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TOHOシネマズ 珍道中

そうだ!映画観に行こう!

本当に唐突な思いつきの行動でした。しかしこれでなかなか大変な目に遭ったんです。今日はそんな話をしたいと思います。


新生活が始まるにあたって、部屋の大掃除を朝からしていたんですが、どうも1日をそれだけで終わらせるのは勿体ない。どうしたもんか。
そんな私が思い出したのはこれでした。

デヴィッド・ボウイの映画が今日公開だったじゃないか!今からレイトショーで観よう!
そう思い立った私は、早速チケットを購入し、晩御飯を急いで食べ、TOHOシネマズへ向かいました。

到着してからはいつも通りチケットを発券して、早速入場。今回はスクリーン4です。

比較的こぢんまりとした劇場内。周りを見渡すと意外にも若いカップルや女性2人組がちらほらいたり。デヴィッド・ボウイという人間が今でも老若男女から支持されていることを改めて実感しました。

しかしながらメイン層はやはり、おっさん。
デヴィッド・ボウイのTシャツを着ている人もいたり、もう当時から影響を受け続けてきて、初の公式認定ドキュメンタリーとなる今作の公開をずっと待ちわびてました!と顔に書いてあるような方が大多数でした。
まあ年齢は置いといて私も気持ちはおっさん側だ、なんて思いながら、ぼーっとしていました。

しかし、なにかがおかしい。

いつまで経っても劇場内が暗くならないどころか、予告編すら始まりません。
普通なら、あの面白くない紙兎ロペの広告や、映画の予告編なんかが流れてもおかしくない時間。上映開始時間はとっくに過ぎています。

開始時間から7分ほど経ったでしょうか。劇場内がざわつき始めた頃、入口の扉が開き、スーツを着た男性が入ってきました。

「大変申し訳ございません。只今音声が出ておりませんでした。すぐ対応致します。」

いやいやいや、音声どころか何も出ていませんでしたよ、という声がちらほら聞こえてくる中、おじさんが、一言。

「これ、上映時間大丈夫?ただでさえ11時35分とかに終わるのに、終電で帰れへんひとおるんちゃうん?」

いやまあそんなギリギリのやつ観るなよ、とか私は思いましたが確かに言うてることはおかしくないです。この遅れた分、どうするのかは私も気になっていました。

「そちらにつきましては、予告編の時間を短縮致しますので予定時刻通りとなります。」

おお、素晴らしい。これで安心して観れるじゃないかという空気に場内は包まれました。
後ろの人は、予告編も含めて映画体験やろ、、と文句を仰っていましたが。気持ちはわかります。

さてさて!気を取り直して映画鑑賞ですよ!!
デヴィッド・ボウイの世界、体験させて頂こうじゃありませんか!よしこい!

しかし、なにかがおかしい!

まず冒頭、デヴィッド・ボウイの2002年に発言した言葉が表示されるシーンから始まるのですが、どうも字幕が無い。
しかもこれなにがあれって、ニーチェは神は死んだと言った、から始まるようななかなか哲学的で小難しい言葉なんです。パッとこれを出されても、受験英語レベルでそしてしばらく語学勉強から離れてる私は、混乱することしか出来ません。

いやいやちょっとまてよ、これは演出のはずだ。字幕を入れると野暮だという発想でここは省いてるんだ、多分。という訳の分からない擁護を脳内でして、とりあえずここはスルーすることにしました。

そしてもうめくるめくスペクタクル!圧巻の映像が始まりました。盛り上がる楽曲、熱狂するファン、カリスマ性MAXのデヴィッド・ボウイ。ミュージックビデオを観ているような気分になるくらいの過剰なほどの映像!

しかし!なにかがおかしい!!

泣きながら彼に対する愛を語る女性客の会話にも、そしてその後落ち着いた口調で話し出すデヴィッド・ボウイ本人の言葉にも字幕が、無かったんです。
ここで悟りました。ああ、やってんな、と。

周囲も同様のことを考えたのでしょう、一気に空間がザワザワし始めました。たまらず後ろのお客さんは、

「ちょっと行ってくる!」

と同行者に声をかけ、係員に報告しに向かいました。
その後も流れ続ける映像。もちろん一切字幕はありません。完全にリスニングテストです。アーティスティックな話を英語でされても、なーんもはいってきません。やっぱりかっこええなあ、この衣装は奇抜すぎるなあ、という子どもじみた感想しか、出ません。

ぱつっ!!
唐突に映像が止まりました。そして明るくなる場内。溜まっていた不満が一気に爆発するかのように怒りの声で空間が満たされました。

「どういうことやねん!!」「なんのつもりや!」「さすがにあかんやろ!!」

そんな言葉が飛び交う中、先程とは違う、明らかに上の者と呼べるような人が入ってきました。

「大変申し訳ございません。映像に字幕が一切入っておりませんでした。現在確認しましたところ、映像の方から字幕の方が完全に消滅してしまっていることが判明しました。現在機械の再起動を行っており、字幕が出ることを確認出来ましたら頭から上映を再開致します。」

おいおいおいおい、おいおい、おい。色々言いたいことがあるぞ!と思いながら黙って座っていたら、前方のデヴィッド・ボウイのTシャツを着たおじさんが一言。

「いやね、僕らこのときをずっと楽しみにしてたんですよ。それがね、上映開始が遅れたり、さらに字幕が表示されなくて止まったり。どうしてくれるの?そもそも今から上映してみんな帰れるんか?」

そしてその横の方に座っていたおじさんも、追撃。

「いやもし観れたとしても、払い戻しすべきでしょ。さすがにおかしいよこれは。普通の劇場ならそれくらいするよ?」

まあ言い過ぎなところはあるかもしれませんが、完全に同意です。もうめちゃくちゃですもん。映画どころじゃない。というか帰れるんかもよくわからん。
これらのクレームに対して、上の者が一言。

「払い戻しなどの補填につきましては、今上の者と相談しておりますので、追ってお知らせします。機械の再起動を行っておりますので今暫くお待ちください。」

なるほど、まあまとうじゃないか。そういう寛大な心で私は過ごすことにしました。幸いなことに家から映画館までは比較的近いので、30分遅れるくらいならば問題なかったためです。まあ問題ありありですけど。にしてもまだもっと上の者おるんか。しかもこんな夜中に。

そしてまたしばらくした後、明るい場内で映像が流れ始めました。めくるめくスペクタクル!というかまあさっき観た映像ですけど。
すると!字幕がついてるじゃありませんか!!おめでとう!おめでとう!ありがとう!

上の者「大変お待たせ致しました。字幕が流れることが確認できましたので、初めから上映を再開したいと思います。終了時間は12時ちょうど頃となりますが、もしご都合が悪いお客様がいらっしゃれば払い戻しと次回無料で映画を観られる招待券をお配り致します。しかしながら、このまま映画を観られるという方に対しての補填は一切出来ませんのでご了承ください。」

、、、、、ん?いやいやいやいや、、。ん?

おっさん「ここまでドタバタして、しかも終了時間まで30分くらい遅なるのに、観たやつにはなんもなしかいな!そりゃさすがにおかしいやろ!そんなん聞いたことないで!」

おお、よく言うてくれた。俺が無意識に発言したかのようにそのまま私の心を言うてくださった。
いや別にクレーマーをして集りたいという訳じゃなく、普通に考えてどうなんだ、と私も思いますもん。出鼻をくじかれたんですから。

そしてさらに考えてみると、これここに残るメリット一切ないじゃないですか。今帰ると返金されて招待券を貰える、ということは1回無料で映画を観ることが出来る。今帰らないと、ただただ30分遅れて終電ギリギリで、出鼻をくじかれた映画を正規の値段で観ることが出来る。完全に釣り合っていません。

よし!文句を言う前にもう帰ろう!
即決でした。なんせ、釣り合ってない選択肢を提示されていますから。
おっさんたちが、電車賃はだしてくれへんのか?とさらにクレームをつけている会場を後にし、払い戻しに向かいました。

すると前の方に若いカップル。手にはドリンクと大きなポップコーンがあります。
いやーこれ可哀想になあ、どうするんやろ、と思っていると、またおっさんが一言。

「この子ら可哀想やんか!!返金したりや!ポップコーン代も!いやほんま、ありえへんで!」

なんか言い方は明らかにきつくて間違ってますが、さすが人情の街大阪。人の不幸を見過ごしません。
まあ正直、機械の不具合でこれだけきつい言葉をこんな深夜に浴びせられる従業員の方々が1番不憫だなと思いましたけども、、。

機械が悪いよ!映写機が!!


後日譚 フリーライダー、映画鑑賞。

翌日。夜からしか予定が無かったので、ここぞとばかりに映画のチケットを予約しました。もちろん、デヴィッド・ボウイ。

しかし昨日とはもう状況が違います。なんせ、手元には招待券。この招待券の凄いところは、追加料金が必要となるような、Dolby Atmosであったりプレミアムシートの料金でさえ無料となる、という点です。なら、てんこ盛り!特盛や!!

0!0!0!

本来、これ追加料金1200円します。つまり一般料金の1900円を合わせると3100円する席なんです。それが、0円。訳が分かりません。

ちなみにポップコーンもポイントと交換しました

座席をご覧ください。ふかふかです。しかも個別に席が区切られています。さらに、荷物置き場まであります。まさに至れり尽くせりですね。
海外のエアラインでも採用されているレザーシートは、長時間の視聴を伴う映画体験の強い味方でした。これは、良い。まあ自分でお金ここまで出すかと言われれば、、、ですが。

この写真がもう最高

そして映画自体の感想ですが、もう素晴らしかったです。デヴィッド・ボウイという人間のドキュメンタリーであるというより、彼のイメージビデオのような感じでしたね。
さらに言うと本作はコラージュ的な作品です。見た事のあるような映像もよく使われていますが、周囲の人間の言葉ではなく、本人の発言を中心に据えて展開していくドキュメンタリーは意外と珍しいので、そこが良かったです。

そうだ!映画観に行こう!
という思いつきから始まったこの珍道中。結果としては無料で素晴らしい座席で映画を観ることが出来たので、とても得することが出来ました。

Tシャツを着て観に来ていたおじさん。気まずく巨大ポップコーンを抱えながら返金の列に並ぶカップル。おそらく仕事帰りに来たが、早々に諦め無言で去っていったあのサラリーマン。
様々な不憫な方々の顔が思い浮かびます。

ただ、こんな体験は滅多にないでしょうから、不憫をかけられた皆さんの話のネタにはせめてなっているはずでしょう。前向きに捉えていこうじゃありませんか。まあほぼ被害ゼロの私が何を言うてもあれなんですけども。

最後に言いたいことを、2つだけ述べて今回のお話を終えたいと思います。

TOHOシネマズ、映画奢ってくれてありがとう!

デヴィッド・ボウイの映画、みんな絶対観よう!

以上です。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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