めっちゃ独特な組織で、組織開発関連のチャレンジができることにワクワクしたというのが大きかったです。

42歳。4歳と2歳の子どもあり。趣味はJリーグ(箱推し)。
語り出すと無限に話してしまうので、
会社ではJリーグ関連の質問をぼくにすることは禁止させてもらっています。

はじめに

MVVはわかりづらい

組織のことを考えるための起点として、自分が特に大事にしているのが、組織理念をMVV(Missin, Vision, Value)として言語化することです。

MVVには、いい感じの言葉が並びますし、どれも、とても大事そうなオーラを放ちます。でも実際にMission、Vision、Valueそれぞれの役割とか使い分けを説明しろと言われると、かなり難しい。なんとかがんばって説明したとしても、屁理屈みたいになってしまい、うまく説明できないことに落ち込んじゃうこともしばしば。

実際にググってみても、MVVの解説記事はどれも抽象的で、手触り感のない説明になっていることが多い。

今回のnoteでは、MVVについてなるべく具体的にイメージできるように、「子育て」を例に出しながら説明してみようと思います。なぜ子育てなのかというと、自分が子育て中で例を考えやすかったのと、誰にでも具体的なイメージがしやすいテーマなので、手触り感のある説明ができそうだと思ったからです。

MVVとは?

MVVとは、端的に言うと、組織活動の方向性を規定し社内外へ共有するためのフレームワークです多くの企業、とりわけスタートアップ界隈ではMVVに代表される理念フレームに則って、企業活動の指針を言語化することがスタンダードな取り組みとなってきています。なぜか?

1つ目の理由は、駆け出しのスタートアップが、事業成長もメンバーに渡せる報酬もまだまだな中で、優秀な人材に自社を選んでもらう、大きく賭けてもらうためには、自社の理念を端的かつ魅力的に伝えることが大事になるからです。

2つ目の理由は、組織が大きくなればなるほど個々の力が分散してしまいがちななか、みんなの力を分散させず、ひとつの方向へ集結させる作用が期待できるためです。スタートアップは基本的には短期決戦なので、音楽性の違いでバタバタしないようにメンバーのベクトルを整え続ける作業が大事になります。

MVVや企業文化についてはこちらのnoteもめっちゃわかりやすいので、ぜひどこかで一読することをオススメします。

ちなみに上の記事では、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)ではなく、VMV(ビジョン、ミッション、バリュー)というフレームで、理念を整理しています。

理念フレームには、他にもいろいろなものが存在します。ここ5〜10年くらいだとPurposeとかも流行りましたね。特にどれが正解ということはなく、経営者、会社、サービスの、成り立ちや目的によって、適切なフレームは変わってきます。たとえばGaudiyの場合、一般的なMVVに対して、MissionとVisionを混ぜたものを「Mission」、Valueを2つに細分化させたものをそれぞれ「Value」「Credo」と定義した、「MVC」を置いています。

今回は、MVVにCredoというレイヤーも加えた「MVVC」として、解説していきます。

MVVCを子育てを例に考えてみる

Missionとは?

Missionと英語で言われると、某impossibleな映画のせいか「任務」という意味が先に立ち上がってきてしまうのはぼくだけでしょうか。Visionという言葉との違いが絶妙にわかりづらいんですよね。どっちも目標っぽいし、大事なことっぽい。「Mission」は一般的に「存在意義」とか「使命」などと定義することが多いです。

ぼくはこの「存在意義」とか「使命」という定義を推していません。なぜなら、それがどこからやってきたものなのかが、あいまいだからです。自分の中にあるものを言語化したものなのか、周囲からの期待や解釈を言語化したものなのか、わからない。

Missionは「根本的な信念」と定義するのがよい、というのが個人的な主張です。「自分たちの内面にあるもの」であり、すべての組織活動の軸、源泉、そして拠り所になります。

Missionを言語化することで「我々は心の中に、どんな信念を抱いている集団なのか」ということを、社会やメンバーに共有できます。信念がコロコロ変わる人があまりいないのと同じで、Missionも、よほどのことがない限りは変えないほうがよいです。そんな人、信用されないですよね。

スタートアップにおいては、基本的には、創業者の信念を言語化するのがよいと思います。そうじゃないと、誰も強く信じていない信念風な何かが、組織のど真ん中に置かれてしまうことになります。

子育てに当てはめると

「我が子が健やかな人生をまっとうできる」
「毒親にはならない」

子育てのMissionの例

などのように、夫婦が心に強く抱いている根本的な信念がMissionにあたります。

Visionとは?

Visionとは、「つくりたい世界」と考えるといいと思ってます「信念」を実現するために、「具体的につくりたい世界」。Missionと明確に違うのは、Visionは「自分たちの外側にあるもの」という点です。

Visionを言語化することで、「我々はこの先どんな世界をつくるのか」という目標を、社会やメンバーに共有できます。会社の事業活動は、Visionに強く紐づきます。

Visionは、ずっと固定する必要はありません。時代や状況が変われば事業も目標も変わるものなので、適切なタイミングでアップデートしていけるとよいと思います。

子育てに当てはめると

「自分は愛されていると実感できる家庭」
「学びや発見のある家庭」
「親と子がフラットで平等な家庭」
「子どもの自律性が育つ家庭」

子育てのVisionの例

などなど、Missionをもとに、2人が創っていきたい世界がVisionです。

Visionは、Missionを叶えるための手段なので、何パターンでも存在しうる。夫婦で議論して決めるでも、どちらかの一存で決めるでも、決め方としてはどんな形でも良いと思います。大事なのは1つに絞って、夫婦でそれを追おうと思えるものにすることです。

MissionとVisionの違い

Valueとは?

日本語に直訳すると「価値」となりますが、理念フレームにおけるValueは「価値基準」と定義するのが個人的にはいいと思います。世の中的にはValueを「行動指針」と定義するケースも多いです。GaudiyではValueを「価値基準」、Credoを「行動指針」と、明確に分けて置いています。

Valueを言語化することで、「どんな選択を重ねていくと最短ルートでVisionを実現できるのか」「どんな在り方が自分たちらしいのか」ということを、社内に広く指し示すことができます

メンバー個々人がValueに則って自律的に判断できる世界線では、いちいちリーダーが指示をしなくとも、リーダーにお伺いを立てなくとも、会社としての判断が同じ方向に向かうようになります。いわゆる「組織文化づくり」の本丸は、このように、Valueが当たり前に発露している状態をつくることだと考えています。

ただ実際に、Valueを組織内で機能させるのは至難の業です。Valueを飾り物で終わらせるのか、組織の武器として機能させるのか。その分岐は、このテーマに向き合っていく人と時間に、いかに早いタイミングから継続的に投資し続けられるかで決まると思っています。

アーリーフェーズで超短期決戦をしているスタートアップにおいて、組織文化づくりへの投資は簡単な意思決定ではありません。しかし組織規模が小さいときであればあるほど、社内をまとめやすく、伝道師も生み出しやすい。どうする?個人的には「この組織はデカくなる、長く続く」という確信度が一定を越えたらGOです。

Valueも、時代や状況、組織状態、つくりたい組織像などに応じて、適切な頻度でアップデートするのが大事です。

子育てに当てはめると

「子のハードルは子に越えさせる」
「子どもの意志を尊重する」
「得意なことだけを伸ばす」
「苦手の克服を大事にする」
「親も一緒に成長する」
「子どもに言うことは、親もちゃんとやる」

「生きていくための武器を数多く持たせる」
「多様な人と関われる環境をつくる」
「親も一緒に成長し、子どもに背中を見せていく」
「いつもと違う行動を歓迎する」

子育てのValueの例

など、Vision実現に向けて夫婦が共有しておきたい価値観がValueです。

Valueは最も大事なものを3つくらい選ぶのがよいです。人が短期記憶に残せる数は4個前後と言われているのと、欲張って数多く設定すると1つ1つの大事さが薄まってしまうためです。

また、例のなかでいうと「得意なことだけを伸ばす」「苦手の克服を大事にする」は、まるっきり真逆の価値観です。こうした対抗概念のうちどちらをValueに置くのが自分たち夫婦のVision実現のために大事なのか、しっかり擦り合わせたうえで絞り込んでいきましょう。

Credoとは?

世の中的には、Credoの定義もほんとさまざまです。Valueとほぼ同じ意味で使われたり、理念フレーム全体を指してCredoと呼ぶこともあります。

Gaudiyでは、「行動指針」のことをCredoと呼んでいます。行動指針は、文字通り行動の指針のこと。「価値基準」に比べると、より直接的に行動を規定するものです。個人的に「行動指針」を定義することは、とても、とても大事だと考えています。なぜなら「価値基準」の定義だけでは、実際の行動の解釈がブレやすいからです。

たとえば、さきほどの子育てValueのなかに「子どもの意志を尊重する」というものがありました。しかし、具体的にどんな行動をとると子どもの意志を尊重したことになるのか。このValueに則った結果、妻は「YouTubeを見ていたいというから、その意志を尊重して見せてあげる」と考え、夫は「YouTube視聴は意志をもって見ているのではなく、惰性で見ているだけなので、むしろ止めてあげないといけない」と考えるかもしれません。同じValueを信じているのに、真逆の行動についてValue的だと感じてしまっている。このままだと喧嘩になっちゃうかも。

Valueに沿ってものごとを判断していくのは、実は結構難しいことなのです。メンバー間でかなり価値観がそろっている組織でない限り、その解釈は必ずブレます。しかもややこしいのが、ブレたときに何が正解かという答えがないことです。お互いに「お前が思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」と思っている世界です。ブレるたびに擦り合わせるコストが発生します。

コスト、とマイナス気味な表現をしてしまいましたが、擦り合わせに毎回向き合えるなら、むしろそれは良いことです。擦り合わせれば合わせるほど、価値基準が心と体に染み込んでいき、阿吽の関係に近づけるので。でも実際はそんなに向き合えないものです。少なくとも、ぼくにはきつい。

なので、Valueに沿った判断が誰にでもできるように、Credoはかなり具体的に言語化することを個人的にはオススメしたいです。定義する際は、「Credoに沿った行動をすると、自動的にそれがValueを発揮することにつながっていく」という構造にしましょう。そうでなければ、Credoを規定する意味がありません。ValueはCredoの意義を規定し、CredoはValueの発露を担保します。

個人的には、Valueとつながっていない行動指針は推せないです。メンバーがその行動指針を重んじる意義が明確じゃないからです。守る意義を誰も説明できないのになぜか強要され続ける古臭い校則、まじで嫌でしたよね。かなりの確率でああなっちゃうと思います。

子育てのCredoを仮に置いてみると

「集中している遊びを、無闇に止めない」
「約束は守るし、破ったら謝る」
「おもちゃの片付けは本人が最後までやる」
「ねえ見て見て!と言われたら必ず見る」
「子どもの目の前でスマホは触らない」
「泣きたいときは、変に我慢させず泣かせてあげる」
「怒ってしまったら5分以内に謝る」

のような、具体的な行動を定義するのがCredoです。繰り返しですが、必ずValueからブレイクダウンした内容にしましょう。どうしてもCredoに入れたい行動があるんだけど、紐づくValueが見当たらない!という場合は、Valueのセレクトがたぶん間違ってるので、そちらの見直しを検討しましょう。

なおGaudiyでは2023年の7月頃、ここまで書いてきたようなことをふまえつつ行動指針を新しく定義し直しています。ご参考まで。

まとめ

MVVCの構造

一般的にはシンプルな三角形で表現されますが、個人的には以下の構造でイメージをしています。下の階層が上の階層を厚く支え、信念としてのMissionが軸として全体を貫く形です。ValueとCredoは相互に強く影響し合うので、くっつけてます。

MVVCを組織の力に変えていく

MVVCは、規定しただけではあまり意味がありません。これを、どうやって組織の力に変えていくか。組織文化に変えていくか。

組織文化は、一夜にして成立するものではありません。こつこつとした価値基準と行動指針への理解の擦り合わせ、そして実際の行動の積み重ねがまず必要です。それがやがて、考えずとも価値基準に沿った選択行動を生むようになっていき、最後は当たり前のふるまいへと変わっていきます。

書いてみるとシンプルな話に思えますが、組織文化醸成はめっちゃ難易度が高い。そして、ただでさえ難易度が高いにもかかわらず、特に急成長スタートアップにおいては、同時並行で人がどんどんと増えていくことがその難易度を100倍にしています。採用→オンボーディング→実務→成果→評価→退職、というライフサイクルの各段階における、とんでもなく泥臭く、無限に続く実装プロセスがある。

個人的な探求テーマはまさにこのあたりにあります。スタートアップのような成長組織における組織文化醸成の型化と促進。特に、ボトムアップでの文化醸成です。

文化の発展は「誰かの模倣」が起点になります。よくある形が、経営陣やマネージャーが率先して体現し、他の人がそれを真似していくという広がり方。とても真っ当だと思います。ただこれは、一般的な階層型組織での話。Gaudiyのような自律分散型の組織では、どのような模倣メカニズムをデザインするとよいのか。このあたりは、いろいろと組織内で進めていることがあるので、またいつかnoteにまとめられたらと思っています。

社内研修にて行動指針の1つである「GAN」について議論

さいごに

結局、子育てを例にした説明はわかりやすかったんだろうかw

子育てを例に用いた説明で、少しでもMVVCに対するイメージが具体的に湧くようになり、ひいては「うちの組織理念をもう一度考え直してみようかな!」という動きにつながってくれたりすると、とても嬉しいです。(ライフワーク的に副業でこのあたり支援していますので、気になる方はご連絡ください

なお、このnoteに書いた内容は、あくまで守破離でいう守であり、基本の型でしかありません。もし参考にしていただける場合は、ぜひ自分たちの組織や、扱いやすさなどをふまえて、アレンジしていただければと思います。

MVVまわりのオススメの書籍

この2冊は相当読みやすく、組織文化に関する概要を掴むのにベストだと感じてます。どの読書にも言えますが、ある程度の仮説というか「謎の俺理論」みたいなものをもったうえで読むと、その差異からの気づきがあってよいです。ちなみにGaudiyでは、こういった先人の知恵の徹底的なリサーチのことを「超守」と呼び、行動指針として大事にしています。

(値段が同じだ・・・ライバル書籍・・・)

カジュアルに雑談しませんか?

GaudiyのMission, Vision, Credoに興味をお持ちの方はもちろん、なんとなく会社のカルチャーについて雑談したいというレアな方がいらっしゃれば、ぜひこちらからご連絡いただけると嬉しいです。


これでおしまいです。読んでくださってありがとうございました。

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