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takeoka
2017年11月12日 11:02
髪の毛が伸びてうっとおしくなってきたので、散髪に行った。 その日は平日だったので比較的店内はすいていた。すぐに座ることができた。 いつもおなじ散髪屋に行くから、髪を切ってくれる人もだいたいいつも一緒だ。今回はちょっと小太りのおばちゃんがぼくの髪を切ってくれることになった。「どのくらい切りますか?」とたずねられる。ぼくはいつも適当に、「横は耳が出るまで切ってください。あとはそれに合わせて短め
2017年8月13日 21:48
波打ち際に転がる石ころは、みんなことごとく角がとれて丸みをおびている。長年の潮の満ち引き、流動する砂利や小石のあいだで揉まれているうちに、徐々に角が削れて丸くなっていったのだとおもう。 海岸の微細な砂は両手ですくいあげると指の隙間から風の吹く方向へ霧のようにこぼれ落ちてゆく。場所によって砂の細かさがちがうというのもおもしろい。 ある場所では貝殻の残骸が砂利といっしょにたくさん混じっている。そ
2017年2月26日 21:36
黄昏に染まる駅のプラットフォームには人もまばらだった。電車がくるまでのあいだ、うとうとしながら待っていたのだが、到着時間を過ぎても電車はやってこなかった。 事故でもあったのだろうか、と思って辛抱してなおも待っていたが、それらしい連絡も何もない。その時、ようやっと到着のベルが駅の構内に鳴り響く。 電車に乗り込んだ私は、一番近くの席へと座った。車内には私一人しかいなかった。隣の車輌も、そのまた隣
2017年1月13日 08:07
アイデアとは、突如飛来しては去ってゆく未確認飛行物体のようなものである。公園を散歩しているとき、買い物がてら自転車に乗っているとき、トイレの便座の上できばっているとき、そいつは何の前触れもなく頭上に降下してくる。ぼくはあわてて紙とペンをさがす。カメラを忘れたカメラマンの心境だ。さらにやっかいなことに、そいつは一度現れて消えると、再び現れてくれないことがある。よしんば再び現れてくれた
2017年2月6日 19:06
不意に襲われる懐かしいという感覚は、はるか昔に閉じ込めてあった記憶の澱が、なにかのきっかけで掻き回され、表象に浮かんでくるものである。 だいたいにおいてそれはセピア色に色褪せていて、色彩も、匂いも、物に触れたときの感触など、思い出せることはごくわずかであるにもかかわらず、杭を打ち込まれたかのようにそこから動けなくなってしまうものである。 一般的にはそれを"Nostalgia"という言葉で表現