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10/3 授業2日目

歴史の教授が面白い

 今日は1限目(10:00)から4限目(14:00)まで4時間ぶっ通しで授業が続いた。ドイツとハンガリーの歴史の授業から今日は幕開けだ。まだ2日目なので初めて会う教授や先生が多いが今日もまた先生の自己紹介から始まった。僕はこの教授にたまたまパーソナルチューター(新入生を見守ったり相談したりする役)をやってもらっているため初見ではなかったが、非常に気さくでお茶目でネジが外れている。まず彼はイギリス人の白人男性で年は50前後だ。専門は東欧史らしい。17、18の時にソ連が崩壊してふらっと訪れたハンガリーに感銘を受けUCLで博士号を取得したのち教授として今活躍している。今日の彼はなんだかハリウッド映画のコメディシーンを見ているみたいだった。授業開始一言目に
「very impressive that you guys all found this classroom.」(君たちがこの教室を見つけたのは、とても素晴らしいことだ)
と放った。それはまだ普通だった。確かにUCLは建物が多く構造が複雑だから教室を見つけられず授業に辿り着かない生徒もそう少なくはない。
 だがここから先の2つがとても僕には印象的であった。1つはまず自分の出版している著書についてだ。最初は自慢から始まり、どういった内容なのであるかなどを説明してきた。大体全部で7冊あったが、最後の一冊の説明を始めようとしたところで急に機嫌が悪くなった。どうしたのかと生徒の注目を集めた。お喋りをしていた数人の生徒も怒られるのではないかと思いさぞかしヒヤヒヤしたであろう。教授はただ悲しそうな面持ちになりこういった。
「I hate this fucking book. I didn’t want to write this book. You don’t have to read this book because it’s too boring, I felt boring as well when I was writing.」(俺はこのクソ本が嫌いだ。この本は書きたくなかった。この本はつまらないから読まなくてもいい、俺も執筆してるとき面白くないと思ったのだから)
あまりにも皆、衝撃的すぎて講義室は自然な笑いに包まれていた。それから教授は出版社に急かされただの大学に圧をかけられただの可愛げのある文句を漏らしていた。
 もう1つの出来事はこの授業のルール・マナー説明するときに起こった。まず遅れないことや事前課題のリーディングをすることなど当たり前のことを指摘してきた。だが驚くべきことに授業中の質問は禁止と説明されたのだ。だがその理由が面白かった。彼はまたもやこういった。英語では正直覚えていないから日本語で書くが
「私は途中で質問をされるとペースを乱してしまう。何を言っていたかこれから何を言えばいいのか忘れてもしまう。歳を重ねるごとに私は脆くなっていってるのだ。だから頼むから質問は授業後に来てほしい」
と素直に心のうちを話してくれた。すまないとも謝った。ここまで正直に言ってくれるとこっちも何かと感情移入してしまいそうな気がしてならない。生徒たちは皆温かく頷いていた。日本人の教授でここまで生徒と対峙する人ははたしているのか。非常に印象的なのは彼が
「I’m getting more fragile every year」(私は年々傷つきやすくなっている)
と生徒に言ったことだ。すごいなと思う反面、人身掌握術のプロなのではないかと疑ってしまった。この教授はただ一方的に授業をするのではなく、しっかり生徒に聞いてもらう工夫も施しているのだなと考え、圧巻された。

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