雑文その2

 黄昏に染まる駅のプラットフォームには人もまばらだった。電車がくるまでのあいだ、うとうとしながら待っていたのだが、到着時間を過ぎても電車はやってこなかった。
 事故でもあったのだろうか、と思って辛抱してなおも待っていたが、それらしい連絡も何もない。その時、ようやっと到着のベルが駅の構内に鳴り響く。
 電車に乗り込んだ私は、一番近くの席へと座った。車内には私一人しかいなかった。隣の車輌も、そのまた隣の車輌も、乗客の姿は見えない。
 街の灯りが長く引き伸ばされた光の線となって通り過ぎて行く。車窓からは紫に染まる夜空の中に、輝く星と月がいつもの位置に見える。
 電車はいつの間にか、動いているのかどうかも怪しまれるほど静かになっていた。
 静寂の中に浮かぶ車輌の空間。そこにいるのは自分一人であった。