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漢文の海で釣りをして

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古今の漢籍が泳ぐ歴史の海に釣り糸を垂らし、釣れた漢文を我流な解釈で書き連ねたものです
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#古代中国

漢文の海で釣りをして【第10回】水に流せないうらみもあるからこそ、小さな心遣いにもありがとうを

漢文の海で釣りをして【第10回】水に流せないうらみもあるからこそ、小さな心遣いにもありがとうを

「一飯の徳も必ず償い、睚眦(がんさい)の怨みも必ず報ゆ」
≪訳≫たった一杯の飯の恩義も必ずお返しするし、ちょっと睨み付けられたうらみにも必ず仕返しをする
≪出典≫『史記』范雎蔡沢列伝

この物語の主人公は范雎(はんしょ)という男。
非常に有能な人物でしたがスパイの濡れ衣を着せられて筆舌に尽くしがたい仕打ちをうけます。
拷問にかけられた上、簀巻きにされて糞尿の浮かぶ便所の中に捨てられ、汚物を浴びせら

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漢文の海で釣りをして【第11回】世界最強の権力者でも手に入れられなかったもの

漢文の海で釣りをして【第11回】世界最強の権力者でも手に入れられなかったもの

「少壮 幾時ぞ 老いをいかんせん」

≪訳≫若く元気な時間というのは無限ではない。どんなひとでも老いを止めることはできない
≪出典≫漢の武帝「秋風辞」

約400年続いた漢王朝。
その最盛期に君臨した皇帝が武帝です。
当時の中国は世界最強の国といっても過言ではありません。
その国の頂点に立つ男…いわば世界で一番、富みと権力を手中にしていた男が読んだ詩から今回の一文です。

武帝がこの詩を詠んだのは

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漢文の海で釣りをして【第13回】楽しむ者こそ最強

漢文の海で釣りをして【第13回】楽しむ者こそ最強

「之を知る者は、之を好む者に如かず。 之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」
≪訳≫ある物事を知っているだけの者は、それを好む者にはかなわない。しかし、それを好む者であっても、楽しむ者にはかなわない。
≪出典≫『論語』雍也篇

たとえば本を読むにしても、知識を得るための必要に迫られて「勉強」になっているひとはなかなか身に付きませんし、何よりも苦痛を伴うため長続きしません。
本を読むことが好きだという

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漢文の海で釣りをして【第14回】愛と勇気といくらかのお金

漢文の海で釣りをして【第14回】愛と勇気といくらかのお金

「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」
《訳》倉庫に十分な食べ物があってようやく礼儀や節度の大切さを知ることができ、衣食に困らなくなってようやく栄辱を理解することができる
《出典》『史記』管晏列伝

短縮バージョンの「衣食足りて礼節を知る」でよく知られている句ですね。
中国古代の宰相・管仲の語。

宰相は王や皇帝を補佐する総理大臣のようなものだと思ってもらえればよいです。
中国で「管仲のよ

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