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やさしいだけの男にはなりたくはない。

思い出の曲~ECHOES vol.10 『Shot Gun Blues』


『アンタの優しさって、うわべだけだよね…。』

そんな言葉を一体何度言われたのだろう?

よくある僕の第一印象は『優しそう』とか『優しい人』らしい。
特に特徴の無い人間を言い表すのに便利な言葉だ。
しかも、実際に仲良くなってもその印象は変わらないらしい。

しかし、付き合ったりして、上手くいかない事態になったりすると『…うわべだけ』などと言われる。
もちろん、僕が自分で『優しいですよ。』なんて言う訳はない。
そっちが勝手に『優しい人』と感じてたものが、あてが外れたからって、急に責められても、こっちはどうしようもないのが実態だ。

これも勝手な言い訳なのだが…。

だから『優しい人』などとは決して思われない様にしたいと思った。
絶対に思われたくない。
付き合って、本性を知られて幻滅されるのは、こちらも傷つくものだ。
『冷たい人』とか、可能なら『怖そうな人』とか思われたほうが気が楽だ。

しかしながら、その作戦はなかなか上手くいかない。
なんでも安請け合いする性格や、基本的に断らない性質が災いしている。
主体性の無い自分の言動を呪う。

恋愛関係に限らず、仕事をはじめとする社会生活において同じ事は起きる。
要領よく出世していくヤツは、面倒な作業や、時間のかかる仕事をヒュルヒュルすり抜けて、おいしい仕事をどんどん手にしていく。
出世が目的なら、必要なスキルのひとつなんだろう。
顧客も、同僚も、先輩も後輩も、全く関係ない。
ヤツはヤツの正義を貫いている。

そんなやり方してみたいな、と僕は憧れにも似た気持ちで見ている。
実際、そうなろうともしてみた。
自分の理想を叶えるために、そこまで駆け上る必要があるなら。
『誠意』とか『まごころ』とか『仲間』とかいう言葉は全て捨てて、ただのし上がっていくだけの自分になりたいと思った。

でも、その作戦もやはり上手くはいかない。
顧客、取引先、仲間…誰も喜ばない仕事は、僕には出来なかった。
それで、手に入るだろう未来にも意味を感じられなくなった。
また僕は自分を呪う。

誰かに銃でぶち抜かれて粉々になり、全く違う自分になれれば良かったのかもしれない。

自分に絶望した。
だけど、どこかで安心もした。

自分が最も嫌う人間に、自分がならないで済んだのも確かではあった。



ECHOESの『Shot Gun Blues』はアルバム『EGGS』に収録されております。「愛をください」と歌っていたECHOESが「ぶち抜いてくれ 愛がまだ信じられると思ってる俺を」と歌った歌詞が衝撃でした。





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