読書感想文: こころの眼(著アンリ・カルティエ=ブレッソン)
こころの眼 写真をめぐるエセー(著:アンリ・カルティエ=ブレッソン、訳:堀内花子、岩波書店、2007)
フランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)のエッセイ集である。この感想文では紹介しきれていないが、他の著名人たちとの交流や苦難の道を辿った旅についてのエッセイも非常に読み応えがあった。
まず、『こころの眼』というエッセイから引用してみる。
この文章からカルティエ=ブレッソンが“瞬間”を大事にしていることがわかる。当然と言えば当然かもしれない。写真は“瞬間”と切っても切り離せないものなのだから。
「撮影」と一言で言っても映画やテレビではしばしば演出(ナレーションやインタビュー、実況などの取材も入れていいと思う)や編集といったものが入る。
しかし、写真はごまかしがきかないものであり、場面の”一瞬“を捉えるものである。
今となっては古い考え方と言われるかもしれない。写真は今の時代、固定されたものではなくなったからだ。加工も簡単だ。
だがカルティエ=ブレッソンの言う基本は決して変わらない。
変容する記憶、すなわち、消滅していく“瞬間”。その“一瞬”を固定できるのはやはり写真だけしかない。
私が今回この本を読んで最も感銘を受けた言葉である。ここに書いてあることは、写真のことだけではないと思う。すべての創作に当てはまることではないか。
そして非常に勇気づけられる。
直感に素直に従えと。
肝心なのは「自分の感じとったものに対し、自分をどう位置づけるか」である。位置づけによって、表現のあり方が変わってくる。手法、技術、時間、心持、信念、等……。そして感じとったものには最大限の敬意を払うこと。それが重要なのだ。
当たり前かもしれないがカルティエ=ブレッソンは“瞬間”、“一瞬”を大事にしている、と先に書いたが、なぜここまで大事にしているかと言うと、「命の予感のようなもの」だからである。
そして、このエッセイの題もまた、『決定的“瞬間”』であった。
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