電車での風景 ー 手 ー
手。
柔らかく円弧を描いた指。
白く透きとおった手の甲に ほんのりと流れる青い線。
リュックサックの上で重ね合わせた手に華奢なピンキーリングがよく似合う。
手。 よく日に焼けて 指の曲がり角は固く節が膨らんで目立つ。
彼の疲れていそうな手を更に疲れさせていそうな重量感ある腕時計。
四角く切りそろえた爪は伸びていて ところどころ黒ずみ ひざに載せた黒いカバンは まだらの白を浮き出させていた。
手。 大福のように すべすべで 弾力のありそうな白い肌。
骨の存在を匂わせない指がゲーム機のカスタマイズされた肉球スティックを一所懸命押さえて縦横無尽に動く。
自分の手。
骨張っていて 血管は直線ではなくて 緩やかなカーブを描く。
むくんだ指に指輪が食い込む。
色黒で長い指は少し反り返り 節のひだが厚くて口のように見える。
手。
ふと 手を眺めているうちに狂ったひとの話を思い出した。
つけヒゲに憧れているのでつけヒゲ資金に充てたいです。購入の暁には最高のつけヒゲ写真を撮る所存です。