ひとりで夜空を見に行った。【ショートストーリー】

少し寒くなったけど
外で座りながら星を見ていた

誰かが隣に座る
ドキッとしてのけ反った
星関係の仕事をしていると
その人は勝手に自己紹介した

「月の右斜め上にある星の名前は何?」
唐突に質問される

「え…ちょっと…わかんないです…」
完全にビビりながら答えてみる

「はぁ~っ…!」
わざとらしく大きなため息をつかれる
「はじまったよ…いいかげんにしてくれよ…勝手すぎるだろ…」
なぜだか星関係のその人はイライラしてる

「確かに近くて大きく見えるからぁ…『月』とか名前つけるのもいいんですけど…小さくしか見えないからどうでもいいとか…勝手すぎません?同じ惑星なんですけど?」

「す…すいません…」
なぜか謝った。
が、納得いかないので言い返してみる。
「で、でも…火星とか、金星とか…他にも名前をつけてはいまして…。」

「あ~あ~あ~!…この界隈のね?…割とね?」
「はい…太陽系?のと言いますか…」
「それで?…その太陽系は今どこに見えんの?」
「えっ⁈…それはちょっと…」
「ね?ね?…そうでしょ?それぐらいの興味しかないのに、勝手に名前つけてさ…」
「はぁ…はい…」
「星座とか言って、近くにある星同士を勝手にリンクさせてさ…会った事も無い人と勝手に関係性持たされたら…アンタだったら、どうゆう気持ちになる?考えた事ある?」
「いや…はい…すいません…」
「アンタは星見て満足かもしれないけど…差別だよ!星差別!」
「星差別⁈…」
「そう!…星差別!…月も他の惑星も同じ気持ちで見なさいよ!おんなじ惑星だよ…わけんじゃないよ!」
「そ、そう言われたら…そうですよね…」
「だいたい…『月』とか『MOON』とか…アンタら言ってるけど…ホントは違うからね」
「え⁈ウソ⁈」
「…ウソじゃないよ…そもそもアンタたちが勝手にそうつけただけなんだから…」
「えっ…じゃあホントは何ていうんですか?」
「あぁ⁈…それは教えられないから!」
「教えてくださいよ!今後困るじゃないですかぁ!」
「いや!ムリムリ!自分で考えなさい!」
「そしたら…また『月』とかになっちゃいますから!」
「それはダメ!それは…ダメだけど…教えられないから…」
「えぇ~っ⁈…」
「とにかく…『月』ばかり重要視するとか…勝手に関連付けて星座にするとか…星座で占いするとか…そうゆうのはダメだから!」

明日も早いんだから帰る、と言ってその星関係の人はいきなり消えた。
僕はまたひとりで夜空を見上げた
月の右斜め上にある星をみた
名前はわからなかった
勝手に名付けてもいけない気がした
そして
月のホントの名前を知りたかった




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